第2話 仲間探し

「ということで、お願い!」


 翌朝、学校に着いてお目当ての人の前で手を合わせる。


「はぁ。また面倒くさそうなの。」


「ダメ?」


 目の前にいる女の子の友達―――ボーイッシュ過ぎて高確率で男の子に間違えられがち―――である橘礼華にお願いをする。私よりずっと身長は高いし、頭いいし、人望もある。私は何一つ敵わない相手であって一番仲良い相手でもある。唯一の欠点があるとすれば、めちゃくちゃマイペースなことくらい。


「しょうがないな。」


「ありがとう!」


「お前ら、今度は何してんの?」


 小学校から腐れ縁でかずっと一緒にいるのが私が緊張して話さなくていい唯一の男子である小野和也くんが私たちの所に。てか彼なかなかのルックスしてるのに性格がイマイチだからモテないんだよね。残念な奴。


「なんか、海がお母さんに反抗するの手伝ってる。」


「それくらい自力でやれよ。」


「違うの!お母さんたちの世代と私たちの世代では高校生活も全然違うって教えたいの!」


「なるほどね。面白そうじゃん。俺も混ぜてよ。あ、こいつもな。」


 小野くんが後ろから連れてきた子は、中性的な顔立ちで女の子にしては低くて男の子にしては高い声の持ち主で、うちの学校は制服がどれからでも選べるっていうやつで、ワイシャツに男女兼用のセーターでスラックスを履いているからより分からない。確か、名前が、齋藤風吏っていうのまで把握してる。名前まで中性的。


「え?」


「面白そうなプロジェクトなの。参加してみね?」


「い、良いけど。」


「4人も居ればかなり出来るんじゃない?あ、あたし今日部活あるから放課後は無理。」


「俺も部活だわ。」


「自分は、空いてるけど。」


「じゃあ、風吏、、、手伝ってくれる?」


「良いよ。」


 チャイムが鳴って、自分の席について担任の話を聞き流す。ていうか風吏っていう人、かなり気になるんだけど。


「「さよーなら!」」


 ほとんど上の空で1日をやり過ごし、風吏と一緒にカフェに。


「とりあえず、自分たちが常にやっていることの中から絶対やらなきゃいけないことをリストアップしよう。」


「分かった。」


 私にとって絶対やらなければならないこと、か。スラスラと書き始める風吏のを覗くと、小さな可愛らしい字が羅列されていた。


「ねぇ、風吏って男の子なの?女の子なの?」


「どっちでも無いよ。身体的性別は女だけど。」


「え、男の子かと思った。」


「ふふ、男の子ってことにしといて。」


 目が合ったから、と思って聞いてみたら予想外の返事でびっくりした。笑うとちょっと可愛いかも。


「よし、そっちどう?」


「私もこんな感じかな。」


「じゃあ次は、今と母親世代の教科数を出してみよう。」


「私たちって何があるっけ?」


「今は、」


 国語は現代文、古典 、言語文化、現代の国語。社会は地理、歴史、世界史、日本史 公民、現代社会、倫理、政治・経済、公共。数学は数学Ⅰ、数学Ⅱ、数学Ⅲ、数学A、数学B、数学活用、数学C。理科は物理、化学、生物、地学、理科課題研究 英語はコミュニケーション英語、英語表現、英語会話。 芸術が音楽、美術、書道。その他に家庭 、情報 、保健体育 、特別活動もあるらしい。


「今でこれくらいかな。親っていくつくらいか分かる?年代で大丈夫。」


「40代後半だった気がする。」


「それなら、大体30年前だね。」


 しかし、調べても特にこれといった資料が無かった。


「多分、編成編成でもう資料が無いのかもしれない。少なからず、情報っていう授業は自分たちの代から始まったからプラス1でカウントして良いんじゃない?」


「なるほどぉ。」


「今は、パソコンを満足に動かせるようにならないといけない。けど自分たちは残念ながらそれの狭間で、けど出来ているってことで大人は接してくる。」


「そうなんだ。」


「これも反論に使えるんじゃないかな。むやみやたらにネットを使ってるわけじゃないって証明できるかもしれない。」


「確かに。SNSやってないと普通に学校生活送るのも大変だもんね。」


「うん。」


 すっかり氷が解けてしまったココアを飲み干し、さっき書いた文字を読み直す。


「とりあえず今日はこんな感じで良いんじゃない?あと2人の力も使ってもっと説得力を増そう。」


「ほんとにありがとう!」


 今日こうやって話すまではよくわかんない人だなって思ってたけどめっちゃいい人じゃん!分かんないのは、彼(?)の性別だよね。どっちでも無いって、どういうことなんだろ。え、私が知らないだけで新しい性別とかあるのかな?


「え、なにこれ。」


 ただただ気になっただけで調べてみたら、彼(?)と同じ人はかなりいるみたいである記事がヒットした。


”Xジェンダー”


 どちらの性別にも属している、性別が無い、時と場合によって性別が変わる、と感じる人たちのことらしい。どうも最近話題になっているLGBTの一環みたいで、当事者なんて周りにいないと思っていた私が恥ずかしくなった。こんなにも身近にいるもんなんだ。


「まだまだ、知りたい事だらけだなぁ。」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る