第7話初めての練習(交流)

競技場の入り口までは岩谷先輩が先頭でその後ろを僕たち1年生がついていき最後尾を沢井先輩がついてきた。


「着いた。こっち。」


入り口で僕たちが固まっていると最後尾にいた沢井先輩が僕たちに声をかけて歩き始めた。

沢井先輩の進行方向の先には監督と先生が何かを話していた。


「監督、寮生到着しました。」

「うん。分かったよ。荷物をおく場所に1年生を連れていってあげてね。」

「はい。」


監督は沢井先輩の頭を撫でながら話しかけていた。


「こっち。」


沢井先輩は僕たちを見ると声をかけて移動し始めた。


「ここ。」


沢井先輩は荷物が置いてある場所まで僕たちを連れて移動した。荷物が置いてある場所には複数の先輩がいて近寄り難い雰囲気があったが沢井先輩は気にすることなく近づいて荷物を置いた。


「置いていいよ。」


みんなでお互いにどうぞと譲合いをしていると1人の先輩がこちらに気が付き、沢井先輩に話しかけてきた。


「壮真、それは寮生か?」

「ん。」

「おお、こんにちは。部長の大森です。よろしく。男子はそこに荷物を置いたらいいよ。女子はちょっと待ってな。」


大森部長はそう言いながらキョロキョロと誰かを探すように競技場を見渡すと


「お~い!山田!」


手を振りながら叫んだ。

しばらくすると離れた場所から女の人が1人のこちらに向けて歩いてきた。


「大森何?」

「寮生の女子頼むわ!」

「ああ、うん。分かった。女子はついておいで。」

「「「はい。」」」


女子は返事をするととことことついていった。僕たちも仕方がないので沢井先輩が荷物を置いたら場所の横に荷物を置いてその場に直立しながら待機していた。


「そこの2人、そんなに緊張しないで大丈夫だよ。それよりも何か聞きたいことはない?何でもいいよ。時間もあるし。」


大森部長は声を掛けてきた。


「えっと、それじゃあ沢井先輩は速い人なんですよね?」

「速いよ。ああ見えて5000mの持ちタイムは部内3位だし。レ-ス展開次第では1位になることもあるよ。」

「「え!」」


大森部長はにこやかな顔で答えてくれた。しかし、とても信じられない。あの人が速いというのは聞いたことがあったが、そこまでだとは思わなかった。何せ、再び監督の元に行って頭を撫でてもらっていたし、撫でてもらい終えても監督の横に立っていてとても速そうには見えない。どちらかというと甘えん坊に見える。


「そんなに意外だった?まあ、そうだろうね。あいつは普段はポケ-としているし、女子のことを怖がっているからね。とてもじゃないけど速そうには見えないよね。まあ、練習が始まったり試合が始まれば雰囲気がガラッと変わるんだけれど。」

「なるほど…。」


大森部長は少し困ったような顔をしながら話していた。一方で横に立っていた佐藤くんは何か納得した声で答えていた。

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