人外級の強さを持つ幼女がやって来たんですが…

ヒラン

低ランクの日常

第1話

「よし、今日はこれくらいでいいな」


十数年前、突然世界中に異世界の迷宮、いや「ダンジョン」が現れ、それと同時に世界に魔力や異能力というファンタジーな概念が生まれ、大人や子供も大小なり魔力を持ち、場合には異能力を持つようになった。


最初は世界中を揺るがした大事件にまで発展したダンジョンの出現だが、年が過ぎるにつれ、今では人気コンテンツと化した。


一番人気なのが、ダンジョン攻略の配信だ。

勿論、参考にはなるし、その動画を観て探索者をやろうとした奴も少なくはない。


そんな中で俺、輝はFランクの低級ダンジョンで狩りをして賃金を稼いでいた。

今のところ、この階級になって嫌になったことは一つもない。初心者探索者の助けとなるマジックアイテムを売ったり、途中でやられた探索者の救出を行っていたりしていた。


「えーと、ゴブリンとコボルトの魔石を合計50個ずつ。これを売って日本円で計算すると……15万円。まぁ家賃は払えるな」


Fランクのダンジョンを出る。魔石を売り飛ばして現金にした後、電車に乗り降りして帰路に着く。


その際、隣で何やらワイワイやっている声が聞こえた。


「いつも見てくれてありがとな!次はBランクのダンジョンを攻略するから見てくれよな!」


動画配信者だ。どうやら録画してるところの会話を聞いてしまったな。

まぁ、ダンジョン攻略動画を配信している探索者は多い。

それでバズって、有名になってるのが今の時代じゃ王道だ。


そもそも、今の生活に不安を持たない俺にとっては関係のない話だがな。

映らないように回り道をしながら帰路を進む。途中でコンビニに立ち寄り、情報誌などを購入し、読みながら歩く。


……ちゃんと前を気にしながらな。


「……「女子高生アイドルの探索者、A級ダンジョンを攻略」か。高校生なのにすごいな」


別に嫉妬とかそう言ってるわけじゃない。最近の子供は可能性に満ちてるな、と褒めているだけだ。能力が底辺の俺が到底たどり着けない場所に辿り着けてるんだからすごい。しかも生まれた頃から魔力も高ければ、異能も強いと来た。


今じゃ引っ張りダコの状態。コレが天才って奴か。


「はぁ……すげぇ時代になったもんだよ。この世は」


そう吐き捨てて自宅に戻る。

俺の家は一軒家だが、ちゃんと2階が存在する。

まぁ部屋には俺しかいないが。


「明日は60個を目標にしてみるか」


少しだけ目標をあげる。そうすればやる気は沸くようなもんだ。

今のご時世、討伐数をあげて行かないと報酬は多く貰えない。


「明日はどんなニュースが流れるかは楽しみだな」


低級でも気楽に人生を楽しみながら俺は夕食を作り、食べ終え、明日に備えて支度をする。そして22時頃に就寝した。


そんな中、30階建てのビルの屋上にて、一人の少女がいた。


「見つけたぞ。余の相方となる者よ」


少女はニヤリと笑い。屋上から飛び降り、夜の闇に消えていった。






翌日。


朝6時半に起床し、歯磨き、洗面各々を終わらせ、あらかじめ作った夕食の残りを朝食にして済ませる。ここまでは俺の朝のルーティンだ。


そう、ここまでは。


荷物を纏め、低級ダンジョンに行こうとしていた時だった。


ピンポーン


インターホンが鳴った。


(おかしいな。新聞代は前の内に払ったはず。子供の悪戯か?)


玄関に向かい、ドアを開ける。

そこには一人の幼女がいた。

紫の長髪で服装は中国の戦国時代風の衣装を着て、身の丈的に小学6年生くらいか?


「おはようお嬢さん。迷子か?」

「な!?余を子供と抜かすか!?この無礼者!」


いや、鏡を見て言えよ。

めちゃ怒ってるけど、彼女から感じる魔力は間違いなくS級探索者だ。

そいつが俺に何の用なんだ?


「こほん!余は「赤帝舞」じゃ!こう見えて16じゃぞ!」

「子供じゃねぇか……」

「何じゃと!初対面の者に対して失礼ではないか!?余は帝じゃぞ!?汝の事は知っておるんじゃぞ!?」

「そいつは光栄だ。で、その帝様が俺に何の用だ?」


舞は「ぐぬぬ」と言いながら目的を話した。


「余の目的はたった一つじゃ。汝の中にある力を最大限に引き出させ、余と共に頂点に立つことじゃ!」


俺の中にある力?あーあれね。あれは使えんよ。というより使える機会がないからな。


「俺じゃなくても他の連中と組めれば結構有名になると思うが、そう考えなかったのか?」

「生憎、余は組む相手を間違えたことはないのでな。汝の力は他の者たちにはない力を持ってるのは知っておる」


へぇ、なら尚更俺と組みたいという情報を出さなきゃいけないな。


「俺は底辺のF級探索者だぞ?そんな奴と一緒に居ても、返って邪魔だろ?」

「それは己の力を過信し、周りをよく見ない愚か者の捉え方じゃ。余をそんな輩と一緒にしないでもらえんか?」


慧眼とでも言うのか?節穴な気がするが……。


「もう一度言うが、余は組む相手を間違った事はない。どうしても信じられないというのであるならば、余を汝が向かうダンジョンへと連れていけ。そこではっきりとさせてやろう」


と言っても低級ダンジョンで適当に狩りをしてるだけだぞ?

こんなに強い奴がF級探索者の狩りに付き合うとかどういう風の吹き回しだよ。

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