第7話 滅びた街
そして、1年。
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名前:ウメオ・カネダ
レベル:5
魔力:0/0
スキル:
賠償
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今のステータスだ。
この一年でレベルは上がらず。
勇者パーティが狩るようなモンスターは俺の手には余る。
攻撃参加もできない。
勇者パーティが王城に呼ばれた。
「神託が下った。勇者ウェイよ。魔王を討ち果たすのだ」
「はい、一命に代えましても」
こんな具合で俺達は魔王城へ旅立った。
「魔王を討ち果たしたら、王女と結婚か」
「俺は近衛騎士団長だって」
「私は魔法学園の学園長よ」
「私、教団の枢機卿よ」
俺にはご褒美がないのかな。
きっと金銭をもらえるに違いない。
屋敷が建つほどのな。
この討伐が終わったら、パーティを抜けよう。
魔王討伐を乗り越えれば、文句は出ないだろう。
街道を1台の馬車と騎兵の隊列が行く。
魔王討伐隊だ。
王様もさすがに5人だけで魔王城に辿り着けとは言わなかった。
魔王城までは騎士団が露払いしてくれるらしい。
俺は馬車の御者台で、そんなことを考えた。
勇者パーティはもちろん馬車に乗っている。
御者台に乗せて貰えただけありがたいのかね。
そんなことはない。
「【賠償】」
手に金貨5枚が現れた。
精神的苦痛が金貨5枚。
安いのか高いのか。
魔境の森の入口に着いた。
ここからは馬に乗って移動だ。
騎士団に囲まれて馬を歩かせる。
おっと、オークが現れた。
騎士が槍で突撃。
オークは喉を貫かれて死んだ。
騎士団は腐ってはいないようだ。
少なくとも武の実力は真っ当だ。
草だらけの道を行く。
途中、モンスターの襲撃があった街へ寄った。
崩れた城壁。
街の中に入ると、至る所に血の跡がある。
ウェイはそれを一瞥するとすぐに街の外に出た。
モンスターめ、許さん、俺が討ち果たしてやるとかいうシーンではないのか。
「神への信仰が足りないのでこうなるのよ」
ウザリが事も無げに言う。
狂信者って奴は。
「まあ筋肉が足りなかったのは事実だな」
ニックが冗談ともつかぬことを言った。
「最後の一市民までもが死兵となって戦えば、魔王の軍勢とて倒せたはず」
ウザリの言葉はウザいな。
「こんな辛気臭いところにいたら腐ってしまうわ」
イヤミィはそう言ってウェイの後を追った。
魔王というシステムにはなんか作為を感じる。
俺としては神々が人類の数を減らしたがっているようにしか思えない。
魔王の軍団が結成するまでなんで神託を寄越さない。
そして、国がいくつか滅ぼされてから初めて、討伐せよとの神託だ。
地球みたいになることを防ぐのなら、文明の発達を遅らせるのと人口抑制は必要だ。
モンスターという敵と魔王が、そういう物のためにあるような気がする。
「【賠償】。俺は魔王軍に不利益を被ってないからだめだな」
もっとも神が自身で与えた力で被害をこうむるとは考えられない。
いつか、仇を討つ機会があれば俺がしてやろう。
だから静かに眠れ。
俺は手を合わせた。
騎士団は勇者にここを見て、色々なことを考えて欲しかったのかも知れない。
騎士団長はまともな人なのかな。
街から少し離れたところで野営する。
「おい、雑用係。食事の質は落とすなよ。辺鄙な場所へきてそれだけしか楽しみがないんだからさぁ」
「ああ、分かった」
俺の金ではないので豪勢な食事をしても別に構わない。
「おい、下郎。無礼打ちにしてやる」
ウェイの怒った声。
駆け付けると生き残りだと思われる子供がウェイの食事を奪い取っている最中だった。
激昂するウェイ。
「雑用係、見てないでこいつを殺せ」
「はいはい、血を見せると不味いので裏の方で始末するよ」
俺は生き残りを連れて行った。
「まだ他にもいるのか」
「うん」
「じゃあパンと干し肉を持って行け。それとすまんが髪の毛を貰う」
「いいよ。交換だね」
食料を渡して、髪の毛を切る。
それにモンスターの血を塗ってウェイの所に持っていった。
「そんな物持って来なくていい! 換えの食事はまだか」
「すぐにもってくる」
「ちっ、使えない奴だ」
ウェイは勇者の器ではないな。
もっとも教会と国が認定するわけで、神が選んだわけではない。
選考基準は勇者に相応しいスキルがあるかどうかだ。
ウェイが持っている聖刃と勇心のスキルは勇者に相応しいと判断されたのだろう。
神が選んだのならもっとまともな人間を選んだと思う。
魔王討伐の動機も、欲まみれだからな。
もっとも俺もおこぼれ目当てだが。
ただ働きは性に合わない。
しかし、困っている人がいたら、余裕があるのなら手を差し伸べてもバチはあたらない。
そこが俺とウェイとの違いだな。
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