逃走

 店の片付けも終えて、少年とまた二人きりになった。

「とりあえず、着替えはコインロッカーで洗濯するから」

 と、俺は言った。少年は俺を見つめてコクリと頷いた。

 俺は店を出た。外は真夜中。ネオンの光に溢れていた。

 人の喧騒の中にいると、あぁ山に行きてえな、と思わずにはいられなかった。もしかしたら、あの少年の目が鹿に似ていたからかも知れないが。

 店に戻って少年に洗濯を済ませた着替えを渡す。

「もう帰れねえだろ。今夜はここに泊まっていいから。明日の朝一番で俺はまた来るから」

 と少年に一方的に告げて店をまた出た。ネットルームにでも泊まるか、と俺は深夜の街を徘徊した。

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