第15話 ゲーマー少女は仮面を被る

 宿泊研修も近くなってきたある日の帰り道。1人、ゲームショップへ足を運んでいた。今日は好きなゲームシリーズ最新作の発売日。朝比奈さんと出会ってありがたいことにリアルの方が忙しくなり、最近はあまりアニメやゲーム等触れていないが、それでも割とオタクだと自負している。


「あった!良かったあ」


 目的のものを見つけたのでそのままレジへと……並ぼうとしたタイミングで人とぶつかり、その人の持っていたものが床に落ちる。


「す、すみません」


「っ!いえいえ~」


 少し慌ただしく拾いレジに並ぶ。それもそのはず持っていたのは美少女ゲーム。いわゆるエロゲ。コンシューマー版ではあるが僕も一時期ハマったことがあるのでここは紳士の気持ちで特に触れず、その人の後ろへ並ぶ。

 後ろ姿だが深く帽子を被り、パーカーを着てバッグを持っている。女性?っぽくも見えて少し珍しいなと思った。

 僕のレジの番になり、前に進む。


「買えたー!!!今日は特に用事も無いし、朝比奈さん誘ってやろうかな」


 ルンルン気分で外に出るとさっきのエロゲの人を見つける、なんかキョロキョロしてる。まあ人に見られたくはないよね。

 と、その人のバッグから何かが落ちた。届けようと思い拾う。


「……ん?これ生徒手帳、しかもうちの学校!?」


 うわあ未成年がエロゲをしかも店頭……中々勇気がおありで。特に何も意識せず顔写真や名前が見えた。


「姫野、絢香……」


 ん?


「姫野、絢香」


 あれ、疲れてるのかな……。目を擦りもう一度見る。


「姫野絢香」


 う~ん?つまり?


 エロゲーマーのバッグから姫野絢香さんの生徒手帳。

 ↓

 見た目や匂いが女性っぽく、顔を隠していた。

 ↓

 姫野さん本人の可能性。

 ↓

 姫野さんはエロゲーマー。


 頭をフル回転させてたどり着いた答え。いやいやありえないと思考を放棄する。ふと気がつくと目の前に誰かが居た。出来れば予想が当たっていないことを祈る。


「……見、た?」


 わなわなと聞き覚えのある声が震えながら確実に僕に対して問う。


「はい……」


 5時のチャイムがとても悲しげに聞こえた。

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