第5話

「よし、今日も狩りをしますか!」


いつものルーティンをこなすため、武器を持ってダンジョンに入ろうとする。


「そこの君ィ!」


誰かに呼び止められる。誰だ?声的には幼い女の子だが。

後ろを振り向き、正体を見る。そこには舞と同年代の女の子が立っていた。


「はぁ、何でしょう?」

「アンタ、今ダンジョンに入るのかい?」

「ええ、生活費確保のために」


先ずは軽く挨拶をしながら周囲を見る。女の子の隣には小さい球体の機械が浮いていた。アレは動画撮影用のドローンで、スマホで動画を撮るよりも性能がよく、時に緊急要請をする機能が備わっている。便利だよな。底辺の俺には手が届かないものだ。


「それで、私に何か用で?」

「これからダンジョン攻略をするんだけど、バッファーが居なくてね。アンタ、異能力は?」

「コストが重めのバッファーです」

「なら採用、文句ないよね!視聴者さん!」


〈まぁ、バッファーは荷物持ちだし…〉

〈最弱は後ろで待機がお似合いだから大丈夫〉

〈何かあれば盾にすればいいし〉


何かやべぇコメントが流れてるな。


「因みにダンジョンのランクは?」

「Dランク。肩慣らしでいくの」


Dランクを肩慣らしっていう事は探索者ランクはAか?


(まぁ、何かあればリソース切れと言って帰ればいいか)



Dランクダンジョン1階層、草原エリアに似ているが、Dランクからは3階層くらい過ぎると、背景が変わるんだったな。草原から滝がある洞窟になるとか。


「それじゃ、肩慣らしスタート!」


少女は腰にぶら下げている双剣を鞘から抜き取る。

どうやら彼女のバトルスタイルは二刀流剣士のようだった。


「待て、ならバフをかけさせてくれ」


〈お?〉

〈どんなバフなんだろ?〉


「……採取のミラクル」

「ん?何か武器やら眼やらすごい強化された!」

「さぁ、暴れてくれ。俺は別の方で狩ってるから」


そう言って俺は辺りにいる魔物に攻撃し始める。

俺の実力は現状Dランクの魔物なら互角にやり合えるレベルだ。だが、それ以上になると鍛えるしかないが……。



それから階層を進めて数時間、大量の魔石と階層への進行で気が付けば最終階層へと到達していた。


「よぉし!早速ボス戦!」

(さて、ボスは何になるんだ?)


〈D級ダンジョンだから、Ⅽ級のボスだろうな〉

〈バッファーはここでお役御免かな?〉


「らしいですよ」

「いやぁ、ここまでこれたのはアンタのバフでしょ?最後まで挑もう!」


随分と強引だな?俺はどうも嫌な予感がする。


ボス部屋に入るが、中には先客がいたようだ。

魔法と剣を扱う探索者と舞がボスと交戦していたのだった。


ボスは「狩りを全うする肉食昆虫」。一言で言えばバカでかいカマキリだ。

ランクはⅭランク。そこそこいいドロップは手に入るが、先客がいるようでは邪魔はできない。


……のだが。


「ちょっと!ちゃんと当てなさいよ!私を殺す気!?」

「ええい!黙れ黙れ!気が散るわ!!」


……どうも押されてる様で、仲が悪いな。こりゃあ討伐できないか?


「どうします?加勢しますか?」

「おっ?奇遇!じゃあ行こうか!」


俺はロングアックスを戦斧モードにし、前線に突撃する。

Ⅽランクいえど、多少の足止めはできる。


俺達の突撃が予想外だったのか、ダメージを受けてボスは引き下がる。


「無事か?舞」

「汝は…!?」

「知り合い?」


多少は時間は稼げたが、再接近はしてくるだろう。

このボスは接近攻撃特化で、並みの物理は通らない。その代わり、魔法や致命の一撃を狙えば余裕で倒せる。が、あの様子じゃあ連携もあったもんじゃないな。


「……俺は命令する気は無いが、作戦がある」

「どんな作戦?」

「俺が全員にバフをかけた後、囮に出る。相手の油断を狙って総攻撃を仕掛けろ」

「そ、それでは汝が危ないのでは……」

「探索者は常に危険と隣り合わせだ。F級探索者でも当たり前の事だ。安心しろ、この作戦は成功する」


と言っても、俺が柴垣のPTにいた時に使われた戦法だが、このランクまでならそれが通じる。


「どうこう言ってる暇はない。3人を対象に『致命のミラクル』!」


3人に赤いオーラのような不思議な力が纏われ、配信者の女の子ははしゃいでる。


「この効果は?」

「一定時間の間、対象者の攻撃が全て致命の一撃クリティカルヒットになる。勿論、魔法も含めてな!」


〈え!?〉

〈何そのバフ強くない!?〉

〈普通のバッファーでも確率を2~30%上昇させる程度だぞ!?〉


「でかしたぞ輝!囮は短く終わらせるぞ!」

「へいへい、俺を巻き込むなよ」


ボスへと突撃し、攻撃を往なしながら僅かにダメージを与えていく。

ただこのカマキリ、攻撃速度が速い。俺はギリ見えてるが、常人は何も分からず切り裂かれるのがオチだろう。


ボスの連撃が襲い掛かる。勿論それは俺が全て防御で受け切り、隙を狙わせるため、その連撃中に反撃を加えたりもする。攻撃を受けながらだから滅茶苦茶ダメージを受けるから、あまりやりたくない。こういうのは本来タンクの仕事なのだが……。


「クッソ……いてぇな。だがその程度じゃ倒れねぇ!F級を舐めんじゃねぇよ、Ⅽランク!!」


最後の攻撃を受け切った後、俺は号令をかける。

――――今だ!やれ!!と。


「待たせたのぅ、次は当ててやる」

「折角の囮役は死なせるわけにはいかない」

「こいつを倒して大バズりだ!」


ヘイトが俺に向き、バッファーを囮にしたあくどい作戦。まさかこんなところで役に立つとはな。


3人同時の総攻撃を予想してなかったのか、直撃した。

舞の強弓で身体を射抜かれ、魔法で焼かれ、双剣で切り刻まれる。

敵さんが可哀そうだぜ、全く。


ボスは見事に撃破され、ダンジョンコアも破壊。ダンジョン攻略配信はここで終わり、帰路へとたどり着く。


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人外級の強さを持つ幼女がやって来たんですが… ヒラン @daikaru

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