第10話 悦ぶ格ゲーマー
「ヒャッハー! 待ちに待ったコボるタイムだ!」
「ヒヒンッ!?」
奇声を上げながらトーヤがヴァッサシュランゲに向けて飛び込んでいった。
「馬鹿! うかつに飛び込むな!」
キャミーが叫ぶ。するとヴァッサシュランゲの目が光り泉から水柱が発生しトーヤが飲み込まれた。
「チッ! 対空持ちか!」
そのまま後方に吹っ飛ぶトーヤ。そこへ蛇の長い尾が追撃しトーヤを地面に叩きつける。
「ちょ、何してるんだ!」
キャミーが思わず叫ぶ。だがトーヤは叩きつけた直後地面を転がり体勢が完全に崩れダウン状態になるのを阻止した。
「ふぅ。ダウン回避を取っておいてよかったぜ」
トーヤが思わず顎を拭う。しかし、と顔を曇らせた。ダウン回避は文字通りダウンを回避出来る。
これがあればダウン時のダメージも受けず何より起き上がりを攻め立てる起き攻めを回避できる。
「俺としたことか初見の相手に失敗したぜ。コンボの決めがいがあると思って興奮しすぎた」
この世界に来てまだまともに戦闘になる相手と戦ってなかったというのもあるだろう。
トーヤは自分の油断を猛省した。その上で改めて相手を見る。
「シャァアアァアァアアア!」
「気をつけろ! このモンスターは水を魔法で操る!」
ヴァッサシュランゲの威嚇とキャミーの叫びが重なった。すると泉の水が浮かび上がり矢のように何発も発射された。
「飛び道具もあるってか。中々やるじゃねぇか」
水の射撃を避けながらトーヤが感心した。ここに来て初めてまともな対戦が出来ると感じていた。
「だけどなそれならこっちにもあるんだよ。破光拳!」
両手を合わせ前に突き出すと気の塊が飛んでいきヴァッサシュランゲに命中した。
「キシャァアァアアァアア!」
「おいおい一発当てただけで仰け反りってカウンタ-にでもなったか?」
「さっきから何を言ってるのだ貴様は!」
キャミーが文句を言った。トーヤの言っていることが全く理解できないからだろう。
「おらまだ行くぜ! 破光拳!」
「シャァアアァア!」
更に飛び道具で攻めるトーヤだが水が壁になって破光拳を防いでしまった。
「壁系の必殺技とはやるな右、右下、下、左下、左+Pと言ったところか」
「またわけのわからないことを――」
キャミーが呆れ目で呟くがトーヤは構わず更に破光拳を繰り出す。
「バカ! だからそれ効かないって!」
「シャーーーー!」
キャミーの訴えを証明するようにヴァッサシュランゲは水の壁でトーヤの技を防いだ。
「甘い!」
「シャッ!」
だがしかし、水の壁が消えたその瞬間に合わせてトーヤが飛び込んできていた。
「その技は不利フレームが長い。だから終わり際に隙が生まれる!」
そうトーヤは格ゲーを極めた男。故に相手の技がどんな技なのか分析する力に長けている。大体一度見ればどこに隙があるかなど格ゲーの論理で見極めることが可能なのだ。
その上で今のトーヤにはフレーム眼も備わっていた。まさに鬼に金棒の能力である。
だからこそトーヤはあえて飛び道具で水の壁を誘発させた。そして壁が消えた瞬間に攻撃を合わせたのだ。
「!?」
トーヤの飛び蹴りがヴァッサシュランゲに見事ヒットした。そしてここからがトーヤの本番でもあった。
「行くぜ! 小パンチ! 中パンチ! そして大パンチ!」
飛び蹴りがヒットした後、スキルのラッシュスリーを活かして空中状態で小パンチ、中パンチ、大パンチと順番に決める。
「キャンセル――破天降!」
そして通常技をキャンセルして光を纏った突撃で連続攻撃! ヴァッサシュランゲが大きく身悶え縛り付けていた力が緩む。
「キャッ!」
キャミーが蛇の体からスポッと抜け落ち泉の中に落下した。
「まだまだだ! 破光拳!」
破天降を決めた後胴体を蹴って一旦地面に着地。そこから再び飛び道具で優位に立とうとするが――しかしどうやら破光拳が決め手となったのかまんまと喰らったヴァッサシュランゲはそのまま傾倒し水柱が上がった。さっきのような攻撃ではなく倒れた衝撃で上がった水柱である。
「て、あれ? おいおい――これで終わりかよ」
トーヤが残念そうに頭を掻いた。ヴァッサシュランゲはもう動くことはない。
「うぅ、ひどい目に会った」
ボヤきつつキャミーが水の中から這い上がった。
「よぉ。無事だったんだな」
「あ、あぁおかげで――」
そしてトーヤと顔を突き合わせることになったキャミーだがそこで気がついた。自分が今何も着ていないだということに――
「キャッ、キャァアアァアアァアアアア!」
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