第3話 「これで条件が揃っちゃったね……」

昼休み、料理部の部室である特別教室にいた。俺と小春が料理部に入っているからだ。ちなみに今日は部活なしだ。

今日もいつも通り一緒にそこで昼ご飯を食べていた。



……のなら良かったんだが。



「「……」」



超気まずい!!

そりゃそうだろ、今日帰ったら小春と……ポッキーゲームだぞ!?

我ながらなんで許可してしまったのか自分でもよく分からない、ていうか最初にいいって言ったのは小春のほうか……。



「……今日、ポッキー買って帰らないとね」


「……うん」


「「……」」



いや気まずさを紛らわせようとしたんだろうけど、今その話題出すのは逆効果だろ……。

でもここからあからさまに話題逸らすのもな……。


「小春、どう? 帰ったらポッキーゲームするわけだけど」


「……そうだなぁ、まさかこんなこと言われると思ってなかったし、なんか颯太と付き合ってる世界線のパラレルワールドにでも来たみたい」


「ほんとそうだよな。しかも動画も撮ってくれって言われるとは思ってなかったな」


「まあ、確かに動画の方が参考にしやすいだろうしね。雰囲気とか……」


そう言ったところで、小春が顔を赤くした。

俺とポッキーゲームするところでも考えたんだろうか。

……俺も顔が赤くなってきたかもしれない。


「……よし、今は気にしないでおこう」


「……そうだね、今考えたところでどうにもならないし」


俺たちはさっきよりかは幾分マシになった空気の中、黙々とご飯を食べ終えて教室に戻った。

マシになったとはいえ、全然喋らなかった時点でいつも通りではなかった。




そしてついに放課後、俺は小春と一緒に教室を出て学校を出た。相変わらず空気は若干気まずかった。


「ねぇ、颯太」


すると、小春が先に口を開いた。


「ん?」


「ちょっと思いついたことがあるんだけどね」


「ほうほう」


「葵の描いてる主人公って、ポッキーゲームをする時点で結構意識してるじゃん」


「……俺たちもじゃないか?」


「いやまあ、そうなんだけど……。で、漫画の中ではもしかして相手が好きなんじゃないかって思い始めてるでしょ」


「相変わらず急展開だとは思うけど、そうだな」



ポッキーゲームの話といい、ちょっと飛ばし過ぎなんじゃないだろうか。



「じゃあ、私も颯太もそう思い込みながらしたほうがいいんじゃないかって思ったの」


「ああ、なるほどな。俺も小春も、お互いが好きなんじゃないかって思いながらやれば、よりリアルになるんじゃないかってことだな」


「そういうこと」


「……」


「? どうしたの?」


「なんかノリノリじゃないか?」



そう言うと、小春の顔が一気に真っ赤になった。



「え!? いや、そ、そんなことないけど」


「ごめんごめん、ちょっとからかってみただけだ」


「もう……やめてよ……。幼馴染とはいえ、ただでさえ今から……キスすることで意識してるんだから」



そうこうしているうちによく行っているスーパーに付いた。

俺たちはお菓子コーナーに向かい、ポッキーを探した。



「あった」



小春がポッキーを見つけてカゴの中に入れた。

相変わらず耳が赤かった。



「流石にポッキーだけ買うのは、今からそういうことしますよって言ってるみたいなもんだし、もう少しお菓子買って、食材もついでに買っていくか」


「そうだね、そうしようか」


そして他にもお菓子やら食材やらを買って、スーパーを出た。


「ふぅ、これで条件が揃っちゃったね……」


「条件?」


「ポッキーゲームの」


「お前、いきなり小悪魔系女子みたいなこと言い出すなよ……」


「いいじゃん、颯太を好きだと思ってやらないとなんだから、それに颯太に私が好きだと思わせるのもいいと思うし」



幼馴染という深い関係だからこそこういうことができるんだろうが、心臓に悪い……。


(だったらこっちも……)


俺は小春の手を何も言わずに繋いだ。



「!? そうた!?」


「仕返しだ」


「っ……ぐぬぬ」



小春は1本取られたことに結構悔しがっていた。

……別にどれだけ恋人っぽい行動が出来るか選手権をやってるわけじゃないよな?



「なんか悔しい」


「お前、どれだけ恋人っぽい行動が出来るか選手権をやってるわけじゃないからな?」


「それはそうだけど」



でも小春はまだ悔しがっていた。なんでだよ。



「なんか悔しいから、今度はこうしてやる」



そう言うと、小春が腕を組んで密着してきた。



「ちょ、お前いくらなんでもやりすぎだって」



いくら幼馴染とはいえ、女の子の柔らかいところとかが当たって心臓バックバクだぞ……。


まだ住宅地の人通りが少ないところだから良かったものの、同級生にでも見られたら間違いなく誤解しかれない。


その後、なんとか誰にも合うこともなく家に付いた。



「……じゃあ、着替えたらそっち行くね」


「……分かった」



そして、ついにポッキーゲームをする時が来てしまった。

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