第2話入寮(佐野勇太)

車で走ることおよそ3時間、遂に寮に到着した。


「母さん、挨拶してくる。」

「うん。車停める場所も聞いてきてくれる?」

「分かった。」


寮に着いてすぐに僕は車から飛び出して寮に向かって走っていった。



「えっと、インターホンがない?あれ、これってそのまま入ったらいいんだろうか?」


ガラガラガラ

寮の入り口で悩んでいると扉が開いて人が出てきた。


「あの…」

「ん?」


なんか場所を間違えたのだろうか?僕も174cmはあるんだけど、そんな僕よりも背が高い人が出てきた。しかも機嫌悪そう。ムスっとした顔で聞き返してきた。


「えっと、ここは福原高等学校の陸上競技部の寮ですよね。」

「ん。」

「僕は今日からお世話になります、佐野勇太です。よろしくお願いします。」

「ん。」


先輩はニコリともせずに僕のことを見たまま固まった。


「あの先輩…」

「あ、壮真!そんなところで新入生を困らせてはダメでしょ!」


名前を聞こうとすると奥から女の人が走ってきて、そのまま、僕の目の前にいた男の人の頭にチョップをした。


「痛いよ!」

「痛いよじゃないでしょうが、まったくもう!

怖がらせてごめんね。私は4月から2年になる岩谷いつき、そんでこっちのあまり反応がないのが私と一緒で4月から2年になる沢井壮真。これ以外は基本的に話しやすいのばかりだから安心してね。」


男の人とはとても対象的で明るくてとても関わりやすそうな人だな。


「あ、はい。僕は佐野勇太です。よろしくお願いします。」

「うん、よろしくね。」

「あの、母親が車はどこに停めたらいいのか聞いてこいと言われているんですけどどなたに聞いたらいいんでしょうか?」

「ああ、それはそこの空き地に停めてもらったら大丈夫だよ。そこは寮生の親が来たときに車を停めるための駐車場代わりだからね。」

「分かりました。伝えてきます。」



すぐ近くのス-パの駐車場に車を停めている母さんの元に走って向かった。


「母さん、車は寮の横の空き地に停めていいんだって。」

「分かったわ。」


母さんはそういうと車を動かし始めた。それを確認した僕は再び走って寮に戻っていった。

寮に戻ると寮の前で固まっている女子とその女子を離れた場所から見ている彼女の両親らしき人たちがいた。固まっている女子の目線の先には、女子を見て固まっている沢井先輩と沢井先輩をポコポコと叩いている岩谷先輩がいた。


「こんにちは、僕は佐野勇太です。今日から福原高等学校の陸上競技部の寮に入寮します。よろしくお願いします。」

「あ、こんにちは。私は林鈴香です。私も今日から入寮します。よろしくお願いします。」


近づくと林さんがこちらに気がついたようなので挨拶をした。

彼女は同級生かぁ~。なんか全体的に細く見える。確かに、長距離選手は重いと走れないのもあって身長に対して体重が軽い人は多くいるけどここまで小さくて細い人は初めて見たかも。さすがにこの事について言うとセクハラとか言われそうだし黙っておこうと。


「自己紹介はその辺にしておいてとりあえず荷物を運び込んだ方がいいよ。聞いていると思うけど今日16時から部活があるから、ここを15時30分過ぎに出るよ。ちゃんと競技場まで案内するから安心してね。」


岩谷先輩が僕たちが話し終わるのを見計らって話しかけてきた。


「「はい!」」


林さんと2人揃って返事をして動こうとすると、沢井先輩が岩谷先輩の肩をとんとんとしながら


「それ、僕の仕事」


と言った。


「うん、知ってるよ。でも監督に補助するようにと言われてるの。だから一緒に行くよ。だいたい、壮真は移動中に会話できないでしょうが!新入生を迎える役をすると行って機嫌よく出ていったはいいけどどうしていいのかわからずに固まるから来た新入生が2人揃って怯えちゃったじゃない!」


岩谷先輩は途中まで穏やかな口調で話していたけれど途中から言いたいことが爆発したようで強い口調で言い始めた。


「大丈夫。次がある。」

「次はないから。まだ女子が2人、男子が1人来るけどそれは私が出迎えるから壮真は寮母さんに「もう来てます。」と連絡をしたら部屋に引っ込んでおいて。あんたが必要になったら呼び出すから!」

「いや!待つ。」

「もう!絶対来る新入生を怖がらせるだけだから辞めなさい!」

「そんなことない!」


岩本先輩と沢井先輩が入り口の前で言い争いを始めたのでどうしたらいいのだろうかと思い、すぐ横にいた林さんの顔を見ると林さんも固まっていた。すると寮から女の人が出てきた。


「いつき、壮真に文句言っても無駄だよ。だからそんなとこで言わないの。新入生が困っているでしょうが」

「だって…」

「だってじゃありません!まったくもう!とりあえず、そこの新入生2人入っておいで!男子は入ったら階段を上ったところに男子が居るからそれにしたがって。女子の方はついておいで。部屋まで案内するね。」

「はい!」

「分かりました。」


僕と林さんは返事をして寮に入っていった。

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