20話「悪魔王ゴウル」だべ

「ぎょえあああいああぁああわおおぉ!!!」

森の魔女の拷問…いや治療が続いた。


「魔女ではない、森の魔術師じゃ」青髪の美少女(8000歳)が無表情に答えた。

いや、無表情のフリをしてるが、ぜったい楽しんでいやがる。


「ぜんぜん楽しんで…ない…ぞ…ぷっ」

魔女の手が震えている。

笑ってんだろーがっ!!

毎日ゲロ苦い薬草やらゲテモノ料理やらをムリやり食わされ、極太の鍼治療やら、山盛りモグサでお灸やら、寄生虫療法やら、治療法が毎回違う。

ドワーフでなければとっくに故障してるところだ。

というかなんでエルフが東洋医学なんだよ!


「倅(せがれ)のファウストが持ってきたこの秘伝書に書いてあったのじゃ」

魔女はボルゲル秘蔵の『なんでも医学』をババーンと持ち出す。

あんの野郎〜魔女にインチキ民間療法本を売り付けやがったな!


「次はどんな治療をしようかのう、感謝しろよ…ぷっ」


あああっ!今笑っただろ!チクショウ!いつか仕返ししてやる。


「さすが魔法司書室長だけあって、なかなか面白い本であるな」


「よく言うよ。この前までボルゲル殺そうとしてたくせに」


「はて?何の話でしょう」ボルゲルが神殿に入ってきやがった。ラーラとシーシ、イーグも一緒だ。

というかラーラはもう元気だな。


ラーラは自慢げに腕組み仁王立ちになり

「あの時は川の向こうの花畑に1522年前に死んだお爺ちゃんが見えたが、もう平気だ」


お前、臨死体験ばっかしてるな。

しかし呆れたタフさだ。


後ろに居るイーグお爺いちゃんはかなり重症だ。復帰にはしばらくかかるらしい。まぁ見た目は変わらず、平気で働いているのだが…いいのかねぇ。さすが昭和一桁は鍛え方が違う。


シャルたちは村の祭りが近いらしく、友人たちとキャッキャと楽しそうにダンスをしている。

奥にいるのはシャルの親かな?

ということはイーグの息子か!

「あの親」「あの祖母」の子供にしては…意外と優しげな人だね。

きっとシャルは愛されて育ったんだな。


しかしシャルさんの相手をしてるお姉さんも美人だなぁ。

シャルより少し年下、216歳くらいかな?


魔女がニヤりと笑う

「あれはイーグの嫁で5800歳じゃ」

シャルの婆ちゃんかよ!


「コヤツめ、ストイックなフリをしておるが1000歳も年下の嫁をゲットするとは、なかなかやりおるわいのう!」


そういう所だけ母親ゆずりか。

「聞こえておるぞ!」


すいません。


エルフの年齢はメチャクチャで理解できない。

「そういや、あのラ・ソラというエルフとも兄弟なのだべか?」何気なく聞いてしまったが、

魔女の手が止まった。


「ソラはエルフの娘では無い」

魔女は少し厳しい表情になった。


え??じゃあ誰の娘なのよ?


「アヤツの父親は魔王様じゃ」


なんですと〜?!


「まだ長女のソラが生まれる少し前。7950年ほど前であったか。

その頃のワシはまだ穢れも知らぬ純情、純真、純潔、清純、無色透明の清らかな美少女じゃった」


ホントかよ…


「聞こえておるぞ!」


すいません。


「そこにいきなり魔王めが現れて、あんな所やこんな所をくすぐりまくり、このワシをくすぐり地獄に陥れて危うく笑い死にさせられるところであった」


…は?ひょっとして魔王って変態なの?


「さらには口では言えぬような、あんな事やこんな事や、それはもう思い出しただけでも身体が火照るようなアレコレナニコレをしまくったのじゃ!」

魔女は顔を赤く上気させながら身を悶えている。


…なんか…喜んでないっすか?

というか魔王も酷い趣味だな。


「貴様っ!大魔王様の悪口を言うか!」


なんでやねん。


「いや、と!に!か!く!じゃ!

あれ以来、我には神通力が備わり、髪色まで青く変わり、我が子孫たちには驚異的な魔力が備わる様になった。

間違い無く魔王様がお与え下された御力によるものじゃ」


強引に話を戻したな。

すると、シャルやヤールおじ様も魔王の子孫

なのかな?


「あれらはエルフの子じゃ。魔王様の御子はソラだけじゃ」


なるほど彼女にだけ“ラ”の尊称が付くのはそのためか。


「その話をソラに教えたら、自分は魔物の子なのかと大泣きされたわ」


教えたのかよ!

ソラが聖職者の道に進んだのもそのせいかもしれないな。


しかし言われてみればソラは、髪の色や雰囲気がイーグやおじ様とはかなり異質だった。

むしろ魔族に近い。

ひょっとして…ゴウルがソラを攫ったのは。


「そう、おそらくソラを魔族にするためじゃ」青髪の美女は口を固く結んだ。


もし彼女が悪魔になってしまったら、魔法で無限に魂を喰う怪物が誕生してしまう事になる。

とても俺たちの手に負える相手ではない。


魔女は厳しく美しい眼で俺を見据えて言った。

「だがな。そなたに戦ってもらうしかないのじゃ。伝説の勇者ベロンよ」


そうか…それしか無いのかもな。

勝算は全く無い。だが今ゴウルと戦えるのは俺たちしか居ないんだ。


「ヨシ!その心意気じゃ!後は特訓あるのみ!よろしく頼むぞイーグ」


「はい、母上」

「え?」


と…いうワケでイーグ教官の鬼指導が始まった。

指導というより立花藤兵衛も真っ青の特訓地獄である。


「まず身を立てて中心を知覚しろ」

「分身は目くらましでは無い」「分身でも実体と同じ攻め気を出せ」「高速で動き回るだけではダメだ」「相手の虚実を引き出せ」「もっと相手の眼を捉えろ」「足を動かしたいなら身体を使え、身体を動かす時は足を使え」「足の引き付けを早く」「上に引き伸ばせ、膝から下に落ちろ」「左に動くなら右に動け」…………………


何か武芸の極意を言われている気はするのだが、何が何を意味しているのかがトンチンカンプンだ。

というかドワーフにエルフの動きは無理がある。

脳がヤバい。身体もガタガタで毎日ボロ雑巾の様になる。


さすがに見かねたかボルゲルが指摘してきた

「イーグ、いきなり極意から入るより、もっと単純な所作を抜き出して学ばせた上で技術をステップアップさせるべきでしょう」


ひい〜ありがたい。そうしてほしい。


シャルが不思議そうに聞く

「単純な所作とは何だ?軍師ボルゲル?」


「術の動作を分解し、一動作ごとに分けるのです。

例えば今のステップは、右の踵を左に半歩捻り出し、次に左足を後から右踵の脇に半歩差し出し、最後に腰から上を回転させて爪先でターンする。

腰から回るには上半身は真っ直ぐ立てて引き上げるのがポイントですね」


ボルゲルは、いとも簡単にステップをやってのける。ずるいぞ。


「この様に所作の流れを一動作づつ分解して教えれば、

あとはチェックポイントを並べるだけで所作の再現が可能なのです。

これなら相手の知能が足りなくても理解は進むものです」


なるほど、分りやすいが…なんか引っかかる言い方だな。


シャルも鼻歌まじりに、軽々とステップを踏む

「なんだ、秋の村祭りの踊りと同じ動きだぞ。簡単じゃないか。子どもよ」


そりゃアンタは簡単でしょうけどね!


イーグは少し考えたが、何かに気づいたらしく

「シャル、これに秋祭りの踊りを教えてやれ」

イーグはそう言い残すと、そっけなく去って行った。

いや師匠、俺が知りたいのはダンスじゃなくて…


「ハイ!おじいちゃん!よし特訓だぞ、子どもよ!」シャルはメチャクチャ嬉しそうだ。


「いやなんでやねん」


「がんばって下さい。勇者さん」

ボルゲルまで去ってしまった。


いや意味わかんねぇよ。


というワケで、シャルとのダンス特訓が始まった。

「右足を左前に差し込んで、右の腕は上だぞ、顔の位置を動かさずに正面に向けたまま、ほら、背中が曲がっているぞ。背中で腰を引き上げ、指の先まで意識するのだぞ」


いやダンスってムチャクチャ難しい!

しかし言ってる内容は、なんとなくイーグと同じことを言っている…気がする。


「いやシャルさん。もうちょっと分かりやすく簡単に…」


「こうバッと構えて、サッと来たらスッと入ってパッと行ってカキーンなのだぞ!」


簡単の意味が違う!

というか、なんでミスター長嶋なんだよ!


そもそもエルフとドワーフでは身長が違い過ぎて歩幅が合わない。


「ならば大きくなると良いではないか?なのだぞ!子どもよ」


あ、そうか巨大化すれば良いか。

「ぴぴるまぴぴるま超力招来!」


「おお!すごいぞ子どもよ、オッパイ大きいな!」シャルは遠慮なく俺の胸を揉みまくる。

いや、アンタの方が大きいやろ!

…いやしかし君が揉むんなら俺も揉んでもイ・イ・の・か・なっ!と!


「キャハハハ!くすぐったいぞ、子どもよ!」

うおおお!スゲぇええ!ヤバい。なんか目覚めそう。

そういや魔女もくすぐりには弱いとか言ってやがったな。

…これはひょっとしてっ!!


シャルをメチャクチャにくすぐりまくる。

イャヒャハハハハハ!とシャルさんは地面を転げ回った。

やった!ついにエルフに勝った!


おやおやシャルさん、そんなに足を広げていると…もっと広げちゃおうかな〜

「あっ!そこはヒャハハハハヒハハ!」

シャルは赤面しながら大笑いしている。


うわっナニこれ可愛いなあ、オジさんスピードアップしちゃうよ〜

それそれそれそれ!うっヒッヒッヒッ

俺は全身あちこちをくすぐりまくる。

そう『全身くまなく』だっ!

シャルはギャハハハハハハハハハハハハ!と笑い転げていた。


遠くの木陰からジッと見ていた魔女とイーグとボルゲルが長いため息をついた。


その日から巨大化してシャルと楽しい特訓を続けたのは言うまでもない。


変身解除すると疲労はするが、謎の気合パワーで再び変身して特訓する。

フラフラになるけどまた変身だ!

全然疲れてないぞ!変身だ!

とにかく気合で変身だ!


そして日に日に変身時間が伸びてきたぞ!不思議だ!

よし!今日も特訓だ!!特訓だ!!特訓だ!!


あ、なんか最近ダンスもできるようになってきた。不思議だな。


北方周辺国を探っていたゴモンさんたちが戻って来た。

森の広場にエルフの各王族が集められ作戦会議が開かれた。とは言っても全員女王ラ・デの御子たちだ。


「北部諸侯国が陥落しただじゃと!」

魔女ラ・デが言葉を荒げた。

エルフたちがどよめく。

「こんな短期間でか?」


ゴモンさんの報告は恐るべきものであった。

「どの城も前線から城内まで、ほぼ抵抗する事も無く陥落した様ですね。国内は悪魔だらけで、周辺には難民が溢れていました」


「難民は?」

「約5万人。どんどん増えております。


悪魔王国の動静を探っていたファウストも事務的に報告する。

「法皇庁も周辺の国々に難民を収容させています。

傭兵隊やゴブリンたちまで使って周囲を固めさせていますが間に合いません」


少し疑問がある。

「侵攻部隊トップの悪魔将軍はもう三人も倒してるのだに。まだ強力な魔将が居るんだべか?」


ボルゲルは少し首を傾げている。

「城には近衛の深沙大将サージェが居ますが、あいつが城から出るとは、ちょっと考えられませんね…」


ゴモンさんは報告を続ける。

「高空から偵察していた鳥人たちが一瞬で撃ち落とされました。

生き延びた偵察の話では、相手は一人の女性だったそうです。緑の髪の」


一瞬、場が凍り付いた。


「ラ・ソラか!」

また厄介な相手だ。しかも戦術も能力も今までの悪魔とは全く違う。


魔女は目線を落とし、イーグ師匠は目をつぶった。

彼らからすれば親子姉弟で戦う事になる。


「ん〜」と、ボルゲルが顔に手を当てる。

「今回の相手はどこから出現するか私にも計算できません。

北方が陥落した今、相手はあらゆる方向からエルフの森に攻める事が可能になりました」


魔女が鋭い眼で地図を指差す。

「ヤールに命じて恐竜どもに森の北側を守護させる」

なるほどモフモフ恐竜なら大き過ぎて霊波光線が効かないかもしれない。


「北方の国境全てでは範囲が広過ぎますね」

ボルゲルが背もたれにのし掛かりながら指摘する。

「どれほど防御を固めても、相手がどこに現れるか予測できなくては必ず後手後手となります。

こうなっては現状の数倍の兵力でもまだ足りない。

『後に備えを設くる者は上聖にあらず』ですね」


「どういう意味だべ?」


「相手の動きを見てから動いていては戦力が分散してしまう。

つまり後手に回って不利になるという事です。

戦は常に2手3手先に手を考えて打たないと作戦とは言えません」


「策は無ぇだべか?」


ボルゲルは顔に手を当てたまま言う

「ん〜ひとつだけあります。

 弱めたいななら強くさせよ。

 衰退させたいなら肥大化させよ。

敵の勢力が北方に急拡大しているのであれば、本拠地が手薄になっている今が最大のチャンスとも言えますかね」


「奇襲攻撃か」イーグが眼をつぶったままつぶやく。


「なるほど敵の本拠地を直接狙うだべか、

孫子の兵法だな!」


「老子の教えです」


「…………」


イーグが眼を開いた。

「悪魔王ゴウルとの直接対決だ。明日の夜までに準備しろ。決行は死霊の活動が鈍る昼間とする。解散!」

イーグの号令で一斉にエルフや獣人たちが持ち場に戻った。


悪魔城に突撃か。

そうだな、それしか無い。

休める時に休もう。


我々は少数で直接不意討ちを仕掛ける事にした。

ファウストが先行して飛び、

俺はボルゲルに乗り、

シャルとイーグ師匠は神馬人のシーシとラーラに乗る。

今回はシーシとラーラにもエルフの降魔の剣と盾を背中に差している。


ファウストはと言えば、白い神官の礼装の上にツクモンロボを鎧の様に装着し、

さらに背中に金の翼を背負って空を飛び、さらに黄金盾と剣を持っている。まるで絵に描いた様な聖戦士だ。

というか一人だけカッコ良くてズルいぞ。


金の鎧を装着したファウストを見てエルフの娘たちがキャーキャーと騒いでいた。

シャルとラ・デまで一緒になってな!


同じ勇者なのになぜか格の違いを見せ付けられた気がする。

まぁ俺は美少女だけどな。


ドワーフ山脈を超えると砂漠が広がっていた。

この砂漠の中に悪魔たちの城があると聞く。


「なあボルゲル、なんで悪魔は砂漠の中に住んでるんだべ?」


「古代都市国家の跡地ですよ。もともとそこで信仰されていたカルトの悪霊たちです」


「古代都市だったのか」


「ええ、人間たちは巨人に滅ぼされ砂漠になってしまいましたけどね、それによって新たに巨人に創られたのが悪魔王ゴウルです」


え?巨人が都市を滅ぼして、悪魔を造った??


「巨人は神でもあり悪魔の創造主でもあります」


そういえばシーシたちも同じ事を言ってたな。

都市を滅ぼすという意味なら理解できるが、

悪魔を創造したってどういう意味だ?

悪魔を実物にしたという意味か?

いったい巨人とは何なんだ?


先行するファウストが合図をする。

「もうすぐ悪魔城の都市に入る!低空へ!走って!」

ファウストの指揮で超低空飛行にに移る。

ボルゲルや神馬人は地上を走った。

前方に何か砂嵐のドームの様なモノが見える。バビルの塔かな?


だんだん砂嵐の様なモノに近づいて来た。

デカいな!都市が丸ごと砂嵐に覆われているみたいだ。


イーグとシャルが飛び出した

「先行する!」と言って前方に駆け出した。


「来ましたよ!頭を下げて!」ボルゲルがさらに低く走る。

左右前方から黒い陽炎の様なものが迫って来る。

いや陽炎ではない!あれ全部が湖で見た幽鬼だ。

砂嵐のドームに見えたモノは全て幽鬼のバリアだったのか!いったい何匹居るんだ?!


「陰風防壁ですね。取り込まれると魂を喰われて死にます」

ウゲっ!最初からトンデモねぇ防御だ。


(※陰風(いんぷう):不気味な風、亡霊などの出現のさいに発生する風)


イーグとシャルは左右に別れ、疾走する馬上からエルフの降魔の剣を振るって幽鬼の大群を次々と消滅させる。


ファウストが誘導する

「あの隙間を駆け抜けてください」


「こっちだ!我に続け!」

イーグが先行して俺たちを導く。


俺たちも突入しようとした所でシャルとシーシは幽鬼の群れへと斬り込んでいく。

方向が違うぞ。


ボルゲルが静かに答える

「囮は彼女に任せて、我々は城に突入します」


シャルが囮だと!

「シャルを置いてく気か!」


振り向けばシャルとシーシたちが、黒煙の様に渦巻く幽鬼の群の中を走り回り、剣を振るっているのが見えた。


俺はとっさに腰の瓢箪を投げた

「シャル!これを使え!」

親父からもらった酒が溢れる魔法の瓢箪。俺たちドワーフの宝だ。


シャルは瓢箪を受け取るとこちらを向いて笑った。

シャルが瓢箪を振り回すとドワーフ火酒が溢れ出る。


「赤熱!」俺は斧をブン投げると火酒が燃え上がった。

その酒をシャルが操作すれば炎の竜が暴れ回る。

水のエレメンタラーであるシャルなら自在に扱えるはずだ。


赤い炎の竜は踊る様に次々と幽鬼を消滅させて行った。

エルフたちのダンスに似ている。

やがて赤い炎は薄暗い大気に飲まれて行き、シャルたちは黒い陽炎の中に消えて行った。

頼んだぞ親父!長老!ドワーフの仲間たち。

シャルを守ってくれよな!


俺は振り返るのをやめた。

「進め!ボルゲル!」

俺たちは幽鬼の防壁を突破した。


先行するファウストが叫ぶ。

「城壁が見えます!」

前方に赤茶色に燻んだ壁に囲まれた古代都市が見える。

中央に巨大な石造りのピラミッドがそびえていた。

「あれが悪魔城!」


一人先行するイーグが鎧(あぶみ)の上に立ち乗りになって、振り向きもせず叫んだ。

「我が後ろに着け!城門は無視しろ!」


イーグは真っ直ぐ壁に向かって走って行く。

「城壁を粉砕し直接突入する!続け!」


イーグが金色の降魔の剣を天空に振り上げれば、たちまち空に黒雲が現れる。稲妻が走り、空から白い竜巻が大蛇の様にウネリながら降りて来た。


「対流圏冷気召喚!」

巨大ゴーレムを破壊したあの大技だ。


白い竜巻は我々の前方の地上を舐める様に進み、城壁から奥の市街地にかけて真っ直ぐ凍らせて行く、

さらにイーグが悪魔城に向けて金の剣を振り下ろすと、天空から無数の砲弾の様に、巨大な雹が高速で撃ち込まれた。

たちまち城壁や市街地は巨大な雹により粉砕され、堀割りは瓦礫と雹で埋め立てられる。

一本の真っ直ぐな氷の棒道が通った。


氷で埋められた堀と城壁を飛び越え、市街地に突入する。

「敵の反撃はありませんね」

ボルゲルが様子を見る

「脇腹から直接突入されたため伏兵を仕込む余裕も無かった様ですね」


うむ、孫子が言う『後に備えを設くる者は上聖にあらず』ってやつだな。


「それは六韜の教えです」

あ、そう。


突然、道の中央を塞ぐように巨大な青い魔人が一人立ちはだかっている。


青い巨体に、炎の様に逆立った白い髪。黒いツノ、首には髑髏のネックレスをしている。

腹にも白い少女の顔があり、白い顔には真っ黒な目に赤い瞳がこちらを見回していた。


「深沙大将サージェ、悪魔王の近衛であり、この砂漠を守護する人喰いの魔将です」


あれが吸血鬼のボスキャラか!


「変身です!」ボルゲルが叫んだ。


「おう!」

俺は腰の鳶口を引き抜いた。

「ぴぴるまぴぴるま蒸着招来!!」

金色のツクモンロボが現れて光の粒子になって飛び散り、俺たちを光の粒子で包んだ。

マイクラ棒から光の輪が発生し俺とボルゲルを包む。

俺の全身は引き伸ばされてナイスバディになり、両手足にツクモンの金の鎧が蒸着される。

ついでにボルゲルにも金色の鎧が蒸着された。

「ライガーゾイドか!」

「虎ですが…」


「行くぞライガー!ムラサメソードだ!」


「ハイハイ」ボルゲルの両脇から、銀の刃の付いた翼が広がる。

ホントに有るじゃねーか。


俺は翼の上に立ち上がり、金の斧を振りかぶる。

今度の斧はツクモンロボのボディでできている。これで斬られた夜叉や吸血鬼は再生できないはずだ。


「ダブルトマホウク!ブーメラン!」

高速回転する斧がサージェに飛ぶ。

深沙大将サージェは矛を振って打ち落とそうとするが、金のダブルトマホウクは矛ごと切り割り、両腕をはね飛ばした。


すれ違いざまにボルゲルの翼がサージェの両脚を斬り落とした。

俺たちは振り返ると、サージェもまたこちらを振り返った。


その瞬間、背後からファウストがサージェの首を切り落とした。

アイツまたおいしい所を持って行きやがる。

どっちが勇者だか分からないわな。


サージェの青い巨体が倒れ、首に巻いていた髑髏のネックレスがバラバラに転がった。


やったか…

あれ?


サージェの腹部の白い顔が起き上がり、首がグルリとこちらを向き、口から光線を吐く。

「超音波メスか!」

とっさに斧を構え「影移し」で反射する。

跳ね返された超音波メスはサージェの青い巨体ごと白い顔も切り裂いた。


だが白い顔はすぐ復元し、サージェの青い腹から白い裸の少女が分離して立ち上がった。

黒い長髪に白いツノ、黒い眼球に赤い瞳。

白い裸体からは数本の手足が生え、全身に黒い模様が描かれている。

白い顔がニヤリと笑うと

全身にある無数の眼球や牙の生えた口が開いた。


「ヤクシニー(夜叉)!」


さらに転がっていた髑髏から半透明の手足が生え、九体の骸骨がユラユラと立ち上がり八方から一斉に光線を発射される。

ギョエエエ!光線の嵐かよ!


「オラあ!」イーグを乗せたラーラが剣を抜いて走り込んで来た。

ラーラは馬人から人間体に変わり走りながら骸骨を斬り倒し。その背後からイーグが飛び出し、夜叉の首を刎ねた。

降魔の剣で斬られれば夜叉とはいえ回復できないはずだ。


だが夜叉は自分の首の髪を掴み持って振り向く。

白い首がニヤリと笑う。

首の切り口からさらに数本の顔が現れ、

胴体からも小さな顔が現れ、こちらを向き、さらに背後から数本の手足が生える。


(なんちゅう化け物だ!)


夜叉は全身の十数個の笑う口から一斉に光線を吐く。

九体の骸骨たちもまた一斉に口から光線を浴びせる。

イーグは素早く回避するが、さすがに相手が多すぎる。


「イーグ!使いなさい!」

ファウストが金の盾を投げ渡した。


「急ぎましょう」

ファウストは現場をイーグに任せて、さっさと先に行ってしまう。

ボルゲルとラーラもそれに続いた。


イーグは4体に分身して金の盾を身構える。

いつもなら5、6人になれるのに…まだ傷が完治してないのか。


思わず叫んだ。

「負けんな!師匠!」


俺の声にイーグは少し微笑んだ。

イーグが笑うのを初めて見た。


俺たちは都市の中心目指して走り、巨大ピラミッドのど真ん中に出た。


ファウストが叫ぶ

「正面!真正面です!あれが悪魔城の中心線です!」


「よっしゃ!」

俺は走るボルゲルの上で斧と鳶口を構える。

「波導ガン!」

巨大な光の竜巻が悪魔城をサクッと貫通する。

暗いトンネルの向こうはポッカリと砂漠の地平線が見える。

やっぱ宇宙の果てまで貫通してるのかなコレ?そう考えると恐ろしい兵器だ。


貫通したトンネルを進むと霊廟の様な広間がある。中はかなり広く暗く、古(いにしえ)の王たちの像と古代紋様で埋め尽くされていた。


「悪魔の紋様に似ているだな」

「古代の悪魔礼拝の神殿ですよ」

ボルゲルが解説した。

なるほど、ここがゴウルの本拠地か。


その時、横に居たラーラが青い光に撃たれ突然倒れた。

これは…霊波光線?!


俺はとっさに斧を正眼「影移し」に構えた、光線はこれで反射できる…たぶんな。


奥に白く輝く人影が見える。

やはり…

そこには悪魔化されてしまったラ・ソラがいた。


緑の美しいショートヘアからは赤いツノが生え、露出度の高い白いドレスを着ている。

右手には杖を持ち、全身は金の装飾や宝飾で着飾っていた。

だが全身や顔には悪魔の紋章が浮かび、

深い神界の宇宙を写していた瞳の色は真っ赤に光っていた。

魔物!

以前の貞淑な聖女の姿からほど遠く、そして痛々しくもあった。


ボルゲルがラーラに向かって咆吼一喝するとラーラは飛び起きた。

「川の向こうの花畑に…」

とりあえずラーラの方は臨死体験から戻ったようだ。


ソラはニヤリと笑うと右手の杖を振り下ろす。

突然、全面の空間が歪んで跳ね回った。

身体が浮き上がり、足元の地面は跳ね上がり、俺たちは空中に弾き飛ばされた。

地面がめくれ石畳は吹き飛んでゲンコツ大の石が飛び回った。

これじゃあ上か下かも分からない。


「これは空間振動波、魔王の杖です!」ボルゲルが叫んだ。

あの杖はハンマーか!

ゴウルの野郎、ドワーフの神器を勝手に改造しやがったな。


俺はなんとか宙返りして着地したがその瞬間、霊波光線の青白い光を浴びてしまった。

「しまった!」

意識が遠のき目の前が真っ暗になり、上空に光が見えてきた…あ、花畑だ…

ドスン!!と体当たりで弾き飛ばされ俺は転げ廻された。


「うぎゃああああ痛ててて…あ?意識が戻っただ」

というか全身がクソ痛い。


「しっかりしなさい!勇者ベロン!」


ボルゲルか!

とっさに体当たりして意識を戻してくれたらしい。

危ねぇ〜あやうくお花畑に行く所だった。

「つかツクモン鎧で体当たりするんじゃねぇ!死ぬかと思ったべ!」

とりあえず八つ当たりしながら斧を正眼に構える。


ソラが再び杖を振ると、また空間の歪みが津波の様に押し寄せて地面や内壁を激しくバウンドさせる。

重力の方向が上かも下かも分からない。とても体勢を維持できない。そこへ霊波光線が飛んで来る。

「ちょっ!」

俺たちは左右に転がり回って避ける。これでは構えてるヒマが無い。


ファウストがヒラリと地面を蹴りながら空中から指示する

「空間湾曲です!同じ武器をあなたも使えるでしょう」


あ!そうか

「ディバイディング!」

前方に空間湾曲の壁を造ってソラの空間振動波を相殺する。

空間の跳ね回りはピタリと止んだ。


悪魔ソラは霊波光線を発射し続けるが空間湾曲がバリアになって霊波光線を屈曲させる。

よし、このまま押し返せば…


ソラは杖を頭上に振り上げ、左手を正面に差し出して構えた。


「ん?何をする気だ?」


ソラは光の壁を造り始めた。それはだんだん分厚く巨大になり、霊廟全体を包んで行く。

目の前は一面全て光る壁になって押し寄せて来る。


うゲゲっ!こんなのどうやって防御するねん!

斧で反射してどうこうできるレベルの大きさではない。


ソラはコツコツと静かに歩き出す。

光がジワジワと押し寄せ、空間湾曲バリアから浸透し始めて来た。

「ち、ちょっとまてっ!」


空間湾曲バリアを浸透し始めた光が、だんだんこちらに漏れ出して来た。

この光に触ればお花畑に直行だ!

今度はこちらがジリジリと押されて来る。


ソラがもう目の前まで迫って来た。

手を伸ばせば届きそうな距離だ。

ソラは赤い瞳を光らせ、微笑みながら杖を振り上げた。

ええっ!ヤバい!こちらの空間湾曲バリアを杖で相殺する気だ!

どうすりゃいい!!


ソラが杖を振り下ろすと空間湾曲バリアは黒い稲妻が亀裂の様に走り回り、バチン!と弾けて消え去った。

俺たちの周りはゆっくり光の“ぬりかべ”に飲み込まれて行く。


あ…死ぬ…

と、思ったその時、ファウストの両腕が背後からソラを抱きしめていた。

ソラは驚きの表情とともに、赤く輝いていた瞳がもとの透明な世界の色に変わる。


その瞬間、ファウストの黄金の剣がソラの胸を刺し貫いた。

剣は背後に居たファウスト自身の身体も貫通し、背中から切っ先が突き抜けて血が滲み出ている。


あっという間だった。

あいつ自分ごとソラを刺し貫いたのか!


ファウストが黄金の剣を引き抜くと二人の血が吹き出した。

ソラの白いドレスとファウストの白い法衣が真っ赤に染まる。

魔王の杖はソラの手から落ちてカランと軽い音を立てる。


ソラは虚空を見つめ涙を流しながらゆっくりと瞳を閉じた。

二人は抱き合ったまま地面に膝を着いた。


ファウスト、お前、こんな形で…

一言の言葉も交わす事無く二人は去って行った。

俺たちはファウストとソラの最期を見送る様に立ちつくした。


突然、ソラの身体から真っ黒な幽霊の様なものが激しく噴き上がっていく。


ボルゲルが叫んだ。

「来ますよ!本体です」


巨大なツノと無数の長い翼。

薄黒い魔物の影に二つの赤い光がまばゆく光っている。


「悪魔王ゴウル!」


真っ黒の巨大な影から二つの赤い眼が光る。ギャァアアアアアア!と悲鳴の様なおぞましい咆吼を発した。


俺はとっさに斧と鳶口を構えた。

「波導ガン!」「波導ガン!」「波導ガン!」光の竜巻が次々と奔しり、悪魔城の壁はボロボロに突き抜かれて行く。

だが悪魔王ゴウルは平然としている。


「全力で連射してるのに効かねぇだか!

宇宙空間をも破壊する魔法なんだぞ?!」


「無駄です!」

ボルゲルが叫んだ。

「あそこに見えるゴウルとは時空間の歪みの影です。本体は別時空に同時に存在し、一方的にこちら側に干渉し続ける存在なのです」


何そのインチキ設定。


「ソラの肉体からは離れて弱体化はしましたが、今倒さないと、いずれまた強力な魔法使いに受肉して復活してしまいます!」


そんな事言っても悪魔王ゴウルには熱も光も衝撃波も空間破壊も通用しないじゃねぇか!

どうすりゃいい!

ちくしょう!なんちゅう化け物だ。


ゴウルの赤い目が光り、腕をこちらに振り出した。

巨大な腕の影が遠近法を無視してこちらに向かって伸びて来る。


「真空斬り…」

必殺技を詠唱する間も無く、ドスン!と体内に強い衝撃を感じた時には、俺たちは吹っ飛ばされて壁に叩き付けられた。


壁に叩き付けられた拍子にマイクラ棒がカランカランと転がり落ちる。

(しまった!)

空間制御による変身が解除されてしまい、

俺はちんちくりんのドワーフ美少女に戻ってしまった。

変身解除とともに光る鎧も消え、頭の上にはツクモンが居た。


悪魔王ゴウルの影は再び腕を伸ばして俺に掴みかかって来た。

ダメだ、避けきれない!


その時悪魔王ゴウルに光が浴びせられ、動きが止まった。見上げればそこにはまるで天使のような姿に変わったソラがいた。

全身から光を発して宙に浮かんでいる。

幻想的な光景だった。

悪魔王ゴウルは霊波光線のオーロラに捕まって動けない。


(いやまて、ソラはさっき…)


見回せば、地上にソラは居た。

血まみれのファウストとの前に、赤いドレスのラ・ソラが静かに両手を組み、祈る様に横たわっている。

ソラが二人居る??

ならばあの天使は…

そうかソラは自分も霊波光線を浴び、魂が分離したのか。


よし今だっ!

俺は咄嗟に斧を構えようとしたが…あれ?

いつの間にか手元から斧が消えていた。


慌てて見回すと金色の斧が空中に浮かび、ファウストの方へ飛んで行くのが見えた。

血まみれのファウストは立ち上がり、マイクラ棒を使って斧を引き寄せたのだ。


「ファウスト生きてたのか!…いや返せコラ!」


ファウストはこちらに微笑みながら言った。

「勇者ベロンよ。なぜ大魔王様がこの世から消えてしまったのか教えてさしあげますよ」


ファウストは両手の斧と鳶口を悪魔王ゴウルに差し向けた。

二本の杖の間で激しく電光が光り、黒い稲妻が走る。


波導ガン?いや違う。

身体の中を振動が通過していくのを感じる。だがこれはただの振動ではない。

この空間自体が鳴動している感じだ。

いったい何が起きているんだ?


ソラの杖がファウストの足元から浮き上がり、クルクルと光の筋を描きながら回り出す。

まるで光る球体の様だ。


「見たまえ、これが大魔王様の杖の本当の力です」

斧と鳶口を近づけると、さらに激しく電光と黒い稲妻がきらめいた。


「大魔法!ブラックホール!」


空間が激しく振動して俺たちの身体の中を別次元の空間が通過する。

激しい光が飛び散り、同時に周囲から黒い稲妻が発生した。

空間が歪み、破れ、重なり、破けた空間から黒い稲妻が奔る。

やがて黒い稲妻は杖の先端に全て吸い込まれて行き、次の瞬間、光とともに黒い球体が出現してファウストたちを飲み込んでいった。


ボルゲルが叫んだ。

「マズい!力場崩壊です!すぐにこの場を離れるのです!」


なんじゃそりゃ?


「マイクロ・ブラックホールですよ!地獄の穴が開いたのです。呑まれると永遠に闇の奥に堕ち続ける事になりますよ!」


ボルゲルは俺を咥えると外に向かって駆け出した。

俺はあわてて頭上のツクモンを押さえる。

ラーラも馬人体に変身して走り出した。


黒い球体からさらに黒い稲妻が奔り、真っ黒な空間がズンズン広がっていくと、

悪魔城は空間鳴動とともに崩れ始めた。


ボルゲルに咥えられながら後ろを振り返えれば閃光と黒い稲妻の中で、闇に飲み込まれていたはずのファウストとソラの姿がある。

ソラは元の姿に戻っていた。

二人は光る法衣を身につけて、寄り添いながら穏やかな表情でこちらを見ていた。

不思議だな…二人は幸せそうに見える。

ソラの光る法衣が花嫁衣装に見えた。

そして二人は闇の中に消えて行った。


俺たちは崩れる古代都市を走り抜け、城壁の残骸を飛び越えて、砂漠の中に飛び込んだ。

もうもうと砂煙が舞った。


ゲホっ

全身砂まみれになる。

俺たちは間一髪、砂漠に飛び出して助かった様だ。


イーグもシャルもシーシも無事だったか、よかった。


ゴウルの消失と共に悪魔たちは消え去ってしまった。

あいつらもまたゴウルの影だったのだ。


振り返ると、魔王城は崩れながら闇に飲み込まれていった。

時々激しい閃光が見える。

闇の球体は、音も無く全てを飲み込みながらゆっくり消えはじめ

そして突然、空中の一点に闇が収束し、全てが荒野になった。


何も無い…

砂漠の地平線と空だけが広がっている。

むき出しの平らな地面の上に、斧と鳶口とハンマーがきちんと並んで置かれていた。


ボルゲルは調査する様に魔王の杖の周りをゆっくり歩いている。

「ブラックホールを使った時空破断です。悪魔王ゴウルは永遠にこの世から消え去りました」


俺は斧と鳶口を拾った。

「ファウストは?」


ボルゲルは目をつぶり首を振った。

「彼らもまた因果地平の二次元データとして永遠の闇に堕ち続けるのです」


「永遠の闇…」

抱き合いながら闇に包まれて行った二人の姿が浮かんだ。

ファウストは地獄で永遠の愛を誓ったのだろうか、それとも…


カッチリと晴れた雲ひとつ無い青空の真ん中に砂漠の地平線がどこまでも広がっている。


俺にはあの二人が別な世界に旅立って行った様に見えた。

あの彼方。あの空の向こうに彼らの行った世界があるのかもしれない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る