第8話 戦友再び!?
OH 神にすら嫌われた俺……。
「ツイテなさすぎだろ!」
凶が多いとは聞いていたが、お前ら大吉出しすぎだ……確率バグってる。
「凄い! あたし、凶なんて初めて見た!」
「ドンマイ~」
「粟井くん、落ち込むことないよ。これ以上落ちることはないし、むしろ運気は上昇していくってことだから」
「う、うるせー! そんな慰めはいらん!」
それにしても内海が大吉を引いていることが納得できない。お前はこっちサイドの人間だと思っていたのに裏切られた気分だぜ、まったく。
気をとりなおして肝心のおみくじの内容を見てみる。
願望:叶わない
健康:病に陥る
待ち人:来ない
などなど救いようのない言葉の羅列が書かれていた。
いいもん! 今日は渡辺からプレゼントもらったし!
俺はおみくじの紙を折り畳みスッとポケットにしまった。まぁ、これも思い出の一つとして受け取っておくとしよう。
時計を見るともうすぐ四時間が経とうとしていた。
「そろそろ旅館に行くか」
「さんせーい! もうクタクタ、夕飯なにかな?」
「デザートはチョコミント味の生八つ橋がいいなー」
出てたまるか。
ほんとうはゆっくり和の雰囲気を堪能したかったが、修学旅行の一環としてきているためルールは守らないといけない。
俺たちは足早で清水寺を後にした。
◆
旅館は清水寺から徒歩十分のところにあった。
「神楽」という旅館。
中に入ると旅館のマスコットキャラクターの等身大のパネルが出迎える。
とりあえず写真を撮っておく。
大広間にほとんどのクラスメイトが集まっていた。
そこには川辺の姿もある。
「ひろっ!」
と、渡辺がつぶやいた。俺も同じ感想を思った。
川辺が俺らに気づいて近づいてくる。
「よぉ! 遅かったな。一分遅刻だ」
「それぐらい許してくれ」
「それで? 上手くやれたか?」
何の話か分からん。
川辺が耳打ちで呟く、内海が喜ぶからやめたほうがいいと思うが……。
「おい、もしかして進展なかった?」
「なんのことだ?」
「はぁ~、せっかく同じ班にしてやったのになあ。修学旅行実行委員の努力無駄にしないでくれよ……」
「合流して早々酷い言いようだな」
川辺が言っているのは渡辺との関係は深まったか? ということを気にしているのだろう。
深まったかどうかは分からんが、縁結びのお守りは貰った。と、言おうとしたがイジられるのがいやなので言わないでおく。
「まぁ、いいや。後でゆっくり聞かせてくれ、部屋は404号室」
「部屋のメンツは?」
「行ってからのお楽しみだって言ったろ?」
見当が付かない俺は首をかしげる。
ものすごい嫌な予感がする。
さきほどおみくじで凶を引いたからかこれから起こるイベント全てが疑心暗鬼になってしまう自分がいる。
「あたしたちの部屋は?」
渡辺が訊く。
「女性方は203号室。もうすぐ夕飯だから荷物を整えたらすぐ降りて来いよー」
「はーい。周くん、また後でね♪」
「おう!」
◆
渡辺たちと別れた俺と川辺は404号室へと向かった。
最初は階段を上るかと思ったが、さすがは旅館、エレベーターで四階へ。
部屋の前に着くと、中からはしゃいでいる声が聞こえてきた。どうやら盛り上がっているようだ。
「さぁ、みんな待ってるぞ」
一体誰が……。頭で人物の顔と名前を考えながら扉を開ける。
中に入るとそこには、見知った面々。
荒川、金田、伊勢がいた。トランプをして楽しんでいる。
「お、お前ら……」
「おや、やはり粟井くんでしたか、だから言ったでしょう? 僕のデータは嘘は吐かない」
「粟井じゃねーか! 久しぶりだな」
「球技大会の時はお世話になったっス」
球技大会の時に共に汗を流した同士だ。あの時は熱い戦いだった……。
「久しぶりだな。おい!」
なんだろう涙が出そうだ。
一応同じクラスではあるが、三人はオタクであることを隠して日々学園生活を過ごしているため俺から話すことはしない。
関わると三人がクラスメイトから迫害されるからな。向こうは気にしなくていいと言ってはくれたがさすがに傷つく戦友を見たくない。
だけど、ここなら周りの目を気にすることなく話せる。川辺のやつ、気を使ってくれたのか。
「どうだ? 驚いたか?」
「めちゃくちゃ驚いた。これも修学旅行実行委員の力か?」
「まぁな」
川辺が腕を組みながらドヤる。
「粟井くんもババ抜きいかがですか?」
修学旅行の定番だ。
「あぁ、絶対負けないからな!
「はいはい、トランプはまた後でな。もうすぐ夕飯の時間なの忘れたのか? すぐ下に集合~」
「途中でしたが仕方がありませんね。この続きはまた後にしましょう。今度は粟井くんも一緒に」
「そうだな! じゃあ飯! 飯!」
「なんの料理が出てくるんスかね~」
三人が部屋を出て大広間へ向かって行く。
俺は川辺に向かって、
「ありがとな、川辺。お前のおかげで楽しい修学旅行になってるよ」
「いいってことよ。ちなみに今日の飯ステーキらしいぜ」
「最高だな。おい」
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