第6話 体育祭準備、時々小森②
放課後、朝比奈さんと共に最初に目を覚ました公園へ向かった。近くにいる人に朝比奈朝日という金髪の女の子を知らないか、このくらいの身長でこんな感じの人を知らないかと聞いて回ってみたが特にこれといった情報は得られなかった。とりあえず今日は終わりにしよっかと言われ、帰る途中ファミレスに立ち寄った。
「すみません……あまり進展がなくて」
「ううんそんなことないよ、私一人じゃ誰かに質問することだって出来なかった。知っている人が全然いないっていうだけでも1歩進んだよ」
「はい、ゆっくりでも全部解決するまでお手伝いしますので」
「うん、ありがとう……」
とはいえ、現状情報が少なすぎる。とりあえずで公園周辺で聞き込みをするのは続けるつもりだがとても地道だ。せめて何か1つでもヒントが欲しいところ。
「やっぱり何も思い出せませんか?少しでも気になることがあれば調べ方も変わってきます」
「そうなんだよね、うーん……」
5分ほど、頭を抱えた後
「ごめん、やっぱ何も思い出せない」
「そうですか……分かりました。とりあえず何か分かるまでは聞き込みを続けましょう。少しでも何か気づいたら教えてください」
「うん、分かった」
そろそろ帰ろうかとドリンクをごくごくと飲んでいると
「あれ七瀬くんじゃん、やっほー」
「ぶぼっ!?」
小森さんがふりふりと手を振りながら近づいてきた。と同時に瞬時に朝比奈さんが対面から僕の横に移動する。
「な、何でいらっしゃるのでしょうか」
「何でって私がファミレスに居ちゃダメなのー?さっきまであややん達と居たの。そういう七瀬くんこそ1人で……ん?誰かと来たの?」
2つあるコップを見て小森は不思議そうな顔をする。
「いや、1人です!!悪いでしょうか!?」
「え、いや悪くないけど……なんで2つ」
そう言いながら対面に座り始める小森さん。怖すぎる、何故そんな簡単に全然話さない人と同じ席に座れるのか。あ、ポテト頼みはじめた。
というか朝比奈さんも近い……、少し顔が赤くなってしまう。
「体育祭のリーダー同士だからさ、放課後になったら少し話そうかなって思ってたんだけどすぐ帰っちゃうんだもん。なんか用事でもあったの?」
「ま、まあちょっと今すぐにでもポテトを食べたいなと思いまして」
「えーそれで1人でファミレス?うけるー」
うけなーい。絶対うけてなーい。心では爆笑しとるんか?おお?横目で隣を見ると朝比奈さんが手を合わせて謝っている。大丈夫だからそんなに謝らないで欲しい。
「ていうかさー、学校始まったら声かけてくれるみたいな話してたじゃん?なんで話しかけてくれなかったの?」
ま、まずい……そりゃ聞かれるよな。どう答えれば……。
「七瀬、返事しなくていいから聞いて。私ずっと考えてたんだけど、この人が今1番七瀬と友達に近い人だと思う。SNS上でも話したことがあるって言ってた唯一の人だし。怖いかもしれないけど変に嘘つかず素直に答えた方いいと思う」
朝比奈さんから僕にしか聞こえていない助言をもらう。その通りだ……息を整え小森さんの質問に答える。
「僕はその、人見知りでして……。話しかけようとしたんですがなかなか勇気が持てず躊躇ってしまいました。時間が経てば経つほどどんどん億劫になり……すみませんでした」
そう言って深深と頭を下げた。小森さんの表情は見えない。少しして口を開いた。
「ぷっ、あはははは!!!!いやいやそんなに怒ってないって!!!そんなに頭下げるなよー!!!草」
草?
「あー面白、ツムツムってそんな感じなんだね。真面目かよ」
ツムツム?
「七瀬紬でしょ?だからツムツム、嫌?」
「嫌じゃ、ないです」
「んじゃそれで。体育祭のこととか何かあったら連絡するねー!」
そう言って大量のポテトを一気に食べ終え、颯爽と去っていった。
「嵐のような人……良かったね、1歩前進じゃん」
「はい……」
「泣いてる?」
「泣いて、無い!」
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