第22話 王族が何か姉妹だった
「ここであったが百年目ですわ! あの時に味わった恥辱! 許すまじですの!」
アルマナがトーヤを指差し叫んだ。キッ! と目つきを鋭くさせまるで親の仇のように睨んでいる。
「おいおいマジか。あいつお前の姉さんだったのかよ……て、よく考えてみればそうか」
トーヤは自分でいいつつ気がついた。自分を召喚した相手がこの国の姫である以上、同じく姫と呼ばれているシャルロットと血の繋がりがあって当然なのである。
「トーヤ様! お姉様の事を知っているのですか!」
「うん? あ、あぁ、まぁ知っていると言えば知っているのだが」
「シャルロット様! 早くその男からお離れを! その男は初対面の姫に暴力をふるい更に服まで破いて姫様のあられもない姿を衆目に晒した危険人物ですぞ!」
騎士のハウザーが叫んだ。とんでもない話のように思えるが全て事実なので何も言えないトーヤである。
「おいお前! 一体姫様になにしてくれてるんだ!」
キャミーがトーヤに迫り語気を荒らげた。キャミーも流石に王族に暴行を加えるような真似は看過出来ないと思ったのだろう。
「いや待てこれには一応事情があるのだ」
「お聞かせくださいませトーヤ様!」
キャミーにわけを話そうとすると彼女を押しのけシャルロットがトーヤの手を握りしめた。
「私はトーヤ様が何の理由もなくお姉様に手を出しあまつさえ、ふ、服を剥ぎ取るなどするとは思えません! きっと海よりも深く空よりも高い事情があるのでしょう!」
「いや姫様。こういってはなんですがその男はそういう男です」
「だまりなさい! 貴方には聞いてませんから!」
キャミーはこの機会にトーヤの本性を知ってもらおうと考えたようだがシャルロットはキャミーの話になど耳を傾けるつもりがないようである。
「さぁトーヤ様!」
「あ、あぁ実は俺は別の世界からこの姫様に召喚されたんだが、何か手違いがあったとかでお詫びに好きにしてくれといったからな。ボコらせてくれと言ったら快諾してくれたからやっただけなんだよ」
「何がやっただけだ! ようは何も知らない姫様を一方的にボコったということだろう!」
キャミーが反論した。これに関してはまさにその通りでありトーヤとしても笑ってごまかす他言い返せることがないのだが。
「で、ではなぜ衣服を!」
「それは不可抗力と言うか技を決めたら勢い余って破けたんだよ。まさか異世界でも脱衣KOまで実装されてるとは思わなかったんだよなぁ」
「何を言ってるんだ貴様は」
キャミーはもはや呆れてものも言えないといった様子である。
「そうでしたか……でしたら致し方なしですわ!」
「え! 姫様!?」
シャルロットの判断にキャミーは目を見開いて驚いていた。
「というわけでお姉様。トーヤ様はわざとではないのです。ここは寛大な気持ちで水に流しましょう」
「え! シャルロット貴方何を言ってるの? 一体どうしたのですか!」
シャルロットの発言にアルマナは驚きを隠せない様子だった。
「そうですぞ殿下! こんな男を許すなど、は、さては貴様シャルロット殿下を脅して、この卑怯者が!」
「いやいや寧ろ盗賊に捕まっていたのを助けたんだぞ」
詰め寄ってきたハウザーに言い返すトーヤ。アルマナのことは悪いと思わなくもないがシャルロットについては誤解が過ぎる。
「そうですわ。私が盗賊に捕まっているところをトーヤ様が颯爽と救ってくれたのです。私は運命を感じてしまいましたわ!」
「シャルロット騙されてはいけませんわ、って盗賊ってなんですの!?」
「いやそこかよ」
シャルロットの目を覚まさせようと考えたアルマナだったがどうやら盗賊に攫われていたことに気づいてなかったようであり、思わずツッコミを入れるトーヤなのであった――
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