第4話 ⌘【犯人の元へ】⌘
オオカミから教えてもらった者の元へ王子が向かいます。
王子がやって来たのは、エン国のお城でした。
まずは国王に挨拶し、オオカミから聞いた話を伝えます。国王はびっくりしましたが、すぐに家来に命令をしました。
「姫のペットである、マンクスをここへ!」
そう、オオカミが見たのは、姫が小さい頃からずっと一緒にいるマンクスでした。
マンクスはウサギのような猫なので、オオカミがウサギだと思っていたけど、実はマンクスなのでした。
王子はマンクスに尋ねます。
「あなたが月から飛び出してきたのを見た者がいるのですが、間違いありませんか?
何故、月から飛び出したのでしょう?」
マンクスはフゥっとため息をついてから、穏やかな口調で話出します。
『はい、月から飛び出したのは私です。間違いありません。』
それを聞いた姫が、隠れていた柱のカーテンから飛び出します。
「マンクス!あなた喋れるの⁈」
「姫!あなたも聞いておられたのですね!」
突然飛び出してきた姫に、王子も他の者達もびっくりしています。
国王はやれやれといった感じです。
それからマンクスは、包み隠さず事の経緯を話します。
姫の結婚準備が始まり、マンクスは相手にしてもらえない寂しさから、城の外へ遊びに行きました。
その時、一見優しそうなネコと知り合いになります。しばらく一緒に遊んだ後、姫の結婚の話になりました。
そのネコはマンクスに言います。
〔イヲ国の王子は動物嫌いで、特にネコは最も嫌いなんだそうだ。それでなくとも君は姫とは一緒に行けないだろうね。
それに、姫がいないと君はどうなるんだろう?君は必要なのだろうか?〕
マンクスはショックを受けます。それまではただ姫が幸せになることが嬉しくて、一緒に喜んでいたのだけど、それを聞いた瞬間、ドン底に突き落とされた気分です。
『私は…捨てられてしまうのか…。』
〔私にいい考えがある。月を隠してしまえばどうだろう?月が見つかるまで、姫はお嫁には行けない。それがこの2つの国の習わしだから。〕
城の外で出会ったネコの目が怪しく光ります。
マンクスは10月、女神アルテミスが神様の集まりで留守にするタイミングで月を隠してしまいました。
ここまで話をした時に、皆は疑問に思います。
「ねえマンクス、いくらアルテミス様がお留守だからといって、何故あなたが月を隠すことができるの?」
『実は私は、女神アルテミス様にお使いする者なのです。姫が小さい頃、月に向かって“あの月にいるウサギが欲しい”と何度も強く願いましたよね?それを聞いて私も、とても素直で可愛らしい姫の元へ行きたいと思い、アルテミス様に伝えました。それでアルテミス様は私を姫の元へ送り出してくれたのです。ただ、バレないように猫に姿を変えました。だから私には月を扱う能力があるのです。』
「そうか、昔は月に餅をつくウサギの姿があったように記憶してるが、最近とんと見かけないと思ってたんだ。それがマンクスだったのか。」
国王は腑に落ちたようです。
「それで月はどこにあるの?」
『実は、海岸の砂の中に埋めてあります。』
皆は急いで海岸へ向かい、砂を掘りました。
すると、淡く光り輝く大きなお月様が姿を現します。次の瞬間、月は天に向かってスーッと昇っていき、在るべき場所へと戻りました。
『ああ…これで姫とはお別れですね…。』
マンクスが暗い顔で呟くと、
「誰が私を動物嫌いだと言ったかは知らないが、大好きですよ。もちろん猫もウサギも。」
王子はすごく真面目な顔をしてマンクスに伝えます。
「マンクス、あなたも姫と一緒にイヲの国へいらして下さい。私達はあなたのことも待っていますよ。」
そう言って優しく微笑みました。
*
一体誰が何の為に、マンクスに〔月を隠せ〕と吹き込んだのでしょう?
王様は皆に命令し、そのネコを探します。
ネコは実は盗賊の仲間だったのです。
盗賊は、盗みを働くのには暗闇が良く、月が邪魔だと常々言っています。盗賊のネコは、他のネコ達の噂話で、マンクスが月から来たことを知っていました。ネコはマンクスに近付くチャンスを狙っていたのです。
盗賊とネコは島流しとなり、もう二度とこの国へ戻ってくることはありません。
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