第4話

武器屋から戻って二日が経った。

特にイベントも無いまま、俺は低級ダンジョンで狩りに勤しんでいる。


「切れ味がやべぇな。どんどん魔物が微塵切りにされていくな……流石D級の武器だ」


回転斬り、薙ぎ払い、振り下ろした全力斬りと次々と魔物を屠る。

さっきはモンスターハウスに遭遇したが、この武器一本で何とかなった。高ランクになるとこれより強くなるとはどんな武器なんだ……?


「これで70体目。いいな、この調子で狩りを続k」

「おい、「ニート」。まだそこで狩りしてんのかよ」


突然後ろから声をかけられる。こいつは「柴垣」。昔俺を仲間に入れたものの役立たずさに追放して、その醜態を家族に暴露された挙句、絶縁をされてしまったのだった。


「何の用だ?俺は狩りに忙しいんだ」

「そう言うなよ。絶縁の件、まだ引き摺ってんのか?悪気が無かったとはいえ、そこまで薄情な家族だったとは誰も思わねぇだろ?運が悪かった、それだけじゃねぇか」

「それで?」

「つれねぇな。たまには俺とダンジョン攻略しねぇか?」

「断る。誰のせいで俺がこんな扱いになってる?バッファーとデバッファーはお荷物、身代わりの盾と言っているお前とは組みたくはない」


それから無視してダンジョンの奥へと進む。

大体8階層ぐらいか?魔物を100体ぐらい屠った後、休憩を入れた。


「これとこれを合わせて……合計120万か。いいね、今回はこの辺にして、帰るか」


8階層の最初のエリアで足を止め、来た道を戻る。



ダンジョンから帰還して数時間、俺は自宅へと帰宅し、いつも通りにニュースを見る。内容は「S級探索者、A級探索者のやり方に激怒!各国支部の探索者ギルドの腐敗っぷりを見る」だった。

そこには舞の姿が映し出されている。ダンジョン配信とは別にテレビでも有名とは、やはり俺と組むべきではないな。


「おいおい、情報誌に載ってたアイドル探索者じゃねぇか。魔法使いの素質はあったけど、ありゃあ味方を巻き込んでるぞ?しかも前衛が階層を進むたびに瀕死状態じゃないか」


まるで前衛の命を捨て石のように使ってるな。それでもネットでは「射程内にいるのが悪い」や「前衛は大人しく巻き込まれても戦え」と叩かれてるほどだ。そのやり方に激怒したのか、舞がアイドル探索者に平手打ちをして怒鳴っている姿があった。

「全員の命を何だと思っておる!!」と。


「まぁ、そいつが使っている魔法は範囲攻撃型の魔法だ。巻き込まれるのも無理はねぇが、前衛がヘイトを稼ぎ過ぎて魔法が撃ちづらくなってるんだろう。よくある話だ。味方にタンクがいれば魔法の被害は激減するが、あのPTはタンクが一人もいないな」


現に俺があの強弓の一撃に巻き込まれかけたしな。


「だが、S級のご指摘を受けたんだ。今後は改善していくんじゃねぇかな……」


そう言ってテレビの電源を落とし、就寝する。



翌日、食料が不足したため、急所買い物をするため、業務用スーパーへと足を運んでいた。


「から揚げ、これは流石に外せないな」


バランスを取るように食材をカートに詰めていく。

買い過ぎないように考え、レジに並んでる時に噂話を聞いた。


「なぁ、昨日のニュース見たか?」

「見たぜ。S級探索者がA級探索者に対して激怒して、危うく暴力沙汰になる話!すげぇ有名になったよな!」


舞とアイドル探索者の話か。平手打ち程度で済んでいたとはわかっていたが、そこまで悪化したのか?


「ネットの方ではS級探索者に対してめっちゃブーイングの嵐!多少のフレンドリーファイアは許すべき!と大量の批判コメントで溢れたって」

「けど前衛は死にかけてるって言ったのに聞き耳持たず!S級探索者は途中でダンジョン攻略をやめて帰ったそうだぜ?」


そりゃそうだ。俺でも帰るよ。むしろ関わりたくないな。


「そのせいでダンジョン攻略は失敗。そのアイドルちゃんのチャンネルの登録者が100ほどいなくなったらしい」

「マジかよ。配信は少し注意しなくちゃな」


ダンジョン攻略の配信……儲かるが、あくまでバズらなければ意味を持たない、唯一の博打行為だ。だが、今ではその博打は当たり前となり、あのような事が出来るという訳だ。


「配信か……ふっ、俺には合わないな」


今更F級探索者の攻略動画なんざ、誰も視たがらんだろ。むしろ可愛い子が頑張る動画や動物を愛でる動画の方が売れるくらいだ。


レジを通し、買い物をし終えた後、自宅で低級ダンジョンでの狩りの準備をする。

今日は200くらい目指してみるか。

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