第8話 体育祭準備、時々小森④
体育祭も残り数日と迫り、応援練習やクラス内での競技練習等大忙し。朝早めに来て練習したり放課後を使って練習したりしていた。
いつも通りその後朝比奈さんと聞き込みをしてその帰り道。
「ん?七瀬、あれ」
「?あ、小森さんですね」
ジャージを着て走っている。遠目で暗かったのもあり表情は見えないが、多分リレーに向けて走り込みをしているのだろう。
「声、かけなくていいの?」
「邪魔したくないですしやめときます」
「ん、分かった」
……
夜になり布団に入ってしばらく経つのだが……眠れない。気を紛らわそうと寝返りを何度もうってしまう。
「寝れないの?」
「あ、すみません起こしちゃいましたか?ちょっと最近体動かすことが多くて……疲れすぎて眠れないというか」
「じゃあ何か話そ、私もあんま眠くないし眠れるまで私付き合うよ」
「じゃあお言葉に甘えて……。帰りにあった小森さん走ってたじゃないですか」
「うん」
「あの人、なんというかハイスペックで何でもこなせちゃうんですけど。それでも家に帰ってから走り込みまでして、何かそこまでして必死になる理由でもあるのかなって」
そもそも学校でもリレーの練習なんかはやってる訳で。中でも小森さんは誰よりも真面目に取り組んでるし朝は誰よりも早く来て帰りは最後まで残ってやっている。その上さっきの帰宅後の自主的な走り込み。気になる。
「うーん、完全な私の主観だけどやっぱり勝ちたいからじゃない?どうしても勝ちたい相手がいるとか……それか」
「それか?」
「勝って、1位になって誰かに認められたい、褒められたいとか。それが好きな男の子かもしれないし仲のいい友達かもしれないみたいな。誰かは分からないけど」
「なるほど……」
「心配なんだ?」
「最近は一緒なことが多いですし、それ抜きにしてもそりゃ頑張ってる人は応援したくなりますよ」
「そっか、なんか妬けちゃうかも」
「妬ける?なんでですか?」
「だって、私が七瀬の友達1号だし」
急に、突然そんなことを言い出す。ずっと気になってたこと、友達。朝比奈さんは僕の……初めての友達。嬉しさに言葉が出ない。
「……あれ?おーい?返事してくれないと恥ずかしいんだけど。寝ちゃった?」
「起きてます。これで借り物競争に友達って出ても大丈夫だなって考えてました」
「ふふ、何それ照れ隠し?」
「違います」
「……そろそろ寝ます、おやすみなさい」
「ん」
嬉しくて本当は眠れそうにないけど。布団に潜り小さな声で呟いた。
「ありがとう、朝比奈さん」
「……ん」
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