第5話 戦神の剛勇
「この条件ですと、入ってくれというパーティは確実に現れます。ですが取り分が少ないのではないですか。人数で割った金額のさらに10分の1」
「雑用を馬鹿にしているわけじゃない。まだ俺は素人だからな。足を引っ張ることも多いだろう。正当な評価だと思う」
「Cランクパーティにしたのはどうしてですか?」
「たかられるのにも飽きてね」
賠償スキルのことがばれそうだからとは言わない。
いくら馬鹿でも三度目は分かるだろう。
「自覚があったようでなによりです。たかられるのを喜んでいたように見えたので」
「まあ、授業料だと思ってな。賢くなったような気がして嬉しかったんだ」
「そうですか」
変態を見る目で見られた。
賠償スキルという名前からスキルの詳細はばれないものだな。
全ての不利益に対して賠償が発生するとは思わないか。
プリシラに聞いたところ力が強くなるスキルは自分自身にしか使えない。
付与魔法も一種類で一人にしか掛けられないそうだ。
制約が多い。
まあ、スキルを3つ4つ持っているやつもざらだから、釣り合いは取れているのかもな。
Cランクパーティ『戦神の剛勇』の面接だ。
「雑用係で、調達が得意か。条件が良過ぎる。それが引っ掛かった。だが、思わぬ拾い物の可能性もある」
「まず言っておきたい。俺は素人だ。冒険者のことは何も知らない。それでその金額だ」
「なるほどな。理には適っている。が、前任の雑用係が何で辞めたか言っておこう。奴に会計を任せたら、ちょろまかしやがった」
「適正価格のお金を貰えれば、品物は確実に調達する。足りない分は俺が補填しても良い」
「何か秘密がありそうだな。ありがちなのは商会と太いパイプがあって、特別安く仕入れられるとかか」
「当たらずと言えどもですね」
大ハズレだよ。
「まあいい。適正価格を払って安く仕入れられたら、浮いた分はお前の取り分だ。ただし、品質は妥協しないぞ。粗悪品なんか持って来るなよ」
「ええ」
「よし、採用だ。しばらくはお試しだがな」
よしっ、Cランクパーティに潜り込めた。
『戦神の剛勇』の定宿に入ったところ、良心的な宿なのはすぐに判った。
悪徳業者の宿に『戦神の剛勇』を泊めたら、賠償してもぶち切れて解雇されるな。
定宿の情報は聞き出しておこう。
最初の仕事を振られた。
銀貨10枚分の携帯食料を買って来ることだ。
俺は市場にいった。
店舗では粗悪品を売っている店が少ないからだ。
見るからに虫が食っている粗悪品の店をみつけた。
包装紙で包んで分からなくしているが、客の一人が試食してばれた。
その喧噪を遠くで聞いたのだ。
文句を付けた客が去ったところで俺登場。
「携帯食を銀貨10枚分」
「はいただいま包みますね」
「品質はどうだ?」
「お客さん、疑うんですか。試食してもらってもいいですが、その場合はさらに買ってもらいますよ」
「そうか悪かったな」
銀貨10枚分の携帯食の粗悪品を仕入れた。
「【賠償】、銀貨13枚か」
買った粗悪品は罠の餌にでも使ってもらおう。
あと1軒ぐらい騙されてみるか。
奴らの手口は分かった。
包装紙で綺麗になっているのが、たぶん粗悪品だな。
「携帯食を銀貨10枚分。包装紙に包んであるが、粗悪品じゃないだろな」
「ご疑いはもっともです。好きなのを一つ食べてもいいですよ。ただしその分のお代は頂きます」
「じゃあそれ」
俺は携帯食を試食した。
「品質に問題はないな。包んでくれ」
品物を受け取って、ねんのため。
「【賠償】。銀貨13枚か。どんな手口かな」
包装紙を破くとほとんど粗悪品だった。
試食するであろう表の奴は良品で、後ろの奴が粗悪品だな。
袋に詰めるのに奥の商品から入れてたから、おかしいと思ってた。
銀貨6枚も儲けたことだしこんなところで良いか。
携帯食を包装してない店に行った。
今度は適正価格だった。
パーティの下に戻る。
「おい、大量だな」
「ほとんど粗悪品だよ。心配しなくても、良品を銀貨10枚分買ってきたから、粗悪品は罠の餌にでも使って」
「おまけを貰ってくるとはやるな。次はポーションを仕入れてこい」
ポーションでも更に儲けて、粗悪品のポーションは等級外として、冒険者ギルドに売って更に儲けた。
順調に調達係の役目を果たしていたある日。
ギルドの依頼に泥棒捕獲の依頼が張られた。
やべっ、やり過ぎたか。
あいつら、よくも詐欺して、ギルドに依頼出せたな。
依頼を見ると連名の依頼だった。
繋がっているのだな。
このままだと、そういう組織のボスとか出てきそうだ。
それは勘弁だ。
しばらく大人しくしておこう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます