メーン・スイッチ

 朝いちばん、空回る芯だけのトイレットペーパー、とか。

 洗面台に落ちる私よりも短い髪の毛、とか。

 並びもぐちゃぐちゃで、蓋が開けっ放しのボディソープたち、とか。

 床に置かれた、脱ぎっぱなしで裏返ってる靴下、とか。

 ハイボールを飲んだ後、溶けた氷が溜まったグラス、とか。


 彼と会っていなかった数日でも、そこにずっと彼がいる。


 開けた寝室のもったりした空気。汗と、きっと互いの口臭。


 髪も濡れたまま、彼のベッドに横たわる。


 シーツとか枕とか濡れちゃうな。

 ひと指動かすことすら億劫で、一度瞼が落ちたっきりもうひらかない。


 もう全部起きてからでいい。

 今はもう少し彼のにおいで胸いっぱいに。


 ゆめの彼は私を抱き締めてくれるのかしら。

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