第26話 暗黒契約魔法

 ただいまオーガと交戦中。

 リリムがな。


「【身体強化】【鋭刃4重】【幻影】【斬撃】。これが私の全力よ」


 見事リリムの一撃は、カードの手を斬り落とし、オーガの腹を斬り裂いた。


「Aランクおめでとう」

「はぁはぁ、まだ昇格試験を受けてない」

「そこはそれプリシラに頼ると良いぞ。ギルドグランドマスターの伝手を使えよ。推薦ぐらい簡単に取れるだろう。八つスキルを持った人間なんか他にはいないからな。俺を除いてだが」


「いいわ。ただし、推薦は高くつくわよ」

「負けてほしいけど、しょうがないわね」

「Sランクは運次第だな。ドラゴンクラスの脅威が現れればお呼びが掛る。そこで活躍できれば晴れてSランクだ」

「分かってる」


「メッサとシャランラにもスキルを貸してやろう」

「いいの」

「欲しい」


「メッサは【貸与、防御、咆哮、身体強化】、シャランラは【貸与、毒魔法、火魔法、傷回復魔法】。こんなのでいいだろう」

「私は?」

「プリシラも欲しいのか。【貸与、自己回復、魔力弾、鉄皮】これでいいな」

「うん、満足」


「プリシラは何か代金を寄越せ」

「えっ、私からだけお金を取るの。じゃあ、ギルドグランドマスターの依頼に関係ないことは報告しないわ」

「ちょっと弱いな」

「じゃあ、他の人には喋らない」

「契約魔法してくれるか」


 暗黒魔法には契約魔法も含まれている。

 暗黒魔法の暗黒契約魔法は、約束を破ったら死より恐ろしい目に遭う。


「ええ、いいわよ」

「【暗黒契約魔法】、依頼に関係ない場合、俺の秘密を話さない」

「了承します」


「じゃあ、秘密をひとつ」


 そう言って俺はゾンビ一体をアイテム鞄から出した。


「死霊魔法使いだったの。いいえ、死霊魔法使いを殺してスキルを奪ったのね」

「正解だな」


「教会に知れたら異端認定を受けて殺されるわね」

「まあな。他にもやばいスキルを持っている。なので戦力としてゾンビを蓄えている」

「ということは教会と戦争するつもり?」

「やむを得なければな」


「これなら、リリン家を再興するという思考になるわけね」

「ああそうだ。出来る限り国とは戦争したくない。庇ってくれる貴族がほしいが、どうしてもじゃない。折り合いがつけば良いだけだ」


「あなたが何で余裕なのか分かったわ。魔王より強いんじゃない」

「まあな。確実にな」

「勇者よりも」

「あんなの魔王以下。屁みたいなものだ」

「聞いていい? 魔王になりたいと思わないの」

「思わないね。統治なんか願い下げだし、人ひとりいない領地も願い下げだ。普通に裕福に暮らせればそれで良い」


 さて、スキルがだいぶ減ったから盗賊からスキルを賠償してもらうか。


「【賠償】、ステータスオープン」


 新しく手に入ったのは、穿孔、充填、身体強化×4、指弾、隠身、隠蔽、射撃、夜目、鉄皮。


 ろくなスキルがないな。

 生産系のスキルがないのは分かる。

 手に職を持っている奴は盗賊になったりはしない。

 そう言えばゴブリンから取ってないな。


「【賠償】、ステータスオープン」


 ゴブリンからは賠償が取れない。

 ああ、俺が襲われてないからだ。

 どっちかというと襲ったほう。

 そりゃ、俺への損害はないよな。

 生きているだけで罪とかなったら良かったのに。

 そんな上手いわけにはいかないか。


「ゴブリンのゾンビが多いわね」


 プリシラが呆れ顔で言った。


「ゴブリンは手っ取り早い。巣に行けばわんさかいるし、ゾンビでも簡単に勝てる」


 オーガもゾンビにしておこう。

 オーガゾンビは迫力が違うな。


「こんなのが100体もいれば国を落とすのは容易いかも」

「いいや、オーガゾンビなんか魔法の良い的だ。勇者パーティクラスなら簡単に勝てる。ドラゴンゾンビが10体もいれば、国を落とすのは容易いかも知れないが」

「この戦力が世に出ないことを祈るわ」

「俺のほうから仕掛けた戦いではない。教会だって放っておいてくれれば、俺も構わないさ」


 ゾンビのレベル上げはめんどくさいし、ゴブリンゾンビ程度では教国を落とせない。

 俺も何か考えないとな。

 そうだ、ゾンビ同士戦わせよう。

 ゾンビが死んだら、邪復活魔法がある。

 でも時間が掛かる。

 やはり、『強者の渇望と亡者への道』を量産すべきか。

 これを量産できればゾンビが生き物に取り付くだけで、レベルがガンガン上がる。


 ウソツキー侯爵お抱えの魔道具職人が話が分かる奴だと良いが。

 金で何とかなるならそうしたい。

 なるべくなら脅したりしたくない。

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