第21話 眼鏡と虎と④
神社から離れ小森さんと2人街の方へと歩く。何とか二人きりに出来たとはいえ、そんなすぐに告白をするのはタイミングや勇気もあり大変だと思うので暫くは戻らずに小森さんと2人でいることにしよう。
「ね、さっきの話。憧れてるって女の子の話、詳しく聞いてもいい?」
お店を探しながら小森さんに話しかけられたので、桐生くんに言ったことと同じことを話した。
「そっか、昔のツムツムとも話してみたかったなー。ごめんね急に昨日の夜はちょっとしか聞けなかったから」
「あんまり覚えてないんですけど、昨日の夜そんな事話してたんですね、僕。他には何かありました?」
「い、いやー……特に理由はないんだけどごめんねツムツム謝らせて」
「???」
とにかくごめんなさいと謝られた。マジで何があったんだ。抹茶アイスが売られているお店が見つかったので、中へと入る。
メニュー表を眺めどうしようかなーと少し悩んだ後注文した。
「小森さん、食べますか?」
「んー?」
美味しそうに抹茶アイスを食べていた小森さんが手を止める。
「これ迷ってましたよね、食べたいかなって」
「いいのー!?ありがとー!!」
美味しそうに食べる小森さんを見るとこっちまで幸せな気持ちになる。
「ツムツムって本当に人の事よく見てるよね」
「そうですか?」
「うんーめっちゃ見てるー、はい私のもあげる」
「嬉しいですけど流石にあーんは恥ずかしいです」
「うっ……バレたか、流れでいけると思ったんだけど」
ん~甘くて美味しい〜。そんなことをしているとスマホが振動する。橘さんから電話だ。ちらりと小森さんを見ると気にしてないから電話出なーと言われ、お言葉に甘える。
『ごめん七瀬、私』
「朝比奈さん?どうして橘さんのスマホから」
『橘さん突然倒れちゃって、熱もあるっぽい。とりあえずホテルまで戻ったけど七瀬どうする?』
「倒れた!?すぐ戻ります!」
分かったと言われ通話を切る。小森さんに状況を伝え、すぐにホテルへと向かった。
……
「橘さん!」
「やほーごめんね。七瀬くん、美羽」
部屋の中に入ると思ったよりは元気そうな橘さんが居て、とりあえず安心した。
「大丈夫……?熱どのくらい?」
「微熱くらい、昨日お風呂上がりに夜風あびちゃってその時に風邪ひいたのかも」
「桐生くん達には?」
「伝えたくなかったんだけど先生が一応班の皆には連絡するって事で、さっきしちゃったみたい」
「そうですか……」
それから暫くして姫野さんと桐生くんが帰ってきて、風邪移す訳にもいかないから皆は外で観光してきなよと言われ部屋を追い出された。
「七瀬、少しいい?」
部屋を出た後朝比奈さんに呼ばれホテルの外へと向かった。小森さんと姫野さんは2人で、桐生くんは1人でどこかへ行ってしまった。
ベンチに2人で腰かけ話し始める、なんとなく話す内容は予想がついていた。
「気づいてる?」
「橘さんが桐生くんの事を好きなことですか」
「やっぱり……」
「確信は無かったですよ、なんとなくその可能性もあるかなって感じで」
あまり表情に出ない人だけど体育祭で桐生くんを応援する姿とか見ている時に、他の人より必死に応援していた気がした。
「昨日の夜本人に話したんだ。好きなのにいいの?後悔しない?って、しないよって言われたけど私にはそうは見えなくて」
「言いそうですね、そういう事」
そう言って少しだけ会話が無くなり、また少しして朝比奈さんが口を開いた。
「私は橘さんを応援したい。私が話せる数少ない人だし、今日まで話してきて思う所はある」
「僕は桐生くんを応援したいです。彼だって遊びで好きって言ってるわけじゃない。本気で好きなんです」
「……」
「……」
はぁ……と二人でため息を吐く。
「こんな事私達で言ってても仕方ないね」
「姫野さん達の顔見たらなんとなく決着はついたみたいですし」
「後は本人達次第、か」
「ですね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます