第8話 魔王戦

 魔王城の前にたった。

 ここまでの道は騎士団が護衛してくれた。

 ご苦労様と言ってねぎらいたい。

 ウェイは一言もなかったが、俺は心の中で彼らをねぎらった。


 騎士の何十人かが重い城門を押す。

 不気味な軋みを上げて城門が開く。

 入った庭は荒れ果てていた。

 だが、モンスターの影はない。


 城の中で待ち構えているのか。

 城に踏み込む。


 そして勇者と魔王の戦いが終わり、俺は生贄として一人残されたわけだ。


 回想終了。

 念願の魔力も得たことだし、第二ラウンドといこうか。


「おお手が生えてくる。自己再生の効果だな。魔王さん良いスキルをお持ちで、じゅるり」

「ひとつスキルを奪ったからなんだ。ここからは本気でいくぞ」


 剣で胸を貫かれた。

 だが、痛い以外は平気だ。


「【賠償】。おお、更に経験値とスキルが入って来る。【堅牢】【鉄皮】【勇心】も掛けとくか。さあやろう」

「ぬすっとめ、掛かって来い」

「おう。【剛力】【聖刃】」

「ふっ、お前、剣術を習ったことがないな」


 俺は剣をいなされた。


「ああ、素人だ。それが何だ」

「首を刎ねられても生きていられるかな。【次元斬】っ」


 魔王が剣を薙ぐ。

 俺は剣を立てて防いだ。

 力負けだ。

 聖剣が弾き飛ばされる。

 首は半ばまで斬られた。

 だが、次元ごと斬るスキルも聖剣は斬れなかったようだ。


「【賠償】。経験値とスキルゲット」

「不気味な奴だ。聖剣がないというのに微笑んでいるとはな。だがとどめだ。【次元斬】。なにっ、次元斬が不発だとぅ」


 魔王が俺を唐竹割にしようとした。

 俺は避けた。

 髪の毛が何本か持っていかれる。

 もう既に次元斬を賠償で貰えてたらしい。


「ふっ、ぬるいぜ。【賠償】」


 襲われた事実でも賠償が取れるのだな。

 経験値が流れ込んでいるのが分かった。


「なにっ?! ならば】」


 魔王が縦横無尽に剣を振るう。

 魔王が剣を振るうたびに俺は賠償を取った。

 やがて魔王の剣は俺に掠りもしなくなった。

 俺は隙を見て聖剣を拾う。


 そして魔王と剣を打ち合わせたところ、魔王の手から剣が飛んだ。


「くそっ、今回は特別に見逃してやる」


 そんなことを言う魔王。

 立場が分かってない。


「謝罪は?」

「ぐぬぬ、調子に乗るなよ。すいませんでした」

「声が小さい」

「すいませんでした!!」

「関係ないね。【次元斬】」


 俺は魔王の首を刎ねた。


「やはり邪神様の神託は正しかった。勇者パーティに敵わ……」


 謝罪したって許されない事はある。

 勇者パーティにも謝罪して貰わないとな。


 だが、それだけで許しはしない。


 戦い終わり、ステータスを出してみた。


――――――――――――――――――――――――

名前:ウメオ・カネダ

レベル:99

魔力:5712/9999

スキル:

  賠償

  聖刃 勇心 身体強化

  堅牢 鉄皮 剛力

  空間魔法 火炎魔法 氷魔法

  治癒魔法 加護 聖域

  自己再生 暗黒魔法 次元斬 超身体強化

――――――――――――――――――――――――


 おお、カンストしている。

 敵なしだな。

 敵わない敵が現れたら、賠償を取れば良い。

 そうすれば敵は弱体化する。


 さて、魔王のお宝を貰わないと。

 ワクワクしながら宝物庫に向かう。

 宝物庫の前には首なし騎士が待ち構えていた。

 こいつデュラハンか。

 地球では精霊だったか。

 こっちではモンスターなのかもな。


「【次元斬】」


 俺はデュラハンを真っ二つにした。

 デュラハンの鎧の中身は黒い霧だった。

 聖刃の方が良かったかな。

 やがて霧は散った。

 どうやら倒せたみたいだ。


 攻撃受けてから、賠償を取れば良いのは分かっている。

 だがそんな気分じゃなかったのだ。

 戦いは魔王とのやつで十分。


 宝物庫の中は凄い。

 山となった金貨。

 多種多様な魔道具。

 アイテム鞄という、見た目以上に物が入る鞄があったので無造作に宝を詰め込む。

 この金貨の大半は魔王軍によって焼け出された人達に使おう。

 そう決めた。


 お宝を詰め込む作業をしていたら、いつの間にか夜になっていた。

 城の中庭で聖域のテントという魔道具を張り、中で寝る。

 防御結界の魔道具も多数起動させた。


 まったく色々とあったな。


 ふと思う、異世界転移の賠償として賠償スキルは釣り合っているのだろう。

 そんな気がした。


 たぶん、いまウェイはあることないこと言っているんだろうな。

 俺を英雄扱いになんかにしないだろう。

 逃げ出したとか、酷いのになると裏切ったとか言っているに違いない。

 負けたのも俺のせいにしているはずだ。


 まあいい。

 生贄にされた賠償は貰ったけど、その後のことは、別に賠償を貰うから。

 まだ貰わないよ。

 奴らには謝罪してほしい。

 罪を分かったうえで死んで欲しい。

 そうでないと周りが納得しないだろうし、俺も納得しない。


 順番を決めようか。

 最初はウザリにしよう。

 あんな奴が枢機卿になるのは良くない。

 次はイヤミィだな。

 あいつに教えられたら生徒が可哀想だ。


 ニックが騎士団を率いたら腐っていくんだろうな。

 そんな気がした。


 ウェイは最後だ。

 一番美味しいのは最後でないとな。

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