第9話 怖い話

 食事のステーキは最高に美味しかった。

 京都でステーキという最高にミスマッチな献立ではあったが、やはり肉はどこで食べても美味い。


 明日の朝食が楽しみだ。


 夕食を食べ終わった俺たちは、消灯まで自由時間となった。

 みんなで何をして時間を潰すか考える。


「王様ゲームしようぜー!」


 川辺が言った。


「おいおい、陽キャみたいなこと言うなよ」

「じゃあなにすんだよ」

「うーん……」


 そういわれると困る。スマホでゲームも考えたがこの人数でできるゲームなんてないしな。


 しばらくの間部屋に静寂が漂う。普段PCの前でエ〇ゲしかしていないからいざPCがない環境になると何をして時間を潰したらいいか分からない。

 ちなみにこれ、オタクあるある。


「それじゃあ、怖い話はどうだ?」


 金田が提案する。


「今の時期に怖い話? やるには遅い気がするぞ」


 俺は、異議を唱える。


「周介、そんな細かいこと気にするなよ。ほん〇わだって最近は9月にやるじゃん」


「そうだぞ粟井、細かいこと気にすんなって」

「そうっスよ」

「みなさんの言う通りです。本来怖い話は夏の風物詩ではありますが、いつしても問題ないです」


 あれ? みんなノリノリ? なんかごめん……。

 じゃんけんの末、川辺がトップバッターになった。


 雰囲気を出すために部屋の灯りを消し、「こんなこともあろうか」と、川辺が言いながら懐からろうそくを取り出した。

 四次元ポケットかよ……。

 火が付いたろうそくをみんなで囲む。


「これは友人から聞いた話です」


 喋り方が怪談モードになる川辺。なんか怖くなってきた。

 

「ある日友人が一人で関西を訪れたときの話だ。関西の有名どころを観光し、泊まる旅館を探していた友人は一部屋しか空いていなかったので仕方なく404号室に泊ったらしいんだ。深夜に寝ていると、急に金縛りにあったらしい」

「うぅ」


 伊勢が俺に抱きつく、内海が見たら嬉しさのあまり発狂しそうな光景だ。


「嫌だなぁと、思っていたら、急に襖から髪の長い女の人が入ってきて。何故かその女性から目が離せなくなったらしい。

女の顔が段々近づいて来て、恐怖のあまり気を失って気づいたら朝になっていたんだって、起きてすぐさま旅館を出たらしいんだけど、いまもその旅館は関西のどこかにあるとか」

「……」


 怖すぎて言葉がでない。

 正直川辺がこんな怖い話を持っているとは思わなかった。


 いつの間にか荒川、金田も俺に身体を寄せていた。


「ゆ、ゆうれいなんて非科学的です。存在するはじゅがないです」


 荒川、手が震えてる。

 あと噛んでる。


「作り話だろ?」


 俺が訊く。


「違うって、オタ芸友達から聞いたんだよ」


 どこにでもありそうな話だが、川辺は嘘は言わない。


 時計を見ると消灯の時間を過ぎていた。

 起きているのが先生たちにバレると思った俺たちは慌てて布団に潜り込む。


 その後、伊勢、金田、荒川が怖い話並びにゾッとした話をした。

 どこかで聞いたことがある話もあったが、そこはツッコまないでおいた。


 そして俺の番に。

 みんなの視線が俺に集まる。


 困った。話に夢中になっていたせいで話す内容を考えてなかった。ここは自分が体験した話をするのが流れとしては正しいが……。 これといって霊感があるわけじゃないし。普段外に出ないから怖い体験もない。


 しいていえばオタクである俺が美少女ギャルの渡辺と仲良くなれたことがある意味不思議な話ではあるのだが、これを言えばみんなから妬まれる可能性があるのでやめておこう。


 しばらく考えた末。

 一つ思い出した。


「周一、早くしろよ」

「分かってるよ」


 とっておきの怖い話をしてやろう。

 チビってもしらないからな!


「これは俺が高校生に上がる前に体験した話だ」

「俺がエ〇ゲにハマってるっていうのはみんな知ってるだろう」

「あぁ」


 みんなが頷く。


「中学生でお金がなかった俺は、親父のノートPCを借りてエ〇ゲをしていたんだ。

ある日ネットの知り合いから教えてもらったおすすめのエ〇ゲを購入した。その後に、インストールとエ〇ゲのショートカットをいつもの隠しフォルダの中に作成したんだ」

「それで? どこから怖い話へ進んでいくんだ?」


 川辺が水を差す。

 エ〇ゲの話を急にされてふざけだしたと思ったのだろう。


「最後まで聞けって」


 他の3人は固唾のんで聞いている。


「次の日、学校から家に帰ると、父と母が喧嘩をしていた。何事かと理由を聞いたら、

どうやら父のPCを母が使っていた時に間違えてエ〇ゲのショートカットを開いてしまったらしく、タイトル画面に表示されたエッチな女の子達をみて絶句してしまったらしい」

「……」

「いつもの隠しフォルダに作成したと思ったら、どうやらインストールした時に操作を間違えてデスクトップ上に作成してしまったみたいなんだ」


「……」


「なんとか俺が買ったものだと母に事情を説明して喧嘩は収まったが、

もう少しのところで離婚の危機だったかと思うとゾッとしたわ~」


「……」


「どうだ? 俺の話」


 当時の俺はゾッとした。エ〇ゲ一つで家庭崩壊が起きるのだと。

 事情を説明したときに母に冷たい目をされたのを今も忘れない。


 みんなはエロゲをするときはショートカットを作らないように注意しろよ!


「……」


 もしかして恐怖におののいて声も出ないか、ま、仕方ないだろう。


「なぁ」


 反応がないので上体を起こして、周りを確認する。


「って寝てるし!!」

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