第15話 堂々と正門からお邪魔します
城のすぐ手前まで来た。
今のところ、何の動きもない。
解けかけていた「気配魔法イントク」をそれぞれかけ直した。
さて、どう攻めようか。
ヘラの匂いがする以上、城ごと消し飛ばすことはできない。
となると侵入――は難しそうだった。
近づいてわかったのだが、城を全方位覆うように細かな血の糸で覆われている。
吸血鬼には、「ブラッド・クオリティ」という、血を使った固有技がある。
魔法のように各々特性があり、攻防撃技のみならず様々な使い方がある。
魔法使いは寿命が限られるため、私のような例外を除いて1つの魔法を極めることでその生涯を終える。
しかし、彼らは死なない限り力を蓄えるため、多種多様な技を身に着ける。
集団で戦うことが多い魔法使いに比べ、単独での戦闘能力が高いのだ。
更に夜になれば、力も血の特性も数倍に跳ね上がるため、昼間に叩くのが定石とされていた。
現在、太陽は真上から若干西に寄っている。
力が弱まっている今なら――と妙案を思いつく。
3人に説明すると
「「「えーー!」」」
と声をそろえて驚いた。
あの、声大きすぎるからね?作戦開始前にコソコソしているのがバレたら、成立しないんだから気を付けようね?
と小さな声で注意し、3人に優しくデコピンをした。
3人そろえて口を押えている。
まぁ、かわいいから良しとするか。
念のためあたりを見渡す。
異常はないようだ。
さて、では作戦通り行こう。
城の正門前に4人で正対した。
そして、先ほどかけ直した「気配魔法イントク」を解除する。
『たのーもーーーーー!!』
大きな声が周囲一帯に響き渡る。
そう作戦は単純明快。
正面突破だ。
微小魔力放出「え?」
を更に出力を控えて放った。
城の正門は見事に吹き飛んだ。
今は真昼間。
彼らは力が弱まっているだろうし、先日襲撃してきた太陽を克服している吸血鬼のような希少個体は滅多にいないと踏んでいる。
だって、侵入すれば、敵襲とみなされるだろうし、正面から話し合いに来た、と言っても通じなさそうだから。
であれば、だ。
圧倒的な力を見せつけることで、その行動に抑止をかけ、話し合いに持っていく。
ぱっと出の案にしては中々に良いと自賛した。
すると、どうでしょう。
中から赤黒い血を纏った吸血鬼がざっと100人ほどが、文字通りの鬼の形相で向かってきた。
え、なんで太陽の下であんな元気なんですか。
作戦はあっけなく失敗となった。
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