第3話 で、どうするわけ?

「すごぉい!」


なんとか学校生活については風吏くんのお陰で終えることが出来た。


「確かにまとめることは出来たけど、まだ足りないんじゃない?」


「え?」


「正直自分たちは学校が全て、っていうわけじゃないじゃん。他のこともあの2人も踏まえて考えよう。」


「ウン。」


想像以上に風吏くんが活動的で驚いてる。彼(?)の印象がほんとに変わったと思う。いや、変わった。


「風吏くんってさ、なんでこんなの協力してくれたの?」


「え?」


「こういうの、やらなそうっていうか。」


「自分、ずっと1人だった。色々あってね。勝手に人を近づけなくなったっていうか。高校ではそれを変えようって思って。けどやっぱり怖くて。これがきっかけになればと思ってて。」


「そうなんだ。」


 人にはそれぞれ過去がある。それは当たり前だけど。私にだって過去は存在するわけだし。風吏くんの過去はきっと誰しもが耐えられた過去では無いのかもしれない。


「じゃあ、また明日。」


 カフェを出て解散。大した時間滞在していないはずなのに、長い時間いたのかもしれないと錯覚できるくらいに濃い時間だった。少しづつ私自身の中に積み重なってる感覚ははっきり感じる。


「ただいま~。」


「おかえり。遅かったわね。」


「あ、ちょっと寄り道してた。」


「ご飯まだだから好きなことしてていいわよ。」


「はーい。」


 うちには父親がいるにはいるけどあまり家にはいない人。別に複雑な話じゃなくて、ただただ仕事でいない。日本各地に飛び回る仕事をしているんだけど、正直細かいことは知らない。まぁ知ったところで何も出来ないし。


 パソコンを立ち上げて、SNSアプリを開く。赤いマルポチが付くハートマークを押して通知を確認する。ネッ友からのメッセージが来ていた。


”ねぇねぇ、ちょっと時間ある?通話したい。”


”良いけど、少しだけしか時間ないや。”


”うん。ありがとう。”


 通話を飛ばして、久しぶりに聴くネッ友の声が小さくて心配する。


「どうしたの?」


『急にごめんね。』


 どういう経緯だったかなんて全く覚えていないけどいつの間にか出来た友達で今では腹を割って何でも話せる相手でもある。だからここまで萎れている姿なんて初めてだし。


「ううん。」


『あのね、私、もう、ダメ。』


「え?」


『うーちゃんには言ってないよね。私、ずっといじめ受けてたの。』


「そ、うだったの?」


『うん。だからね、もう今日で全て終わらせちゃおうと思う。』


「それ、どういうこと?」


『ごめんね。』


「待って。少しだけ待って。」


『何で?』


「あのさ、これ聞いちゃいけないと思って聞いてこなかったんだけど。どの辺りに住んでる?」


『え、えっと、。』


 聞いたことがある住所。いや、同じ中学校?


「もしかしてなんだけど、」


 中学校名を言えば絶句しているのか、返事が来ない。


「私、そこ出身なんだ。明日、会えない?」


『もう、無理なの。だから、ごめんね。』


「明日まで待って。そうしたらもう、良いから。」


 私が引き留めて良いような人じゃないから。だから、せめて会ってからが良かった。それが私自身の自己満足なのかもしれないけど。それでもそれがあの子の何かになれるのなら。そうじゃなかったら私に通話なんてしようって言わない。


『分かった。』


「じゃあ、明日の朝、中学校の正門前で。」


『うん。』


 もっと前から、どこに住んでいるのか聞いておけば良かった。そうすればどこかで彼女を助けられたのかもしれないし、ここまで深刻な事態にならなかったと思う。


「ご飯よー!」


 通話を終えた直後お母さんの声が自室に入って来て、リビングに戻る。


「どうしたの?顔酷いわよ。」


「あー何でもない。大丈夫。」


 夜ご飯はいつもより少なくて、味なんて全然感じるわけがなくて。お母さんにはとても申し訳ないけど、明日起きるもっと重大なことが私の心に残り続けてそれが私を潰そうとしてるみたいに重く肩に乗っている。


 風吏くんのことも、あの子のことも、全て解決したい。お母さんへのことも全部クリアしたい。なんて思っていた自分は、悪い意味で純粋過ぎたのかもしれない。

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