第6話 勇者パーティからのスカウト

 そんなこんなで、一年経った。


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名前:ウメオ・カネダ

レベル:5

魔力:0/0

スキル:

  賠償

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 今のステータスだ。

 レベル的には頭打ちも良いところ。

 これで別のスキルでも生えたら違ったかもしれない。

 賠償で戦うと相手の攻撃を食らわないといけない、泥仕合になるから好きではない。

 痛いのは嫌だ。


 そして魔力。

 俺はゼロの体質らしい。

 魔力があれば魔道具使いでも良かったのに。


 『戦神の剛勇』のリーダーは何かあるたびに俺への感謝を口にした。

 理由はだな。

 たとえばポーション。

 不良品をつかまされて知らずに使うと、非常に危険だ。

 有名店でもたまに不良品は混ざる。

 俺は賠償スキルを使っているために、不良品かどうかの目利きは確実だ。

 不良品がないことが戦いを左右すると言っても過言ではない。


 俺は腕利きの調達人として有名になった。

 雑用の仕事も一生懸命やった。

 料理に始まって、ポーション管理、帳簿つけ、ギルドへの連絡。

 金の管理は任せて貰えなかったが、色々とやった。


 そして、なぜか勇者パーティからお呼びが掛った。


「お前、不良品をつかまされることがないんだって。良品確実の二つ名で呼ばれているらしいな」

「まあね」

「勇者パーティに入れ」


 断れる雰囲気じゃないな。

 賠償ビジネスも、勇者パーティなら金額が上がる。


「分かったよ」

「俺はウェイだ」

「ウメオだ」


 勇者パーティを紹介された、紹介したパーティリーダーで勇者のウェイはイケメンな男だ。

 金髪に碧眼。

 さぞやもてるだろう。

 片手に装着する小さな盾と、剣を持っている。


 タンクのニックは筋骨隆々。

 鍛えているのが良く分かる。

 茶髪の角刈りでまるで映画の特殊部隊の軍人だ。


 魔法使いのイヤミィはきつい目つきの美女だ。

 本と杖を持っている。

 赤毛を編み込んでいる。

 目の色は金色。

 猫みたいだなと思った。


 僧侶のウザリは雰囲気だけなら、聖女だ。

 おっとりした感じだがどうだろう。

 銀髪で、銀の瞳。

 神々しさを感じる。

 装備は杖。



「モンスター共、俺の雄姿を目に焼き付けて死ね。【聖刃】」


 勇者パーティでの俺の初戦闘はオークの群れ。


「ウェイ油断だ。後ろががら空きだ。【剛力】シールドバッシュとくらぁ」

「ニック、サンキュウ」


「もう、髪が乱れちゃう【火炎魔法よ、氷魔法よ、合成せよ。水蒸気爆発】」


 イヤミィ十八番の水蒸気爆発だ。

 スキルを発動する言葉は古語らしいが、イヤミィはそれを日常会話レベルで扱う。


「【聖域】邪悪なモンスターよ弱体化せよ。キャハハ、細切れにしてやって。モンスターは皆殺しよ。赤ん坊だって殺してね」


 ウザリはもうなんと言っていいのか。

 モンスターの血を見るのが好きみたいだな。


「ウメオ、回復ポーションだ。ちょっと擦りむいた」

「こっちはマナポーションよ。ぐずぐずしないで」


「はいはい」


 俺はポーションを配る仕事に専念した。

 そつなくこなせたような気がするがどうだろう。


 ほどなくしてオークの群れは片付いた。

 そして、家の中に震えるオークの子供がいるのを見つけた。


「ウメオ、雑用係の仕事だぞ」


 くそっ、ウェイの奴、自分の手を汚したくないのか。

 誰かに見られたらイメージダウンだものな。


「ごめんよ」


 俺はオークの子供の喉を掻っ切る仕草をして血袋を破いた。

 オークの子供に死んだふりができればいいがな。


「あーら、まだ生きているわよ」


 そう言ってウザリが杖先で横たわっているオークの子供の喉を圧迫した。

 オークの子供は手足をバタバタさせ死んだ。

 モンスターは人食いだとは分かっている。

 だが地球でも肉食獣とは上手くやっている地域もある。

 モンスターの領域を人間が侵しているとも言える。


 俺に力があれば、双方を納得させられるのに。

 ごめん。

 俺は心の中で手を合わせた。

 これが勇者パーティのすることか。


 『戦神の剛勇』ではウルフ系を狩る時、群れからはぐれた個体を狙う。

 はぐれは人に害を加えるからだ。

 子供なんか狙わない。

 見逃してやったことさえある。


 モンスターと動物との違いは、魔石を持っているかいないかだ。

 ただ、厄介なのは魔王が生まれると、モンスターはそれに従う。

 大災害が起きるのだ。


 それさえなければモンスターは動物の肉食獣と変わりない。

 俺は勇者パーティが少し嫌になった。

 折を見て、辞めることを考えた方がいいな。

 ここで上手くやっていける自信がない。


「お疲れ」


 ウェイが俺以外のメンバーに声を掛けて回る。

 そして、最後に俺の所に来て言う。


「もっときびきび動いて貰わないと困る。高い金払っているんだからさぁ」

「気をつける」


 『戦神の剛勇』より安いぞと言いたくなった。

 『戦神の剛勇』では段々給料が上がった。

 それだけ高く評価してくれたんだろう。

 辞めたの失敗だったかな。

 だが、勇者を袖にすると不味い。

 教会と国がバックについているから、顔に泥を塗られた彼らは許さないだろう。

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