第5話入寮(武谷みゆ・笹木桃華)

私、武谷みゆと笹木桃華は幼なじみです。家が向かいあっていることもあって幼稚園の頃から一緒に遊んでいた。幼稚園、小学校と同じ場所に通い、中学校はちょうど家の前の道で校区が別れてしまったので違う中学校に通ったが、高校は同じ学校に通うことになった。


「ねえ、みゆ。ここだよね?」

「うん、そうだよ。」

「どうする?」

「どうしようか?」


現在、私たちは今日から入寮することになった福原高等学校の陸上競技部の寮の前で固まっている。理由は簡単で入り口の前にとても大きな男の人が立っていてその人がこちらをジ-と見てきているからである。まるで蛇に睨まれた蛙のように私たちは動けなくなっている。


「ママ達が来るのを待とうか。」

「そうだね。」


私たちの親は寮に車を停められそうになかったので近くの駐車場を探しに私たちを置いて行ってしまった。私たちは2人で先に行っておいてと言われたのだけれど寮に近づいたところで男の人に見つかり、見つめられている。


「どうかしたの?もしかして新入生?」


2人で固まっていると後ろから声をかけられた。振り返るとそこには女の人が2人立っていた。


「えっと。はい。」

「そう。どうしてここに立っているの?と聞きたかったんだけど、うん。なんとなく分かった。ちょっと待っててね。」


そう言うと2人は男の人に近づいた。しばらくすると男の人はこちらに向かって歩いてきた。


「ん。」


男の人は私たちの目の前で止まり寮の入り口を指差した。


「壮真!違うよ!彼女たちは入り口の場所が分からないんじゃなくて壮真を怖がっていたの。だから、怖がらせないようにしてって言ったでしょうが!何でで近づいて入り口を指差してるの?さっきよりも怖がらせてるじゃない!!」

「ん?」


どうしたらいいのか分からずに固まっているとさっき声を掛けてきた女の人が近づいてきて文句を言い始めた。


「彩希ちゃん、壮真のことお願いね。私はこの子達を寮に案内するから。」

「分かった。お願いね。」

「それじゃあ、行こうか!」


そう言うと男の人に文句を言っている女の人を置いて私たちの手をひきながら寮に向けて歩き始めた。


「「はい。」」


私たちはとりあえず怖い見た目の男の人から離れて寮に入るために抵抗することなくついていくことにした。

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