第2話

不安だ。仕方なく彼女を連れてきたが、あの強さで低級に挑むのはどうかしてる。

普通は最高難易度のダンジョンに仲間と突撃するものだが…何で舞に仲間がいない?


そして「帝」と呼ばれてるなら部下が一人や二人いるはずだ。

単身でいるのは暗殺してくださいと言ってるようなものだ。それに俺と組みたいという理由だ。俺の事を知ってるらしいが、どこで知った?


謎だ。何で俺なんだ?彼女の強さなら他の連中とやっても有名になれるし、国家戦力として数えられるくらいだ。その力を持つ者が何で俺を選んだ?考えれば考えるほど謎が深まるな。


「どうした?狩りをせんのか?」

「するさ。だがやる前にこれを使わせてくれ」


軽く拳を握る。魔力が高まり、能力を放った。


「採取のミラクル」


俺と舞の身体に白い光の粒がかかる。それと同時に身体に浸透していく。

俺の異能力は「奇跡の支配者ミラクル・ルーラー」。時間制限がある代わりに大きなバフ効果を与える異能力だ。


「成程、魔石の採取率を高めるといった感じかのぅ?」

「そんな感じだ。行くぞ」


手斧を取り出し、ダンジョンの内を動き始める。

低級のダンジョンいえど、油断すれば死ぬのは変わりない。だが、今回の目的はあくまで狩りだ。攻略じゃない。

だが行き慣れてるのか、すいすいと現れた魔物を着実に屠っていく。


「ほう?それなりに戦闘はできるようじゃな?」

「モンスターハウスを単身で乗り切るくらいはできる。ぼさっとしてないで戦ってくれ」


舞は肩をゴキゴキと鳴らしながらどこからか武器を取り出す。

身の丈に合わないほど大きな弓。もしかして強弓って奴か?


「では、余の力を見せてやろう」


キリキリと弓の弦を引き絞る。そして持つ矢の大きさは規格外だった。

長さは90㎝と長い代物で、矢尻は鑿のような形をしていた。

小学生並みの身の丈を持つ奴が扱えるものじゃないんだが……。


「……撃ち辛くないのか?」

「何、これほどの矢を放てんのでは帝は務まらん。よく見ておるがいい」


舞は矢を魔物たちの群れに放つ。

案の定、魔物たちの胴体を貫通していき、軽く30体が屠られた。


「60が目標じゃと?足りぬ。せめて600じゃ」

「10倍……こりゃ化け物だな……」


まぁそれでも魔石が沢山拾えてるから良いんだが。


「おっと、こっちにも来たか」


着実に魔物を屠っていると、床が光る。


「む?」

「しまった!トラップか……!」


低級ダンジョンでも罠は存在する。矢が飛んでくる罠だったり、回転刃が飛んでくる罠だったりと様々だ。この感じだと恐らく転移系の罠だろうな。


罠にかかった俺達が目を開けると、そこには鉄の巨人が目の前にいた。


「おいおい……B級のボスモンスターの「アイアンゴーレム」じゃねぇか…!何でこのダンジョンに!?」

「ははは……低級なのに中級の魔物と出くわすとは、汝も幸運じゃのう」

「笑い事じゃねぇ!畜生、ついてねぇな……!!」


これは死んだか……?F級探索者がB級のモンスターに挑んで勝てるわけがない。

転移の罠は対象者を他の階層に転移させる凶悪な罠だ。しかもよりによって最下層のボス部屋かよ!!


だが、ここまで来た以上、倒すしかねぇ。どうせ逃げ道はない。


「舞。あいつは倒せるか?」

「愚問じゃな。あんなのは敵にもならん。が、丁度矢弾が残りわずかでな。接近もできなくもないが……」

「わかった。なら俺にも考えがある」


俺は舞の頭の上に手を置く。


「……致命のミラクル」


舞の身体に赤い光が収束していき、オーラのようなものに変わった。

致命のミラクル。それは俺の異能力の一つで、魔力消費がでかい代わりに対象者の全ての攻撃が致命の一撃クリティカルヒットになる。まさにボス討伐用の力だ。


「ほう、力がみなぎるな。これなら奴を屠るのも容易い。一撃で屠って見せよう」


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