第4話 魔法武器



現状は自分以外の全員が近接戦闘要員でJKのような年齢設定、ただ俺だけなぜか4歳相当の幼女?


なんか釈然としないが、状況を観察しながら単独活動するスタイルならば特に問題はない、小さい分発見されにくいし敵に見つからなければ直接戦闘する必要もないので痛くない。


現状の戦力から判断すると所持する武器は飛び道具、しかもアウトレンジからの超長距離攻撃武器がベストだ!


だとすると思い浮かぶ武装はライフルとか弓か?


だからと言って反動の大きい対物ライフルみたいなのは、筋力と体格の問題からNGだし、音が大きいと敵に位置を知られる危険性もある。


身長の関係で、弓だと天使のキューピットみたいで見た目がしょぼいし、主に偵察任務が必要だから伏せたり隠れて情報収集しつつ攻撃したい。


スコープ付でライフル系の武器なんてどうだろうか?


「ぷぷるん、そういえば武器は何で魔法が使えるんだ?」


『自身の魔力と、武器に刻まれた魔法陣によって効果を発揮します。』


魔法陣って物を駆使して魔法の力を発現させているわけか!


「魔法陣の種類はどんな感じになっているんだ?」




魔法陣の概要を簡単に説明してもらった。


魔法陣は、特別な文字や記号を配列した装飾文様であり、色々な魔法陣を組み合わせることで、複合的な機能を持たせることができるらしい。しかし魔法陣だけでは機能せず、自分の持っている魔力を使って魔法陣を起動させるらしい。


メイドインヘブン神様印の製品なので、色々な魔法陣を大小組み合わせることができるとのこと。


剣に炎を纏わせる魔法陣を刻めば、炎の刃を持った剣になる。

複数の魔法陣を武器に組み込んで、自分の魔力を通して各種機能を発動する。


ライフルを魔法陣で再現するには、どうするべきか・・・?


火薬や何かの圧力で弾を飛ばすと、弾が銃口から飛び出した時の物理的反動を支える必要がある。


反動に反作用をする魔法陣とか付けて、力を逆方向に相殺する手もあるが、音や光が出たら現在の銃器の欠点と変わらない訳で、そこを何とかしたい。


折角の魔法武器なんだから、現在のウエポンシステムの欠点を補って、もっと良いことが出来そうな気がする。ビームやレーザー的な光学系粒子とか、光の魔法とかを打ち出す手も有りそうだが・・・


それなら現代兵器理論でも出来そうな気がするし、せっかくなら魔法陣を利用しないと出来ない武器がいい!


ちょっと頭の中で妄想しながらシュミュレーションしてみる。



一本のシャフトの中に加速の魔法陣を刻む、


魔法陣に弾が触れると弾は前向きに加速される。


弾は頭が大きく丸みがあって尻尾が尖がっている流線型(涙型)。

涙型なら空気抵抗で減速しにくいし、頭が重いので弾道が安定する。

弾の長さは3cm位の物で、加速の魔法陣は弾丸の長さ毎に連続して刻んでいく!


なんだかイメージが出来てきた。


魔法陣をシャフト内部に入口から出口まで等間隔に並べる。

送り出した弾丸は入口から出口に向かって加速しながら進む。

弾丸は段階的に加速されて行き出口付近ではライフル以上の速度を伴う!


シャフトの出口と入口はシャフト内の空気だけ抜いて真空を保つ魔法陣で蓋をする。

これによって弾丸がシャフト内で加速時に空気抵抗や摩擦を無くす。

はじめに回転の魔法陣を敷いて弾丸を回転させてもいいかもしれない。

ジャイロ効果で弾道が安定するかも?


弾丸が銃口から出た時の速度にもよるだろうが、爆発力による反動は極めて少なくなりそうな気がする。


弾丸が、銃口から飛び出した時に、真空状態から急に空気の壁に当たって大音響がするのだろうか?


弾丸に風の防御的なベールを始めから纏わせて、シャフトに弾丸が接触しない様にしたらどうか?


発射から命中まで弾丸表面を覆っていて、空気摩擦を軽減できたらなおいい!


弾丸は超高密度の金属的な物質が良いが、発射時の空気抵抗が無いなら、発射時の加速で砕けなければ何でもいい。


むしろ魔力が続く限り供給できる物が良い。


装甲が有る対象や対物に射撃するシチュエーションが有るのだろうか?


引き金に魔法陣が有って、引き金に指を掛けると弾丸を生成するとかできないだろうか?


引き金を引き絞ったら最初の加速魔法陣に弾丸が供給されて、あとは加速して発射される。


魔法陣は大変そうだが構造は単純に出来そうだし、原理的には魔法陣を用いたレールガンって感じだな!


それに、スコープ的な観測用の望遠鏡をセットしたい!

風速や距離を自動的に計算して、目標の中心を指示してくれると凄く素晴らしい!

倍率も可変で、魔法的な何かでクリア―に見えるようにしたい!


幼女向けに軽くて、低反動で連射可能な超長距離スナイパーライフルができるのでは?


一つ一つは特に尖がっていないけれど、集合するとすごい武器って感じがする!

妄想が尽きないが、幼女が携帯可能で単独活動用の魔法武器ならこんな感じがいいと思う。


なんだか妄想でテンション上がってきた!


「ぷぷるん!オーダーだ! まじかるスナイパーライフル行ってみよう!」




『・・・・』




オーダーを入れた途端に突然それが起こった。


万年床のせんべい布団の中央部の布団上50cm位の空間に、白色の弱い光の点が出現した。僅かな点でしか無いそれは、寝室の蛍光灯の光に負ける様な頼りないものであり、気を付けて凝視し続けなければ見失ってしまいそうなほど頼りないものだった。


小さな点であったものがゆっくりと一本のが筋となり、それに伴って光量が増していき、確実に何かがそこにあると感じた時。


縦に成った瞼が開かれるように、ゆっくりと光で満たされた空間が広がっていく。


裂け目の向こう側は、青白い柔らかな光に満たされていて、こちら側に光が漏れ出してくる。


やがて光は泡立つように揺らめいて、徐々に光度を強めていった。




直視すると網膜に残像が残るような強い煌きとなり、その裂け目を中心にして猛烈な光の爆発が連続して発生している。


なんの音も匂いも熱も感じない。ただアーク溶接のアーク光を思わせる強烈な光だけが、薄汚い万年床の和室を満たしていく。


直視することを止め、視線を足元に移しても光の氾濫で部屋全体が白く輝いている。

部屋全体から色が失われて、影すらも消えていく。


目を閉じて顔に手を当てるしか無くなった時、ゴトリ と音がして唐突に光が失われた。


ふと、息苦しさを感じて深呼吸をする。


光の爆発はかなりの長時間続いた様に感じられたが、実際にはあの変身の時と同じように一呼吸の短い時間であった。


知らぬ間に床に座り込んでいた。


網膜に焼き付いた様な目の眩みが、徐々に薄らいでいく。


薄汚い布団の上に、ピンク色の長細いものが置かれている。


ライフル?


全長1mほどの長さのそれはいわゆるライフルだ!しかも全体的にピンク色だ。


存在感のある八角形の銃身は、直径3cm程の太さで、金属ともガラスとも判断できない硬質な素材で出来ている。


このシャフトには直径1cm程の穴が貫通しており、クラッシックなライフル銃特有の銃床が付いている。銃床はマットなラバーを思わせる素材と成っており、グリップとトリガーは、幼女の掌に合わせてか、かなり小さい。


銃には直径の大きなスコープが乗っていて前後にレンズがはまっている。


『ぷぷるん、これは何?』


『これはファンシーりなの武装、神器スナイパーライフルです。』


布団の上に重量感のあるピンク色のライフル銃が置かれている。


四つん這いでおずおずと近寄って行き、正座の姿勢でじっくりと観察する。


標準のコスチュームや武器もピンク色、この色は自分のイメージカラーなのだろうか?


質感はガラスや金属の様に見えるが、光を反射しないマットな表面仕上げと成っている。


パーツとパーツのつなぎ目にある黒く太いラインは、目を近づけてよく見ると、

単なる溝ではなく細かい文字や文様がびっしりと刻まれている。


スコープは銃に融合した様に一体となっていて、銃身よりも太く、デザイン的に調和がとれていてカッコいい!


「ぷぷるん、これって触っても大丈夫か?」


『この武器は、あなただけにしか使えない、あなた専用の武器です。』


そっと指先で銃身の表面を撫でてみる。


サラサラとした手触りで、ひんやりとした硬質な感触だ。


ゆっくりと爪を立てて突っついてみる。


コツコツとした音は金属と言うよりも、ガラスの様に透き通った感じだ。


グリップや肩当部分の素材は、革の様なしっとりとした質感で、温かみが有って手に吸い付くようだ。


そっと左手で銃身をすくい、右手でグリップの下に手を滑り込ませて、頭上に押し頂くように、この神器を持ち上げてみる。



思ったほど重くない、鉄ならば5kgはあるだろうが、持った感じは幼児でも持って歩けるほどの重量感、だからと言って木や紙の様な薄っぺらさは無くズッシリとした安定感がある。


右手でグリップを握って、左手は銃身の下に添わせる。ぴったりと肩に肩当を押しつけて、銃床に頬を当てると、右目の前にはスコープがくる。この体にピッタリと調整されたフィット感は流石のオーダーメイド品である。


スコープの中から見た像は中心に細い十字の線があり、銃の方向を変えても十字の位置に合わせてピントを自動で調節する様だ。


3m先の壁に吊ってあるカレンダーで8の下の丸を狙ってトリガーに指を掛けると、カチッと何かが組み込まれたような感触が有った。


「今のは?」


『弾丸が装填されました。』


そのままトリガーに力を入れて引き絞るように人差し指を引き寄せる。


パチッツ!


鞭で叩いたような短い音がして、8の字右上に黒い穴が開いた。


狙った十字の位置より1cm右斜め上の位置だった。


猛烈な反動や音が有るのかと思って身構えていたが射撃時の反動は全く無くて、先ほどの音も的に当たった壁から聞こえた感じだ。


「あっ! 壁はどうなってる?」


『壁を貫通し弾丸は斜め上空に向かって行ったようです。』


「ぷぷるん、一旦変身を解いてくれ! 


幼稚園の制服姿ではカレンダーに背が届かない。」


スッ~と何のエフェクトもなしに元の45歳の背広姿の伊藤琢磨に戻る。


手元に有った銃が消えて腕が軽くなると同時に、目の前の視覚が霞んで、何だか体が重く感じる、不摂生な生活のせいか?体調不良を疑うほどでは無いが幼児の体の方が圧倒的に体調が良い。


運動不足も有るだろうし、年齢的にも健康に気を付けねばならない。


気付くと、すぐ横にはぬいぐるみ姿のぷぷるんがチョコンと座っている。


すぐに立ち上がり、カレンダーを捲ってみると、壁には直径5~6ミリの穴が開いている。


外はすでに暗く成っているため、貫通しているのかどうかは分からないが、恐らく貫通している気がした。


結構危ないことをしていた。


銃口の先に人が居たら取り返しの付かない事に成っていた事だろうし、

音が大きくてパワフルな感じだったら通報されて警察沙汰だったかも?


銃の暴発とか誤射ってよくニュースに成っているから気を付けよう!


スナイパーライフルの取り扱いには、かなりの練習が必要だ!


何処か人気の無い広い場所で練習する必要がある。


「ぷぷるん少し練習が必要だな!」


ぷぷるんは立ち上がり腰に手を当てて頷く。


「そのようです。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る