狩猟 七
日が落ちた森は恐怖心を煽る。
夜行性の動物達がざわめき近くの草木の音を立てる。ガサガサ、と音がした方向にライトを当てると猪がいた。
深い森の動物達はライトを当てても逃げることはない。深い瞳がライトに照らされ俺を睨んでいる。
俺は10キロ以上の大荷物を背負っている。仮にこの猪に襲われれば逃げられない。雑食の山のクジラは人すら食べる。主に首を吊った亡骸ではあるが、人の味を知っているのだ。
喰われるか、と俺は思う。夜の動物に森で出くわす度にそう思う。足の骨を折られ、もがき苦しみながら這いずっている所に、あの猪の木の幹すら噛み砕く頑丈な歯を突き立てられるのだ。たぶん、人間なんかは骨ごと喰われてしまうのだろう。映画ハンニバルで出てきた豚の様に、容赦なく区別なく一片の残りもなく喰われてしまう。
そう妄想していると、妙に尻の奥の骨盤がゾワゾワしてきて勃起してしまう。今もズボンにテントが張って、目の前の獣に歯を突き立てられもしたのなら射精してしまうだろう。
猪は俺から顔を背けて何処かへと消えてしまった。俺はそれを少し残念に思い、それ以上の安堵の気持ちを胸に抱き歩き出した。
山の麓まで後は数十分という所まで来ていた。町の光が木漏れ日の様に木々の隙間から俺を照らす。そして背後を振り返る。漆黒の闇の森に引き込まれてしまう。
また来るよ。と俺は森に心のなかで語りかけて町へと戻った。
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