連込み

 俺は目的のビルへとたどり着き、店のドアを開ける。雇われ店長ではあるけれど、人助けぐらいの役得は許されるだろう。コンビニで買ったタオルを少年に放り投げた。

「ほら、入れよ。あぁ、その前に軽くタオルで拭いてからにしてくれ。部屋にはシャワーは無いけど体を拭くくらいは出来るから」

 と、俺は少年を招き入れた。

 部屋に入ってドライヤーを探す。確かあったはずだが、俺は使わねえからどこにあるかが分からねえ。とりあえず棚を開けると埃を被ったドライヤーがあった。軽く埃を払いコンセントに刺して試す。ブォーと生暖かい風が吹いた。

 俺は申し訳程度に畳まれているバスタオルをカゴから取り出して、給湯器のスイッチを入れた。

「とりあえずこれで頭を洗えや」

 と、少年に言ったが反応がない。ガタガタと震えている。それは銃弾をくらって死に損なっている鹿のようだった。

「服を脱がすぞ」

 と、少年に言った。それから無理やり服を脱がす。白い肌に思わず見とれる。水を弾く肌にタオルを当てる。

「立てるか?」

 と、俺は少年に聞いた。少年は軽く頭を横に振る。仕方ねえな。

 俺は少年の脇に腕を突っ込み腰に両手を当てる。

「立たせるぞ。踏ん張れ」

 と、少年に言って体を引き寄せ支える。熱い。体が火照っている。まずいな。

「肩を持て」

 と、語りかけると少年は力なく俺の肩に手を回す。少年の濡れた髪から少し甘い香りがした。そのまま洗い場に連れて行く。

「頭を洗うぞ」

 と、俺は言って少年の頭を鷲掴みする。少年の黒く長い髪は少しベタついていた。

「熱ッ」

 と、少年は口をもらす。

「我慢しろ」

 と、俺は言って少年の髪をグシャグシャ洗った。

「めんどくせえな」

 と、俺は思わず口に出していた。男のくせにこんな長い髪をしやがって、と年相応の感想を抱く。少年の首を抑えつけながら、苛立ちのままこの長い髪を洗い続けた。あっぷ、あっぷ、と少年の苦しそうな吐息を無視しながら。

 

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