第6話入寮(佐藤勇矢)
「こんにちは。佐藤勇矢です。よろしくお願いします。」
「ん。」
現在、僕は入寮する寮の入り口にいた沢井壮真先輩に挨拶をしていた。沢井先輩は僕の憧れの人だ。出身が同じ兵庫県であることもあり、何度か同じ試合で走ったことがあった。しかし、毎回おいていかれてしまった。それどころか何度か周回遅れにされたこともあった。そもそも沢井先輩は中学生の大会では常に3位いないにいたし、社会人や大学生、高校生が出ている大会では圧倒されることなく多少の接触を気にすることなく前に前に出ていっていた。僕も真似をしたいと思い努力を続けた結果、福原高等学校の陸上競技部にスポーツ推薦で入ることができた。そんな僕は
あまり、反応がなくどうしたらいいのかと悩んでいる。このまま放置して中に入るのはいけない気がするが、これ以上会話ができる気がしていない。そんな時、寮の扉が開いて岩本先輩が出てきた。
「あ、壮真!何してるの!って佐藤くん久しぶり。」
「岩本先輩、お久しぶりです。これからよろしくお願いします。」
「うん、よろしくね。」
「ん?」
「壮真、どうかした?」
「知り合い?」
「あ、ああ、中学の後輩だよ。」
「おお。」
「ついでに言うなら、壮真を目標にしていたよ。」
「ん?」
「とりあえず、壮真はほっておいて中に入ろうか!」
「はい。」
岩本先輩は沢井先輩を放置して中に入っていった。
「先輩、よかったんですか?」
「うん?何が?」
「沢井先輩を放置して。」
「ああ、大丈夫だよ。それよりも早く荷物を部屋に運び込んだ方がいいよ。15時30分頃にここを出て練習に行くからね。あ、部屋はここね。」
「分かりました。」
岩本先輩の後をついていっているうちに部屋についたようだ。そして、現在の時刻が13時30分を過ぎたところだから後2時間ほどで出るそうだ。なので1時間半ほどで荷物を部屋に運び込む必要があるようだ。というわけで急いで階段を降り、荷物を取りに出たところで固まっている沢井先輩に遭遇した。だが、急ぐので無視して荷物を取りにいこうとしたところで、
「手伝おうか?」
と声をかけられた。僕はどう反応していいのか分からずに固まってしまった。
「壮真!監督から寮に差し入れがあるらしい。ちょっと取りに行ってこい!」
「はい。」
小走りで来た男の人が沢井先輩に声をかけた。声をかけられた先輩はすぐに走って消えていった。寮の周辺は見通しのいいはずなのにあっという間に見えなくなった。
「さてと、こんにちは。萩野です。陸上競技部の副顧問で寮を担当です。何かあれば連絡してね。」
小走りで来た男性は僕にそう言うと寮に入っていった。
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