第14話 謎の吸血鬼の逃走方向の先には

城へ帰ってきた。


結果的には、3人にも天気を操った魔法のことは、ばれていた。


まぁ、大魔法を直近で使えば、だれでも気が付くか。


事情は素直に話して納得してもらった。


 「そうだ、そんなことより、昨日のヘラの件おしえて!」


ウルが紫色の髪を揺らせながら前のめりで質問をする。


 「まだ可能性なんだけど―」


ヘラの生きている可能性と方向の考察を話した。


トガとルツは「なるほど」と頷き、ウルは泣きそうになっている。


エリもそわそわと城の外を見ている。


さて、どういう編成で行こうか。


領内にはどんな敵がいるかわからない。


ある程度の戦力は確保したい。


そうして導き出した編成は―。


「ウル、エリ、トガ、一緒に来れるかい?」


「「「はい!」」」


単純な戦闘力でいえば一番のウル。

匂いに気が付けるエリ。

昨日の敵を目視しているトガ。

ルツとセラには城の守りを任せよう。


これで行こう。


5人に作戦を伝える。


今回は不服を申し立てる者もいなかった。


 「よし、ご飯を食べたら出よう」


 『はい!』


そうして、セラとトガが料理に向かい、エリが机を拭いている。

狩りの出番がないウルは退屈そうにゴロゴロしている。

悪いことをしたかな?


しばらくしていい匂いが漂ってきた。

朝から肉は重いかな、と思ったが、セラはその想像を超えてきた。


シシ肉は薄く切って熱を入れ、モモーヤシの上にドンッと乗っている。

その上には何かつぶつぶの白っぽい液体がかかっている。


2つの食材のみ。


匂いはおいしそうだけど、どんな味が。


シシ肉とモモーヤシを同時に口に運んだら、あらびっくり。


かかっている何かが、2つの食材の味を引き立たせている。


 「時間があまりないと思って、速度重視で創ってみましたが、大丈夫ですか?」

 

セラに向け全員がグッジョブポーズを送る。

セラも嬉しそうだ。


 「あれ、このお肉いつもと違う」

 

エリは天然なのに鋭いなー。

 

 「そうそう、今日取ってきたんだ。珍しい個体だったよ、大きいし魔力を帯びていたし」


 「そんな個体が?!見たことも聞いたこともないですね」


ウルはそう答える。

自分が戦いたかった、みたいな顔をしている。

だから悪かったって。


なんでイノシシが魔力を持っているのかはよくわからないが、まぁいいか。


そうこうしている間に、食事を終えた。


 「さて、行こうか」


 「「「はい!」」」


 転移魔法テレポスイス


人と吸血鬼の境界。


昨日襲撃を受けた場所まで転移をした。


言ったことがある場所しか転移できないため、ここからは徒歩移動だ。


 気配魔法イントク


 「よし、準備完了」


 「「「ありがとうございます」」」


吸血鬼領に足を踏み入れる。


木々が枯れ果てた血生臭い大地。


吸血鬼は五感が鋭いため、あまり速度を出して音を立てては気が付かれるかもしれないため、かなり速度を落として走り出す。


 「ほんの少し、ヘラの匂い」


エリが昨日の吸血鬼の残りがに気が付いたようだ。


くんくん。


何もわからない。


トガとウルも周囲の匂いを嗅いでいるが、匂いは嗅ぎ分けれてはいないようだ。


エリは特別感度が高いから、微かな残り香に気が付いたんだろう。


 「こっちです」


とエリは指をさした。

頼もしい限りだ。


エリが指さした方角は王都よりさらに北側。

昨日の吸血鬼の逃走方向。

エリの嗅覚を頼りに突き進む。


しばらく走り続けた。


 「2時間ほど走ったか?3人とも大丈夫?」


 「「「はい!」」」


 「王都も少し離れたし、若干速度を上げようと思うが、ついてこれそう?」


 「「「もちろんです!!」」」


 「エリ、匂いはどうだ?」


 「少し、濃くなっています」


 「了解だ、近づいたと思ったら言ってくれ、そこからはゆっくり慎重に行こう」


 「任せてください」


そうして、もうしばらく走り続けた。


すると、少し先に大きな建築物が見える。

一見して、城…?


石造りのその大きな建物が、荒野の真ん中にたたずんでいる。


 「ウィスト様、あそこだと思う」


そう言って、エリが城を指さした。


 「ありがとう」


速度を落とす。


普通、城があればその周囲には町があると思うのだが、何もない。


城だけが、荒野にたたずんでいる。


外周には誰もいない。


それもそうか、まだ日が出ているから吸血鬼は動けない。

で、あるならば。


城に近づくことにした。

みんな静かにね。

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