第3話 初めての変身
美少女戦士ファンシーりな・・・って。
小さい小柄とかのレベルでは無くオムツが取れたか取れないかといった幼児の姿、年齢にして4~5歳の幼女だ、日本人なら保育園や幼稚園に通っている様な幼い女の子であり、さらに目を引くのは金髪碧眼で肌の白いヨーロッパ風美少女って事だ。
こんな幼女の姿でいったい何ができるのか疑問だが、この体に成って感じるのはとにかく軽いのだ。筋力に対して体が小さいからか?体脂肪の量なのか?これまでの不摂生だらけでガタの来ている体とは違って、フレッシュな子供の身体は初老の体とは全然違う・・・。
そして決定的な感覚の違いは視界がクリアで細かいところまでよく見える!最近始まった老眼で手元がぼやけて視界が霞み虫眼鏡や老眼鏡が手放せなかったのが嘘のようだ。裸眼で自分の手の指紋がこんな近くではっきりと見えるなんて!なんとも感動的で快哉を叫びたい!
チラシや小説を読むとき30センチ以上は離さないとピントが合わなかったのに、10センチ手前でもしっかりと細かい物が良く見える。
だが手や足の状態を確かめてみても、規格外に強力な力が備わっているようには感じられない。むしろ、変身前の方が筋力は強かった気がするが・・・。
さっきぷぷるんの声は聞こえたが姿が見えないな?
「ぷぷるんどこ行ったんだ?」
頭の中からぷぷるんの声が聞こえる。
『ぷぷるんは変身と同時にあなたのコスチュームになり、魔法少女の能力をサポートします。』
「衣装って変えられるの?」
こんな派手な衣装で街中を歩くのは、今のメンタルでは耐えられない。
『標準のコスチューム以外にも状況に合わせて変更できます。』
なるほど、かなり便利な機能だ!
「試しに近所にある青い鳥幼稚園の衣装に変えられるか?」
一瞬で衣装は見覚えのある青い鳥幼稚園の冬服に変わっていた。
肉体の変身時に比べると呆気ないほど瞬く間に衣装が変わったが、体に布が擦れたり当たった感覚は無かった。
小物やアクセサリーも再現されており、青いベレー帽や黄色いポシェット鞄、白い靴下に指定の靴まで揃っていて、靴下の青い小鳥の刺繍と、胸には「りな」という名札まで付いていて芸が細かい!
「あとは、魔法少女の武器って何?」
待ってましたとばかりに鷹揚に丸い手をポンとばかりに打つとぷぷるんは答える。
『それを決めなければ成らないのです!メインウエポンを1つだけ自由に決められます。』
剣とか刀、槍、弓矢なんてオーソドックスな武器や、マジカルステッキやバトンみたいな魔法少女特有の武器を渡されるのかと思いきや、自分で選べるとは!
ならばどんな場所で戦うのか?
何を目標に戦うのか?この辺ははっきりさせておく必要があると思う。
「どんな敵と戦うのかによって選択する武器が変わると思うんだけど、
敵ってどんなやつなの?最終目標はなに?」
『魔人と魔人に改造された改造人間と戦います。
魔王がこの世界に送り込んだ魔人を討伐することが目標です。』
なるほど、美少女戦士というよりも戦隊ものやライダー系のイメージに近いのか?
「どうやって戦う感じなの?
これまでの先輩美少女戦士ってどんな感じだったの?」
先輩方の戦いぶりから判断した方が速そうだし、被らない様にしないと残念な事になる。
『敵を斬ったり殴ったり力で分からせる感じです。
武器は剣やステッキ又は、ロッドで水や火などの魔法を出すとかもありました。』
脳筋対応で直接敵を殴りに行く王道のパターンか?
「どんな場所で戦っているのかはどうなの?」
異空間とか異世界でのバトルだったら話が分からなくなってくるが?
『敵の情報を受けて施設や基地を襲撃します。』
襲撃・・・・これって、現実世界の日本基準では、こっち側が悪だよね?
「ちなみに敵の情報はどんな感じで手に入れるの?」
『魔人の魔術の残滓を犬や鳥、猫、ネズミなどの仲間に調べさせています。』
・・・・っん!小動物のお友達に手分けして探してもらうとかなのか?
作戦参謀とか司令部的な組織は存在しない感じかな?
「そんなので、お宅ん所の神様大丈夫なの?」
『大変苦戦しています・・・。』
戦略的な展望も計画も無いまま行き当たりばったりで戦いを続けている訳か?
「ぷぷるん、もっと戦士や戦いについて詳細を教えてくれ。」
ぷぷるんから聞かされた内容はこんな感じだった。
3年前から魔人の侵略が始まった。
初めに魔人は幽体の状態でこの世界に侵入した、スピリチュアルな感じの精神的存在だった。本来、別の神様が支配する世界に入り込むのは極めて難しいが、あちらの世界の魔王が多くの生贄を費やし、儀式魔法で配下の魔人の精神体を送り込んだという。
魔王の目的はあちらとこちらで空間を繋げるゲートを構築し、いずれ物質の行き来をするための橋頭保を構築する事らしい。こちらの世界には魔法の概念が無いので、精神的な浸食を繰り返して洗脳や精神汚染を使った極めて陰湿な行為をメインに侵略を進めている。
こちらの世界で初めに新興宗教の教祖が魔人の精神体に取り付かれた事で魔人が実体化した。宗教団体の信者を使って、政治、経済、金融、警察などの組織に浸透し、宗教組織と施設を使って洗脳や肉体改造によって、魔王の受け入れに必要な儀式魔法のための準備と、大量に必要と成る生贄や奴隷人間の確保を続けている。
すでに全体主義のいくつかの国では、国のトップが洗脳されていて、魔人の言いなりの国家運営を行い、隣国との緊張関係を高めて大量の難民を発生させ、意図的に大量の奴隷を確保するための準備が進められている。
魔人と戦う美少女戦士は5名だったが現役は3名であり、初代魔法少女の2名は敵に捕まり実質引退して行方不明だとか。
行方不明の2名は敵の施設に拘束されている可能性が高く、正体が敵側にバレて家族や血縁者が宗教団体に取り込まれてしまった。両親や兄弟が出家信者となり家庭が崩壊した挙句、メンタル的に戦えなくなった所を拉致されたとの事だった。
この反省から有能でピュアーな人材を登用することを諦めて、
失うものが無い人材のリクルートに方針転換されたという。
現役の先輩美少女戦士3名は、いざ事が起きたら即殴り込みに出かけているらしい。
本当に大丈夫なのかそれで?
「・・・・・」
味方がどんな能力なのか?そして如何なる性格かも不明で、そもそも敵にマークされると宗教団体が絡んでくる案件なんて誰を信じればいいのか分からない。たとえ味方であっても迂闊に接触しに行くのは賢明な方法ではない。ここは一旦単独行動とするべきだと自身のサラリーマンとしての経験が警鐘を鳴らしている。そして魔法少女の直面する宗教団体の危険性と、おっさんが変身すること(身バレ)のヤバさも無視できない。
先ずは敵にも味方にも知られる事無く、現状の敵味方の戦力と能力をよく観察してから、個々の状況次第で介入するスタンスが最適だと思うのだった。
「ぷぷるん! 俺の思考で分かったと思うが、敵にも味方にも存在を明かさずに、
当面は間接的にサポートする感じで行きたい。
自分の存在が味方に知られて、これまでの行動パターンや会話などが変わって、
敵に悟られることを避けたいんだ。」
『わかりました!でも本当は、4人揃ってポーズを決めて名乗りを上げて欲しかったです。』
「そういった目立つことして戦うから、
搦め手から攻められて2名が実質引退なんだろ!
それと、一度魔法少女と敵との戦いを見たい。
遠くから双方に気付かれない場所でじっくりと戦いを見てみたいのだが・・・。
マジカル望遠鏡とか、マジカルミラーとか、マジカルな感じのアイテム無いの?」
『武器アイテムは一つだけなんです!神様の武器なので1回だけで決めてもらう感じですが、じっくり考えてもらってOKなので・・・。』
衣装変更は状況に応じて都度チェンジ可能だが、武装は一個だけで固定か・・・。
変身することによって全くの別人になれることは、極めて大きなアドバンテージだ!
性別も体格も年齢すら全く違う者に変身できるのは、得難い能力といえる。
変身する瞬間(あの踊り&セリフは絶対誰にも見られてはいけない!)を見られなければ、体積が約20%位までに縮小するこの状況をだれも説明できない。何らかの関係性が疑われる事態に遭遇しても、「俺」と「美少女戦士ファンシーりな」が、同一人物として見られる可能性は極めて少ないし、それを証明する手立ては無い。
CIA、FBI、KGB、モサド、公安調査庁、MI6どんな優れた機関もこのカラクリは絶対説明不可能な気がする、さすがは魔法の力だ。
「他の美少女戦士はどんな感じで、どんな武器を使うのか一つ一つ詳細を教えてほしい!」
『美少女戦士ファンシーみり、魔法剣の使い手です。
炎を纏った片刃の剣を使って、敵を倒します。
剣から炎の槍、ファイヤーランスを飛ばす攻撃も可能です。
十六歳相当の体格で赤毛にショートヘアーの健康的美少女です。』
頭の中にファンシーみりのイメージ画像が思い浮かぶ、赤毛の健康的な美女だ!日本刀とは違う西洋風の剣の刀身に炎を纏っている姿はザ・美少女戦士ファイターといった雰囲気だ、戦隊ヒーローものではリーダー的な赤といった感じだ。
『美少女戦士ファンシーるる、魔法杖を武器に水や氷の魔法を主に使います。
打撃武器として杖を振り回して殴打する攻撃も行います。
十八歳相当の体格で黒髪ロングストレートヘアーの大和撫子風美少女です。』
ファンシーるるはキリリとした立ち居振る舞いを感じさせる日本女性の見本の様な美しい少女だ、見た目でも頭の回転が良さそうで戦隊ものではブルーの立ち位置を思わせる。魔法の杖で魔法攻撃をする関節攻撃メインの様に見えるが、実際には杖を振り回して接近戦もこなす打撃戦キャラでもあるらしい。
『美少女戦士ファンシーゆい、魔法の小手を装着し敵を殴り倒します。
気合を入れたパンチからの衝撃波で離れた敵にもダメージを与えます。
十六歳相当の体格で茶髪のポニーテール活動的美少女です。』
ファンシーゆいはボンキュボンのグラマラスなボディーで明るくて親しみやすそうな見た目でとても美人だが、超接近戦しかも拳で相手を殴り倒す感じらしい、戦隊ヒーローものでは黄や緑の立ち位置な感じの様に思われた。
他の魔法少女は、みんなJKくらいの年齢設定なのに何で自分だけ幼女なの?
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