第9話 魔王討伐の顛末

 宝物庫にあったゴーレム馬に乗る。

 はいよ、シルバー。


 道が悪いので、走らせたりは出来ない。

 歩かせるだけだ。


 もう既に騎士団と勇者パーティの影も形もない。

 まあ、いい。

 ゆっくり行こう。

 奴らがやらかせばそれだけ賠償が増えるのだから。


 オークが現れた。

 オークは俺を見ると逃げ出した。

 魔王がいなくなって狂暴さが失われたんだな。


 それに俺が強そうに見えるのだろう。

 なにせカンストだからな。


 レベルは10で一人前。

 レベル20で熟練。

 レベル30で一流。

 ウェイ達は30ぐらいだった。


 レベル40は超一流。

 レベル50は人外。

 魔王はレベル50ぐらいだと思われる。


 それにしては計算が合わないな。

 ウェイ達4人の経験値でレベルが47になったのは分かる。

 魔王のレベルじゃ全部吸い取っても60ぐらいだろう。

 謎は残るが、まあいいか。


 結界の魔道具があるので、野営は問題なかった。

 それにモンスターは強さが分かるらしい。

 俺の気配を感じると逃げて行く。


 この分だと冒険者稼業は出来ないな。

 後で考えよう。

 金ならあるから商人になるのも良いな。


 馬で3日ほど旅をして、魔王領に近い街に着いた。


 街はお祭り騒ぎ。

 どういうことだろう。


「ええと、旅に出てて最近の出来事を知らない。教えてくれないか」


 そう言って俺は道行く男に銀貨を握らせた。


「いいぜ。太っ腹のだんな。最近の大ニュースといえば、勇者ウェイ達が魔王を討伐したって話だ」


 魔王の討伐は俺しか知らないと思っていたが。


「へぇ、魔王が倒されたのを知ったのはどうして?」

「何でも魔王討伐完了の神託があったそうだ。それで勇者ウェイ達は魔王の呪いでスキルとレベルが強奪されたらしい。痛ましいことだ」


 神託とは神も余計なことをする。

 いやナイスフォローかな。

 ウェイ達は俺の功績を横取りしたわけだから、賠償が使えるよね。

 名声を賠償してくれるはずだ。


 それにしても呪いか。

 上手い言い訳だな。


「勇者達はどうしてる?」

「引退するってさ。勇者様は王女様と婚約なさったし、他のメンバーも重職に就いた。でもレベルが低いと舐められるので鍛え直しているらしい。結婚はしばらくお預けみたいだぜ。他のメンバーも重職に就いたが仮の字が付いている」


 最初に殺す予定のウザリの情報が欲しいな。


「ふーん、ウザリはどうなっている?」

「聖女ウザリ様なら、真の枢機卿になるために、教国で教団騎士とパーティを組んでレベル上げする予定だよ。ゆくゆくは教皇様におなりになるらしい」


 最初の目的地は教国だな。

 おっと俺のことを聞いておかないと。


「勇者パーティには雑用係がいたはずだ。勇者は彼に対してなんと言っている?」

「逃げた裏切り者らしいな。だが冒険者ギルドは賞金首にすべしという、勇者の考えを否定したらしいぜ。非戦闘員は身の危険を感じたら逃げる権利があると。パーティメンバーも全滅しそうになったら逃げる権利があるらしい。そういう場合は査問会に掛けられたりすると聞いたぜ。俺としては、雑用係は許せないが規則で決まっているんじゃ仕方ない」


 あー、ウメオのギルドカードは使えないな。

 査問に掛かるとややこしい。

 当然、勇者からも話を聞くだろうし。

 俺の言うことが信じてもらえるか分からない。

 賠償は取れるが、一般市民から石を投げつけられる生活はごめんだ。


 商業ギルドに行くか。

 俺は商業ギルトの入口をくぐった。


 酒場と掲示板がない冒険者ギルドといったところか。

 カウンターに近寄った。


「登録したい」

「どの階級ですか」

「Fランクでいい」

「金貨10枚頂きます」


 俺は金貨10枚を払ってギルドカードを手に入れた。

 名前はプラムマン。

 扱う商材は魔道具。

 宝物庫にあった要らない魔道具がわんさかあるからな。


 まず、服を高級な物にした。

 そして冒険者ギルドに行った。


「商人だが、護衛が欲しい」

「どのランク、何人で、期間はどれぐらいですか?」

「Cランク3人もいればいい。教国まで商売に行く。それから、魔法学園だな。そしてこの国の王都。そこで終了だな。途中寄り道したりするかも知れない」

「それですと、金貨50枚というところですね。手数料は金貨5枚です」

「頼む」

「面接されますよね?」


 ぶっちゃけ誰でも良いんだが。


「空いているパーティに声を掛けてみてくれ」

「かしこまりました」


 ほどなくして、冒険者ギルドの応接室で待つ俺の所に、女3人がやってきた。

 戦士、戦士、魔法使いのパーティだ。

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