第2話 「カイ」

「ケケケ、五百年ぶりだなぁ!!!」

そこには朱色の服を着た5尺と6寸ほどの大きさで尾の生えた人が立っていた。

頭には金の輪がついている。

「さあ、解放しました約束を」

「ああ?俺が人間との約束なんっざ守るかよ」

「ケケケあはははは」

こいつ。怒りが沸々とこみ上げてくる。

拳を作ると気づく

きらりと光る指輪がはめられている。

こんなもの身に着けていなかったはず

「笑った笑った、まず手始めに下の人間を食うてやるか」

「ぽぽぽぽぽぽぽぽぽっぽっぽぽぽぽぽ」

「ぽぽぽぽぽぽぽっぽ」

気づけばそこには二匹、いやそれ以上の大型魚妖怪がいる。

下に映る影も多い。今のうちに簡易結界を張る。

「この俺とともに下の人間、そして都の人間を殴殺し尽すぞ」

「ぽぽっぽっぽぽっぽ」

なにやら交渉を持ちかけているらしい

「調子に乗るなよ。一時的に多少強くなった程度の雑魚が」

「ここは基より、俺のテリトリーだろ」

瞬間空気が変わる。

岩を砕いたときに周囲に拡散された妖力よりももっと濃い妖気。

ビリビリと感じる鳥肌が引くことがない。

下にあった影が引いていく。魚たちや小妖怪も後ずさっている。

前傾姿勢。

「俺の機嫌を損ねた雑魚ども、万死に値する」

地面を蹴った。

軽く8尺以上は跳躍。

腕を即座に広げ閉じる。

地面に着地した時すでに魚の妖怪その頭を両手に持っている。

パンッと頭部を潰したとわかる破裂音が空気を叩く。

「次は誰だ」

「「「「ぽぽぽっぽっぽppppp」」」」

一斉に散り散りになる大小様々な妖怪

「おいおい逃がすと思うか」

髪の毛を何本か抜き、息をかけると小さな猿が現れる

「小妖怪を追い殺せ」

「「「「キキーーーー」」」」

逃げたほうに散らばっていく

「待ちなさい」

静止に対し、一瞬だけ反応する。

しかしすぐに魚たちの逃げたほうへ。

追わなくては。


さっきまで重傷だったのに体が動く。

林の中を駆ける。

猿の妖怪は器用に木々の間を縫っていく。

影を見つけては殴打を繰り返す。

少しでも影から姿を現すとそこに指を伸ばして刺殺。

確実に影の数が減っていく。

しかし数が多い。

光が見える

岩のあった場所に戻ってきたらしい

林から抜ける。

「追い詰めた…?」

林と妖怪たちから距離をとる。

「この崖の下まで逃げられるんだろうが、残念ながら他のやつの縄張りだ」

100を優に超える影は左回転右回転と交差に回り大きな円を構成している。

「ぼぼおぼおぼぼぼおぼぼおぼぼぼぼぼぼぼぼぼおおぼおおおおおお」

巨大な影から超巨大なそれが姿を現す。

絶句

私の反応とは異なり猿の妖怪は少し落胆していた

「そんだけ集まって上半身しか構築できんのか」

振り上げられる腕

猿のほう、妖力の流れが両手に集まってる?

「喜べ、復活記念だ」

拳を重ね印を結ぶつもりらしい

「開」

ガコン

地面が光りだす、、、光輪?

大量の妖気をまき散らしながら、金の輪と赤で装飾された棒が光輪から生えてくる。

「神珍鉄・如意金箍棒にょいきんこぼう

左手でそれを掴みくるくると軽く回しながら右手に持ち替え、地面に突き刺す。

「ぼぼっぼおぼおぼぼぼおぼ」

腕を鞭のようにしならせながら叩きつける

直撃だ

爆発音と粉塵が飛ぶ

「こんなもんかぁ!大魚!」

「ふん!」

そのとき巨体が浮いた

影から無理やり出された魚たちが宙を舞う

さっきのおかえしとばかりに林に叩きつけられる

鳴りやまない地鳴り

「伸びろ」

煙い。

粉塵が舞いすぎて視界が悪い

横一文字の影が直前まで来たことに気づかないほどに

「あぶねっ」

ギリギリで避ける

バキバキボキと枝が折れる音、それよりももっと大きいものが折れる音

音がやむと少しだが視認できるようになる

林が消えた。

否、木々が倒れて視界が開けている。

大魚の影もない

「いけ。全滅だ」

「「「「キキキーーーーー」」」」

残党を子ザルたちが始末する。

散り散りになった影が再び一つになる、しかし先ほどよりも二回りほど小さい。

「「「ぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽーーーー」」」

「生きるための威勢は評価しよう」

手を重ね、何かの印を結ぶ

「これをもって終わりにしよう。恢」

再度光輪が現れ、棒を覆う。

どんどんと大きくなっていく棒。その大きさは優に十尺は超える。

「神珍鉄・大金剛」

「あばよ」

大魚の頭、胴と穴が開いている

向こうの山肌に突き刺さってる

あっけない幕切れ


影が飛んでくる。

私の前に立つと魚の頭三つを放り出される。

「次はお前だ」

「そうですか。…ありがとうございます。」

「はあ?お前そんなに死にたいのか」

「?…はははははっ」

そうか。妖怪にお礼をするのもおかしな話だ。

「助けていただいたお礼ですよ。」

「人間は生きづらそうだなとつくづく思う。」

「しかし、私はまだ死ぬわけにはいきません。」

猿の妖怪はじっとこちらを見ている。

違う少し視線が外れている。

「釈迦」

「やあ悟空」

振り返ると5尺ほどの子供がいた。

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