あさひ

 朝いちばんに、顔の違和感に気が付いた。重たい体を起こせば、彼のためにと買ったパンティとブラジャーをまとった自分の姿が目に入る。

 男を忘れた体は、下着から黒い茂みを露わにする。


 頭は痛くない、昨日酒の一滴も飲んでいないから。

 目は腫れてない、昨日は泣いてもいないはず。


 口腔内のぬめりと、顔のかさつき。


 昨日は、そう。彼の帰りを待ったまま、そのままベッドに沈んだんだ。


 彼は昨日夜勤で、たしか。

 スマートフォンの通知、彼の連絡が無かったことを示す。


 こんなひどい顔を見られなくて済んだ。

 そう思えばいいだけなのに。

 彼がいれば、彼さえいれば、こんなひどい顔になることなんて、なかったんじゃないのかな。


 彼を忘れつつある身体は、どこに触れてもチクリと痛い。


 二人の夜を期待しているなんてこと、口が裂けても言えやしない。

 茶化されて、私よりも大きな手で、頭を、輪郭を、優しく触れてくれるだけ。

 乾いたままの唇は、いつから手入れを忘れただろう。

 抱擁と共に過ごした夜は、いつからなくなってしまったのだろう。


 あなたは一つも、知らないでしょう。

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