② 遭遇


 そして学校が終わり夕食を済ませて夜21時。コンビニに行くと言ってオレは神社へ向かった。先に集合していた渡辺と川村になじられつつ、


「ども! ナベチャンネルでーす!」


 捻りの無い挨拶で渡辺の動画撮影が始まる。あまり映りたくないのでカメラマン役を買って出た。


「今日はね、近所の神社に夜、幽霊が出るらしいんで肝試しをしたいと! おもいまーっす!」

「いぇーい!」

「今日は友達の川ちゃんとカメラマンの黒ちゃんも一緒でーす」


 川村は映ることに抵抗がないようでノリノリだ。ネットリテラシーとか水を差すことは言えないのでそっとしておこう。


「じゃあね、早速神社の奥へ行ってみたいと思います!」

「おー!」

「……おー」


 照明は懐中電灯のみ。渡辺は撮影に慣れているからか堂々としているが、川村は緊張か恐怖か……少し灯りを持つ手が震えていた。


 この時点で川村ほどではないが、ちょっと不安が過ったけれどせっかくテンションの上がった2人にノリが悪いと言われるのも嫌である。


 撮影の「画」を取る為に、敢えてゆっくり歩きながら石畳を踏んでいくと風で木々が揺れた。


「ひっ……」

「川ちゃ〜ん、ビビりすぎたって」

 

 渡辺が懐中電灯で周囲を照らすと、木の葉が擦れているのがわかる。何も不思議なことはないはず。


「さぁ~て、何か出てきてくれるんですかねぇ~?」


 もちろん何も出てくるはずはない。テレビでもない学生に、演出の用意などもないし。このまま平穏無事に境内で行って戻って終わり……



 縺雁燕縺ョ霄ォ菴薙r繧医%縺



「な、なべちゃん何か言った!?」

「え? 何も言ってないよ」

「イッペー?」

「オレはずっと喋ってないぞ」


 名前を言わないでほしい。

 でも背後から何か聞こえた気がする……日本語じゃなかったけど。

 


 縺雁燕縺ョ霄ォ菴薙r繧医%縺



「……誰かいる?」

「い、いやいや、そんなわけないだろ~」


 いや、いる。

 絶対何かいる。

 でもそれが何か、スマホのライトを周囲に当ててもわからない。


 後ろだ。

 でも振り返ったらヤバい。脳が見ることを拒否する。


「ど、どしたのイッペー」

「このまま奥に行こう」


 演者の2人も察したのか、少し足を速める。気のせい、杞憂であってほしい、後ろには何もいなくて、明日からの話のネタになるだけだ……



 オマエノカラダヲヨコセ



 男とも女ともいえない声、ようやく聞き取れてしまったその声に、思わず振り返ってしまった。


 暗闇にうっすらと浮かぶ人影。

 不定形で輪郭はぐにゃぐにゃと動いていてはっきりしない……が、ソレは人間の声でオレ達へ叫ぶ。




 オマエノカラダヲヨコセ!!

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