第7話 おみくじ

 金閣寺に到着した俺たちは時間も時間なので軽く巡ることに


 舎利殿しゃりでん(通称・金閣寺)が目に入った。太陽の光に照らされてキラキラと輝いている。世界文化遺産に登録されているらしく、金閣寺のてっぺんにいる鳥は鳳凰らしい。

 周りには池が広がっており、見ると金閣寺を映し出していてとても綺麗だ。駅で貰ったパンフレットの情報によると、池の名前は鏡湖池きょうこちと言うらしい。


「めっちゃ綺麗なんですけど! やっば!」


 今回も金閣寺をバックに班のみんなで写真を数枚撮った。


「超楽しいね~♪ ほんと、今日はみんなと来れてよかった!」


 楽しそうに観光する渡辺を見ると自分も嬉しくなってくる。


すると、宮本が覇気のない声色で呟いた。


「八つ橋どこ~?」

「みやっちゃんもうお腹すいたの~?」

「歩いたら消費された~」


 消化速度えげつないな。


「粟井~。八つ橋をよこせ~」

「もってないから……っていうかさっき嵐山で食べ歩きしたばっかりだろ?」

「歩きながら食べたから消費されたに決まってるじゃん」


 本当につらそうにしているので仕方なく


「分かったよ。それじゃあ当初の予定を変更して次は清水寺に行くことにしよう。宮本も辛そうにしてるし、パンフレットには清水寺に行く道にたくさんお土産屋さんがあるっぽいから八つ橋の一つや二つあるだろ」

「マジ!? じゃあ頑張ろう~」


 まぁ、もともと嵐山で二時間使っちゃったからな。ルート変更はする予定だった。


「渡辺と内海もそれでいい?」

「あたしは全然おっけーだよ!」

「うん」


 皆の了承を得て、宮本もなんとか調子を取り戻した様子。


 足早に観光を済ませ、清水寺を目指すことに。

バスはもちろん激込み。



 清水寺付近に到着、階段が長く続いている。この先を進むと清水寺に着くみたいだ。

 さすがに京都の一番の観光名所なだけにクラスメイトちらほらいる。


「あれ? 石川じゃない?」


 渡辺が指さした。

 ほんとだ、どうやら階段で転んでしまったようだ。

 痛そうな顔をしながら膝をさすっている。


 パンフレットを見ると、この長く続く階段は一年坂、二年坂、三年坂と呼ばれており、ここで転ぶと早死にすると言われてるらしい。

 俺たちが今いる場所は一年坂。


 どうやら石川の命はあと一年らしい。

 ドンマイ。お前のことは一生忘れねー。


 まぁ、どうせ嘘だろうから気にする必要はないだろう。

 俺は、石川の班を素通りし階段を上る。


 趣のある建物がありタイムスリップしたみたいだ。

 いたるところにお土産屋があり、宮本が目を輝かせている。


「八つ橋! 八つ橋!」


 近くにあったお土産屋へ。


 八つ橋の試食コーナーがあったので一つ食べてみる。


「う、うまい」


 初めて食べたが、宮本が川辺に食って掛かっただけはある。

 このもちもちした触感とあんこの甘さが素晴らしい。


 美味すぎて思わず感想を口に出してしまった。

 これは俺もお土産に買っていこう。


「ありがとうございました~」


 お会計を済ませる。


 だけど、前に宮本が言っていたとおり、色んな味があるのは本当らしい。

 ベーシックなあんこ味の他に、抹茶、梅にラムネ、チョコミントなどがある。


 なんでもありだな! おい!

 さすがにラムネとチョコミントは邪道な気がする。旅行に来てテンションが上がってなんとなく買ったはいいものの帰ってきて口に入れたら後悔する未来が見える。

 木刀に似た何かを感じるな。


「あっ、粟井も八つ橋の素晴らしさに気づいた?」


 宮本がポツリと言った。


「うん、結構美味しいなこれ。だけどさすがにラムネとチョコ……」


 と、宮本に言おうとして、右手に持っているのが目に入った。

 チョコミント味の八つ橋を三箱積み上げている。


「ん? どうしたの?」

「いや、なんでもないっす……チョコミントさいこ~」


 口に出していたらどうなっていただろうか。

 ちょっとゾッとした。


 各々お土産を購入した俺たちは気を取り直して清水寺を目指す。

 京都駅から観光してもうすでに三時間が経過していた。

 残り一時間しかない。


 なんとかはぐれない様にみんなの様子を確認しながら無事到着。

 もちろんここでも写真をパシャリ。


 涼しい風が気持ちいい。木々が揺れ、下には清水寺を目指す人だかりが見える。

 桜の季節や紅葉の季節に来たらさぞ絶景だろう。

 

 「そーだ! おみくじ引こうよ!」

 

 渡辺の提案で、清水寺の名物であるおみくじを引くことに。

 それにしても人が多い。ほとんど都会と変わらないな。


 並ぶこと二十分。とうとう俺の番。

 大きい筒を振る。十二番が出た。


 売り子のおばあさんが十二番の箱から紙を取り出し、それを受け取る。


「じゃあ。せーのでいくよ!」

「おう」

「うん」


 ドキドキの結果発表


「せーの!」


渡辺:大吉

宮本:大吉

内海:大吉

俺:凶


「おろ?」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る