第5話 京都にキター!

 雲一つない晴れ模様。太陽がまぶしく、京都駅周辺は観光客でにぎわっている。

 バスを降り、各々がグループの元へ集まる。


「それじゃあ、俺は実行委員の仕事があるから」


 と、言い残し。川辺と別れる。


「あいつらのこと守ってやってくれ」と、死に際に放つセリフナンバー1を俺の耳元で呟いて去っていった。


 フラグたたせるなよ。

 俺たち三班は、前もって決めたルートで観光をすることになっている。


「旅館は清水寺の近くだから、清水寺は最後だな」

「おっけ~。それじゃあ、ここから一番離れてる嵐山に向かう感じかな?」


 最終的に旅館に集合しなくてはならないので、先にできるだけ遠い観光名所から回るようにする。


「そうだな」


 スマホの地図アプリを頼りに歩みを進めていく。タイムリミットは4時間しかない、自然とみんなの足も早くなる。

 京都駅を少し離れると辺りはお寺や趣のある家や旅館が多くあり、異世界に迷い込んだような不思議な感覚に陥る。


「清水寺が最後か~、お腹持つかな?」


 腹の具合を心配する宮本を無視し、嵐山行きのバスで目的地を目指す。

 すると……。


「なんかさっきから見られてる気がするよ……」


 内海が心配そうにつぶやく。

 もしかして、渡辺と宮本を差し置いて内海にナンパか? と思ったが、どうやら違うらしい。


 辺りを見るとたくさんの修学旅行に来た学生がこちらを見ていた。


 制服で修学旅行に来たところをみると、随分頭のいい学校とお見受けする。

 頭の良さそうな男子生徒は渡辺と宮本をエ〇い目で見ている。

 周りには清楚な女子生徒しかいないから珍しいんだろうな。まぁ、性癖が歪まないことを祈ろう……。


「あのパーカーの子可愛いな~」

「な! ああいう子うちの学校にいないから最高だ~」

「あの褐色ギャルもいいな~。目つきが最高すぎる!」


 渡辺と宮本の人気は相変わらず凄まじい。これはもしかしたら、親衛隊がわが校を飛び越えて一致団結する可能性もありえるかもしれない。とても危険だ。

 渡辺と宮本の可愛さは十分分かるが、それを差し置いても今日の内海はとても女性らしくてかわいいと思う……。


 腕を組む。内海の魅力を今一度冷静になって考えてみる。


 ………

 ……

 …


 BLオタクというレッテルが邪魔していいところが一切見当たらない。

 すまん、内海!


「いや、俺はあの子だな!」

「えっ? あの眼鏡の子?」

「そうそう、めっちゃ可愛くない?」


 よかった。内海の魅力を分かってくれるやつがいたぞ。

 安心しろ!


「粟井くん、どうしたの?」


 内海が小首を傾げる。


「いや、なんでもない。さあ、行くぞ!」


 くだらないことを考えているうちに丁度嵐山行きのバスが止まっていたので駆け足で乗り込む。

 車内はもちろん多くの学生で激込みで、40分程その苦痛を味わうことになった。


 そんなこんなで嵐山に到着。


「もー! 疲れたー!」


 と、駄々をこねる渡辺。

 そうとう脚に来たんだろうな。


「うぅ……」


 内海も人の波に酔ったのか、気分を悪くしている。

 宮本はというと、うんまい棒が消化してしまったのだろう。もうすでに腹を空かせているご様子。


 すまん川辺、3班すでに全滅しました。

 フラグ回収完了。



 気を取り直して、嵐山を観光する三班ご一行。

 自然に触れたからかみんな機嫌を取り戻してくれた。依然として、宮本はテンションが低いが……。

 たくさんの竹林が周りを囲っていて、とても心地が良い。


 渡辺はハイテンションで、パシャリと竹林を写真に納めている。

 まるで林家のパー子のようだ。


「ねーねー! せっかくだしみんなで写真撮ろー!」


 せっかく来たんだ、思い出として残しておきたいしな。


「すみませーん! 写真お願いしてもいいですか?」


 と、渡辺が観光客にお願いする。


「周くんよってよって!」

「お、おう」


 自然と渡辺と距離が近くなる。

 こういう展開は最近なかったので、少しドキッとする。


 パシャ、パシャ


「ありがとうございますー! あ、はい! 大丈夫そうです」


 二、三枚撮ってもらった。


「あとでみんなに送るね!♪」


 満足そうにスマホを確認する。どんな感じに撮れたのか楽しみだ。

 その後、宮本が腹が減った腹が減ったと駄々をこねるので、時間も時間なのでお昼ご飯を食べることになった。


 お昼ご飯といっても、お店は激込みだったので食べ歩きをすることに。


「みたらし団子じゃん! 京都に来たからには食べないとね!」


 と、興奮気味の宮本が目をキラキラさせている。

 みたらしはどこでも食べれるけどな……。


 とはいいつつもみんなとは被らないあんこ味を頼んだ。


「周君の何味?」


 渡辺が訊いてくる。


「あんこ。ちょうどいい甘さで美味しいよ」

「いいな~、あたしのみたらしと交換しよ~」

「おっけー、それじゃあ……」


 ん? 交換? どうやってするんだ?

 串から外すことはできないし。もしかして……。


「はい。あ~ん」


 まぁそうなるよな! 唐突に来たあ~んイベント!

 俺はそれを躊躇うことなく口に入れた。


 みたらしの味が染みてて美味しい。焼きたては初めて食べるが、焦げた部分がまたほろ苦くてなおいい。


「それじゃあ、お返し。はい、あ~ん」

「あ~ん」


 もちろん、俺のあんこ味を渡辺に食べさせてあげる。串に刺さっているので奥に押し込まないように冷静に口に入れる。

 食べさせてもらう側はそうでもなかったが、食べさせる側になった途端少しドキドキしてくるのは何故だろう……。

 決して、い、いやらしい意味じゃないからな。


「うーん! おいふぃ~。あんこも有りだね!」


 ふぅ、とても嬉しそうだ。


 その後は、きなこ味のかき氷や、さらには嵐山駅の近くにあったマッフィーというキャラクターのパンを食べた。

 俺は知らなかったが子供に人気のキャラクターらしい。

 

 その後も俺たちは京都ならではの和風のスイーツを堪能した。

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