狩猟 三

 崩れかけた橋を渡る。廃道が真っ直ぐ伸びていて見晴らしが少し良くなった。

 気配がして辺りを探ると鹿がいた。距離は50メートルほど。自分の射程距離のギリギリのラインだった。

 俺は片膝をついた。

 スコープを覗く。

 鹿の少し潤んだ目が淡く光って見えた。

 今度は安全装置を解除する。

 銃声が森の静寂を切り裂いた。

 手応えはあった。しかし、鹿は逃げた。

 焦るな。と、自分に言い聞かす。

 確実に当たっている。

 銃身を折り空薬莢を取り出す。

 空のポケットにそれを入れて、鹿のいた場所へと歩いて行った。

 鹿のいた場所の奥に大木があった。二抱えもある苔むした大木だ。そこには鹿の血肉と骨が飛び散っていた。

 遠くまでは逃げられまい。これから行うであろう、止め矢から解体までの作業が頭に浮かんだ。

 アドレナリンがどっと出てくる。鼻腔に血生臭い肉の薫りが蘇った。

 辺りを見回す。鹿の血が斑点となって倒れた草や樹木についている。俺は我慢できなくなり、早足でその跡を追いかけた。

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