第3話 ⌘【月を探しに】⌘ ②

 エンの国の姫は王子が旅に出てから、不安で毎日泣いています。そして小さい頃からペットとして一緒にいるマンクスに話かけます。

「まだ月が見つからない。一体なぜなのでしょう…?民たちが噂しているように、私が王子様と結婚するのを良しとしていないのかも…。」

姫の目から大粒の涙が溢れます。

 マンクスは『ニャー』と鳴いて慰めますが、お姫様の涙は止まりません。


 そんなところへ王子からいちごが届きます。


「ああ、嬉しい!王子様は私にこんなに美味しそうないちごを送って下さいました!」

 姫はそう言ってまた泣きましたが、お顔は少しだけ笑顔になっています。



 それからもずっと王子は月を探して旅を続けます。

 7月には雄鹿、8月にはチョウザメ、9月には農家の人、10月はハンター、11月にはビーバーと、山も海も里も探しますが、やはりどこにも無いようです。


 12月、月が消えてからもう既に1年以上が過ぎてしまっていました。


 途方に暮れた王子が、城へ帰って来ます。


 帰ってきた王子に、王様が渋い顔をして伝えます。

「これだけ探して月が見つからないのだから、もう諦めるしかなさそうだ。

 それでお前達の結婚なのだが、月が戻らない以上、認める訳にはいかない。

 お前はこれから王になる身。民に“女神様が反対なさってる”と噂されるような結婚を認めることはできない。」


 王子は目にいっぱい涙を溜め、泣くのを我慢しましたが、それでも堪えきれず、頬を伝って流れ落ちます。


 *


 王子が城に戻ってしばらくした頃、王子に面会を求める者がやってきます。

 それは1番最初に会ったオオカミです。


『思い出した事があって、王子様に伝えに来た。』

「はい、何でしょう?」

『俺は過去に川を泳いで渡り、エン国にも行ったことがあるんだが、その時に見たヤツと月から飛び出したウサギが同じヤツなんだ。何処かで見たことあるなぁと、よくよく考えたらそいつだった。』

「それは誰なのでしょう?教えてください!」

『ああ、それは…。』


「…間違い無いのでしょうか?」

『あれからもう一度確認しにエン国へ行ってきたから、間違い無い。』

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