第3話 初めまして透明ガール③
「着きました、ここです」
そう言いながら家の扉を開けた。
「ただいま」
「おか」
リビングから2文字だけ返ってきた。特に気にせずそのまま階段を上る。
「ここが僕の部屋です、気にせずくつろいでください」
「うん、ありがとう。さっきのは妹さん?」
「はい、今中2の
「うん、お願いします」
お茶をちゃぶ台に置き、本題に入る。
「それでこれからどうするんです?」
「うん、というか信じてくれるんだ」
「鈴、妹が何も反応してなかったので信じます」
部屋まで辿り着くまでにリビングの鈴と目が合った。すぐにそっぽを向いたが。その反応を見る限り朝比奈さんの言ってることに嘘は無い。
「そっか……うん、それでね私の」
朝比奈さんが言い終わる前に突然部屋のドアが開かれた。
「兄さん、イヤホン余ってない?片方聞こえなくなっちゃって……何、どしたの」
「い、いや別に」
「……なんでコップ2つ?」
「あーイヤホンね!はい、これ前に使ってたやつあげるから!はい下行った!」
「ちょ、ちょっと」
バタン!びっくりはしたけどやっぱりだ。朝比奈さんは完全に見えてない。
「すいません、朝比奈さん。それでさっき……」
朝比奈さんの方に目を向けると、頭を下げた。
「私の記憶を取り戻すのを手伝って欲しい」
概ね予想通りだった。
「いいですよ」
「そうだよね……私も七瀬に出来ることは何かするつも……え?いいの?」
「だって他に誰も頼れないんですよね?」
「う、うん」
「それに不思議すぎて僕自身興味がありますから、お手伝いさせて下さい」
本心だ。それに多分……こうやって家族以外の誰かと普通に話せたのは本当に久しぶりだ。たとえ誰にも見えてなくても僕は嬉しかった。
「ありがとう……っ」
少し潤んだ瞳で朝比奈さんは言った。
「とりあえず、今日は暗くなってきたので解散しましょうか。放課後とか休みの日なら手伝えますので、とりあえず明日から」
「うん分かった」
そう言いながら帰ろうと立ち上がった所で1つ疑問が生まれた。
「そういえば朝比奈さん、家の場所とか覚えてるんですか?」
「ううん、知らない。最初に目が覚めた公園に行こうかなって」
「……この3日間そこで寝てたんですか」
「うん、まあ見えてないし」
そう、だったのか。怖さとか寂しさとかきっと計り知れなかったのだろう。僕には憶測しか出来ないが……。
「……」
「じゃあ、明日は何時にどこに行けばいい?七瀬の学校の近くとかでいいよ」
「あ、あのここ狭いかもですけど」
正直こんな事言って気持ち悪いかもとか色々と思うことはあるけど朝比奈さんをこのまま帰らせちゃダメだと思った。
「?」
「記憶戻るまで、泊まっていきませんか?僕、男なので嫌だったらいいんですけど……、外よりはマシかなと」
「や、でも……迷惑じゃない?」
「僕友達がいないので、話し相手がいるのは嬉しいです」
「……本当?お願いしちゃうよ?」
「本当です」
「よろしくお願いします……」
申し訳なさそうに朝比奈さんは今日何度目か分からない頭を下げた。
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