第7話 格ゲーマーへの初依頼
「依頼を受けては見たが、その盗賊がどこにいるかはわかっているのか?」
「事前情報で今のアジトがどのへんにありそうなのかはわかっている。その近くまで向かうことになるな」
トーヤはキャミーと今後について話しながら町の門へと向かった。門を出た後は盗賊のアジト近くまで歩いていくことになりそうだ。
「しかし、ウズウズするな。盗賊か……うむ、そうだ。盗賊を相手する前に試しにお前をコボって見てもいいか?」
「というか、さっきもマスターの前で言っていたがそのコボるとは何なのだ? マスターはコボルトのことだと思っていたようだが」
「コボルト? それこそ一体何のことだ?」
トーヤは首をかしげる。するとキャミーがやれやれと言った様子で教えてくれた。
「コボルトというのは犬の顔をしたモンスターのことだ」
「何だそうなのか。だが違うぞ。ただ、それもコボってみたいものだ」
「いや、だからコボるというのは何なのか」
キャミーが目を細める。ふむ、とトーヤが顎を擦り。
「なるほど、こっちでは馴染みがないのだな」
うんうん、と頷くが実はトーヤのいた世界でもそこまで馴染みのある言葉ではない。
「そうだな。簡単に言えばコボるというのは俺の気が済むまで殴ったり蹴ったり投げたり必殺技を決めたりしていいか? という意味だ」
「いいわけ無いだろう! 喧嘩売ってるのか貴様!」
目を剥いて怒鳴るキャミーにトーヤが小首をかしげる。
「何だ駄目なのか?」
「当たり前だ! いったいどこにボコボコにしていいか? と聞かれて許可する奴がいるんだ!」
「しかし、あの女はいいと言っていたぞ」
「女って……一体どんな奴なんだ……とんでもないMなのか?」
キャミーが半眼で呆れたように言う。もっともその相手もコボるの意味がわかってなかったのだが。
「俺はてっきりこの国は合法的にコボってもいいのかと思っていたのだが」
「そんな国があるわけないだろう。お前は本当これからが不安になるぐらい非常識だな。放っておいたら町の人間をボコボコにしていたかもしれないんだろう?」
「はっはっは、安心しろ。考えはしたがやってはいないぞ」
「考えたのか! それが怖いぞ!」
キャミーはこいつやべぇ奴だと心底思ったようである。
「本当にこいつと一緒で大丈夫なんだろうか?」
色々と不安に思いながらも、キャミーはトーヤと盗賊退治に向かうのだった。
◇◆◇
一方ここは王城。姫であるアルマナがドレス姿で歩いているとメイド達から声がかかった。
「姫様今日も変わらずお美しいです!」
「ふふっ、ありがとう」
キャッ、話しかけちゃったと小走りで去るメイド。アルマナは城での人気が高い。その美しさ故に手の届かない高嶺の花とも噂される程なのだが。
「本当綺麗よね~」
「でも知ってる。あの噂?」
「え? 噂?」
ヒソヒソと聞こえる声にアルマナの耳がピクリと反応した。
「何でも姫様、衆目の中、服が破けて半裸に――」
「え! 姫様が半裸に!?」
ピクピクと更に耳が小刻みに蠢く。
「あ、姫様こんにちは」
「はいこんにちは」
すれ違う若い騎士にも笑顔を忘れないアルマナだが。
「あの清純そうな姫様が、実は意外と際どいエッチな黒い下着でさぁ」
「マジで! 俺絶対白だと思ってたのに黒なのかよ」
思わずキッ! とアルマナが睨むと、ヤベッ! と騎士たちがそそくさと去っていった。
そしてアルマナは足早に移動し、適当な部屋を見つけて入りドアを閉め、そして頭を抱えながら叫んだ。
「ど畜生! なんなのですかこれはぁああぁあぁあ!」
ドアの前を通りがかったメイドがビクッと震えた。それぐらいに声が大きく、また感情を抑えきれない姫の姿があった。
「これも全てあいつのせいですわ! 召喚したあいつの!」
爪をぐぎぎと噛むアルマナ。美しいと評判のその顔は悔しさで歪みきっていた。
「よりにもよって私の高貴な肌を男たちの前で、しかも半裸で晒すなんて! とても許されるものではありません!」
「お気持ちお察し致します殿下」
「て、ハウザーいつの間に!?」
一人憤っていたアルマナだったが、部屋に入ってきていたハウザーに驚きを隠せなかった。
「ですがご安心を。手配書は既に回しております。これで奴が捕まるのも時間の問題かと」
「そ、そう。なら良かったわ」
驚きはしたがハウザーの報告に安堵していた。そして悔しそうに爪を噛む。
「あいつ、絶対許さない」
「はい。殿下をあれほどまでに辱めた男を決して許すことは出来ませんな」
「当然よ!」
「さて、どういたしましょうか? 捕まえて火炙りにいたしましょうか? それとも即座にギロチンに? 水攻めを――」
「何を馬鹿なことを言ってるの! そんなことで満足出来るわけないじゃない!」
アルマナが叫び、これは失礼とハウザーが一歩下がり頭を下げた。
「殿下の悔しさを考えればこの程度では手ぬるいのでしょうね。勿論あの男を捕まえた暁には――」
「脱がすのよ!」
「……はい?」
アルマナの気持ちを代弁したかのように語るハウザーだったがその直後、彼女から発せられた言葉に彼は目を丸くさせた。
「えっと、脱がす……ですか?」
「そうよ! 私をあんな目に合わせたんだから、あいつにはもっと酷い目に合わせないと! そうよ! あの男を公衆の面前で素っ裸にひん剥いてしまいなさい! それが命令よ!」
「……えっと、捕まえたり拷問に掛けたりは?」
「私が何でそんな悪趣味な真似しないと行けないのよ! 私を何だと思ってるのよ!」
「し、失礼しました!」
どうやらアルマナは拷問などは一切考えていないようだ。ただただ自分が受けた屈辱以上の辱めを受けさせたいだけであり、それが全裸にひん剥くことなのであった。
「とにかく急ぎなさい! どんな手を使ってでもあいつを民衆の見てる前で裸にして私以上の恥ずかしい目にあわせるのよ!」
「しょ、承知いたしました――」
こうして姫様の希望もあり、王国にてあの男を全裸にひん剥き隊が結成されたのだが。
「まさか、あの男を素っ裸にするのが目的とは……全くそれならそうと言ってくだされば、私ならいつでもこの鎧も全て脱ぎ去るというのに」
そんなことをぶつぶつと口にしながらハウザーは廊下を歩いていた。すると若い騎士が慌てた様子で彼に近づいてくる。
「た、大変です団長!」
「どうした騒々しい?」
「そ、それがシャルロット様が盗賊に捕まったそうで!」
「な、何だとーーーー!」
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