再会
川崎の事故から一週間、少しずつ日常に戻りつつある。名古屋に戻ると、娘の瑠奈が帰ってきており、陰鬱な雰囲気を振り払ってくれているのも一因だろう。俺のガレージには、娘の真新しいバイクがこれでもかという存在感を放ちながら鎮座している。真っ赤なフェアリングと低い位置のハンドル、大袈裟な音を放つマフラーなど、俺には縁のないものと思っていた車体をまじまじと眺めていると、娘が、
「お父さん、乗ってみる?こういうのも、楽しいんだよ!」
と声をかけてきた。俺は、
「これって何cc?」
と聞いてみた。
「お父さん、それってナンシーおじさんっていって、人から笑われるんだよ。気をつけてね。これは二百五十ccだからお父さんなら、平気で乗れると思うよ。これ、ニダボっていうのよ。知ってる?」
と、明るく笑う。バイクマニアの俺が、知らないわけはないが、
「ふーん。そうなのか?少し走ってくるよ。ハンドル、低いな。こんな後ろにステップあって、運転できるかな?瑠奈は平気なの?」
「全然平気。バイクと一体になれる感じだよ。説明より乗った方が分かりやすいから…。腰、痛めないでね。」
明るく話す娘の言葉に背を押され、暫し嫌なことを忘れて娘のバイクにでも乗ってみるか…。そういえば俺のカタナもセパハン、バックステップ、集合管という、昭和の流行りをこれでもか!というほど寄せ集めてある。令和のスポーツバイクくらい、普通に乗ってみるさ。
前傾姿勢を強いられるスポーツバイクに乗るのは何十年振りだろうか?大型車と比べれば、タンクが短く、それ程低く感じないハンドルを軽く握る。見た目と違い、不思議と体にフィットする感覚がある。走り出して最初の信号でブレーキを握ると、前に転げ落ちそうな気分で、楽しさよりも恐怖を感じた。フロントフォークの動きに抵抗がないのだ。素晴らしくスムースな動きともいえる。サスペンションとタイヤの進化は凄まじい。たったの二百五十ccとは思えないほどよく走る。何と言っても軽い。しかも、これ程の軽さにして、素晴らしい安定感。ほんの十分もすると、車体そのもの、サスペンションやブレーキのしっかりした動きに加え、前後左右に自由自在に動き回れるような感じがしてくる。ちらっと行きたい方向に視線を移すだけで、そちらに動くような感覚、俺たちが熱中した、かつてのバイクとはわけが違う。
「こういうのもいいもんだ。」
少し降りて、じっくりバイクを眺めたくなってコンビニに停車すると、真新しい金属部品や美しく塗装された樹脂部品、真新しいタイヤ、それらが融合した結果の美しいフォルム…。なかなかいいじゃないか。道の駅の駐輪場では、このバイクをよく見かける。結構な値段であるのに、若いライダーがよく乗っている。理由が知りたいと思っていたが、何となくわかった気がする。いいものは、値段が高くても売れるもんだ。俺は、頷きながら、冷たいコーヒーを買いに店に入った。レジで順番を待っていると、
「おい、高橋じゃないのか?久し振りだな。」
声をかけてきた中年男性に戸惑っていると、
「俺だよ、博だよ。忘れたのか?久し振りに実家に用事があってね。」
突然で頭が回転していなかったが、
「そうか、博か。久し振りだな。元気か?」
何とか返事をし、次の言葉を探している。中学のとき、大親友であった、あの博だ。こんなところで再開するとは思ってもみなかった。はじめは、こんなおじさんを俺は知らないと思っていたが、よくよく見ると、やはり博である。ようやく嬉しさが込み上げ、笑顔になった。
「高橋、今日の夕方、久し振りに飯でも行かないか?お前、悩み事がありそうだから聞いてやるよ。」
「俺、そんな顔してるか?まあ、夕食は付き合うよ。ついでと言ってはなんだが、一杯飲むかな?何年ぶりだ?」
「そうだなあ、三十年ってとこじゃないかな。ところでお前、そのバイク乗ってるのか?凄いな。時代が変わってもセパハン、バックステップ、集合管か?速いか?」
「娘のだよ。二気筒だから、集合管ってのは大袈裟だけどな。出口もよく見てみろよ。二つに別れてるだろ?集合はしてないんだよ。ところで、お前もバイク乗ってるのか?」
「うん。俺のは二百五十のオフ車。フェアリング付きの今どきのやつだよ。ラリーって、知ってるか?ニンジャだって現役だよ。」
驚いた。博は俺と同じバイクに乗っているようだ。しかも、昔のバイクも残してるだと?俺と同じだ。バイクの話を切り上げないと、際限なく続きそうなので、
「じゃあ、夕方七時にここで待ち合わせにしよう。この裏手に小ぢんまりしたいい店があるからさ。そこでいいか?」
博が頷く。俺は家に帰り、博と夕食に出掛けることを妻と娘に告げた。家族サービスしたいのは山々であるが、昔の親友と食事くらいは許してもらえるだろう。
「お父さんの友達だもんね。たまにはゆっくりしてきてね。仕事と私達のことばっかりで、お父さん自分の時間ないものね。」
娘の言葉に感謝した。
酒が入るのは分かっているので、娘に送ってもらった。
俺のシトロエン2CVを器用に運転する娘に、少し驚いた。小さいときから、毎日助手席に乗ってたから、動かす手順は完璧に覚えてると笑っている。今どきの女子大生がキャブの旧い車を自在に操るのは、やはり違和感がある。
「じゃあ、食事終わったら連絡してね。迎えにくるから。」
シトロエンが遠ざかるのを自分の目で追っていた。目の前の赤信号に引っかかる。シフトダウンの音が聞こえる。しっかりダブルクラッチを切っていて、安定した姿勢で停止する。上手いもんだ。俺が永年愛用してきたシトロエンが、不思議なことに、俺より娘の方が似合っているように感じる。送り迎えしてもらえることに感謝しながら、店に向かう。
博は自分のグラスと俺のグラスにビールを注ぐと、
「まずは、乾杯といこうじゃないか。久し振りに会ったんだ。そうだな、俺達の再会とバイクに乾杯!」
旧友と酒を酌み交わすと、煩わしい日常から解き放たれたように感じる。暫くお互いの近況やどうでもいい世間話をした後、博が真面目な顔で聞いてきた。
「高橋、昼間に出会ったときにお前の表情から悩みを読み取ったんだ。こうして話していても、お前は昔のままだ…。だが、何と言うのかお前は恐ろしく強力な何かに守られている。いや、支配されているように俺にはみえるんだ。」
一週間程前、函館の居酒屋で同じようなことを言われた。俺には一体どんな化け物が取り憑いているんだ?そしてそいつに守られつつ、俺は悩んでいるようにみえるだと?頭の中が混乱してきた。俺は、どんな顔をしているんだ?
「まあ、でもそんな強力な味方はないよな。お前が羨ましくもあるよ。ところで、最近、お前の周りで死人がでなかったか?」
博が口を開いた。
「何でわかるんだよ?一週間ほど前、俺の上司が…。ガミガミとうるさい男でな。ところで、俺に取り憑いている強いものって、例えばどんなものなんだ?超強力なプロレスラーか?それとも、猛獣みたいな…?」
「その二択なら、どちらかと言うと後者か…。はっきりとはわからないが、物理的にとんでもないパワーを感じるんだよ。とにかく、か細い幽霊のようなものじゃないことは確かだよ。」
「何だか喜んでいいものなのか?よくわからないよな。でも、俺は猛獣みたいなのに守られてると…。
ところで、さっきの俺の周りで死人が出たとかいう話は、その猛獣と関係があるのか?」
「ひょっとすると関係あるかもな。」
そう言うと博はビールを呷った。何か考えているようだが、俺にはさっぱりわからない。
「高橋、中学の時のバス事故のこと覚えてるか?俺はあのとき、同じような感覚に襲われた気がしたんだ。お前は、何かに守られている。お前はあの瞬間、後ろを振り返ったよな?何かに呼ばれたように、俺にはそうみえた。結果的にお前は後ろを振り返ったお陰で鉄の塊を避け、それは、後ろの席にいたあいつに直撃して、あいつは死んだ。あのとき、お前は何かに呼びかけられただろ?覚えてるか?」
覚えていない。でも…何度もみるあの夢の中で俺は『大丈夫』という女性の声を聞いている。そのことを博に説明すると、
「そうなのか。その女性の声が誰の声かは分からないのか?あの事故のときも分からなかったのか?」
そう聞かれて、俺は混乱してきた。そもそも俺は事故のことをほとんど覚えていない。恐らく、博は全てを克明に覚えているのだろう。
もちろんそんな事故があり、俺もその場にいたことは分かっている。ただ、詳細に覚えていないだけだ。クラスメイトが事故で亡くなったというショックで、思い出せないのかもしれない。
「高橋、あの『大丈夫』という声は、静香ちゃんが発したものだ。お前のカミさんだよ。でも、あのとき、あの状況でどうして彼女がそう思ったのか?今でも謎なんだよ。当時、俺は静香ちゃんに聞いたことがあってね。でも、彼女もお前と同じく覚えていないと言っていた。恐らく本当だろう。」
大声を上げそうになった。そうだ。あの声は、紛れもなく静香の声だ。どうして気づかなかったのか?俺にもわからない。
もちろん、静香が俺の同級生だったことは間違いない。当然覚えている。もの静かで目立たない彼女が、どうして事故の瞬間に大声を発したのか?周りの同級生も聞いているはずだ。博だって聞いている。そして、俺も聞いていたはずだが、今の今まで思い出せなかった。
俺も当時から目立たない生徒で、事故で亡くなった同級生からは酷い扱いを受けていた。学校で殴られたり金を要求されたり…。そんな俺を彼女はどうみていたんだろうか?ふと、そんな疑問が湧き上がってきた。恐らく、弱い俺を見て憐れんでいたのではないだろうか?
「高橋、混乱してるようだな。あの事故の状況で、彼女の声を聞いてお前が振り向いて、飛んできた部品を避けることは、奇跡であって偶然だ。何らかの意図が働いたということでは決してない。俺は断言できる。しかし、今のお前をみていると、果たして本当に偶然だったのか?
大きな力で守られていたんじゃないのか?そんな気がしてくるんだよ。そして、静香ちゃんならそんな力があるのかも知れない…。お前を危機から救うことが、彼女の使命であるかのように思えてくるんだよ。そんなことは、あり得ない。冷静な俺は、そう考えるだろう。しかし、彼女の使命だと考えると、辻褄があってくる。」
「そんなことがあり得るのか?俺には到底理解できないが…。俺のカミさんが猛獣だと言いたいのか?むしろ、カミさんは病弱なイメージで、決して強くなさそうなんだけどな…。」
「俺は確かに、お前が巨大な力に守られている気がすると言った。それは、俺達が中学の時、静香ちゃんが広島から転校してきたときに始まっていたのかも知れない。彼女のお前に対する思いは、今の俺達には想像もつかないものだったのかもな。実際、その十年後、お前と彼女は結婚しているわけだし。笑わずに聞いてくれよ。俺の言った巨大な力は、静香ちゃんから発せられているのかも知れない。そんな気がするんだよ。」
確かに、俺はこれまで何度もピンチになると救われてきた。そして、俺は、その直前に例外なく妻に愚痴をこぼしていた。
競合他社との入札が決まる日、その会社に巨額の政治家への贈賄が発覚し、結果的に俺のチームが入札を勝ち取ったり、社内のプレゼンで負けそうになったとき、その相手にスパイ行為が発覚したり…。そして今回も年下の上司から執拗なパワハラを受けて、自分でも気づかぬうちに心を病んでいたのかも知れない。そんなとき、その上司が事故で死ぬ…。本当に偶然なのか?これまでピンチを救われた日の前後数日間、妻は非常に体調が悪かった気がする。いや、実際にそうだった。
「高橋、お前、何か自分に降りかかろうとしている、或いは、既に降りかかっている不都合なこととか、やばいこととか、静香ちゃんに愚痴ったりしなかったか?」
そうだった。俺は、娘の前ではできるだけ弱音を吐かないようにしていたが、静香と二人きりになると愚痴のひとつもこぼしたくなるときがあった。軽い愚痴のときには、彼女は俺を励ましてくれたが、深刻な愚痴のときには、彼女は考え込み、そして体調を崩し、その後、俺のピンチは解消されていった…。快哉を叫びたくなるようなときに、俺は妻の看病を何度もした記憶がある。妻は、俺のピンチを救うため、全てのエネルギーを使い、体調を崩していたのか?しかし、そんなことがあり得るのだろうか?現代の科学では説明のつかない、不思議なことがあっても、おかしくはない。しかし、こんな身近に、しかも、何度も経験しているとなれば、認めざるを得ないのではないか?
「高橋、彼女の力のルーツは、彼女の故郷、広島にあると思うんだよ。いや、根拠はないんだが、そんな気がするんだ。一度調べてみたらどうだ?もうすぐ会社も長期の休みだろ?」
「そうだな。長らくデカい方のバイク乗ってないからツーリングでもしながら広島に行ってみるかな?それで、何かわかるかな?俺のことでカミさんが体調崩すのが心配でさ。」
「どうだろう?俺も京都くらいまで付き合うよ。少し琵琶湖岸を走って、神社に参拝して、大津辺りで鰻でも食おう。ところで高橋、まだ動くのか?お前のカタナ…。呆れるよ。新車の方が金かからないだろ?」
「そりゃそうだけどなあ。でも、やっぱりあれじゃなきゃダメなんだよな。博、お前のニンジャはどうよ?まだ動くんだろ?」
博は微笑みを浮かべると、
「もちろん。真夏は水冷の方が安心できるよな。楽しみにしておくよ。高橋、お前とツーリングなんて何年ぶりかな?昔はよく一緒に走ったよな。覚えてるか?朝早くから峠走って、バイクをイジってさ、油まみれになってたよな。」
「いっぱいお金かけて、あちこちいじってさ…でも、本物のレーサーみたいなの出てきて白けてしまったけどさ。お互い表向きには、馬鹿っ速い二ストレプリカのせいにはしてるが、あんなことさえ起こらなければ…。」
「その話は…。でも、避けて通れないよな。時間もたっぷりある。ゆっくり話すか。でも髙橋、お前が悪いわけじゃないよ。」
「そうだな。今回は、他の件で行くわけだし、俺は、静香の体調が心配なんだよ。俺を救うことで、静香が神経をすり減らすのは、本末転倒だろ?そう思わないか?」
「確かにその通りだ。お前にとって、静香ちゃんは、何にも代えがたいほど大事な存在だろうからな。しかし、本当のことを知ってしまうのは、怖いことではないか?大丈夫か?髙橋…。」
「正直、怖いよ。知らない方が、幸せってこともあるだろうし…。でもな、博、俺は、これ以上、静香に負担を掛けたくないんだよ。もし、お前の仮説が正しいなら、俺の都合の悪いやつから、静香は、俺を守ってくれてたんだろ?俺が家族を守っていく。これまでとは違う、しっかりした親父になりたいんだよ。…すまんな。こんな話。それに付き合ってくれるお前は、やっぱり親友だよ。」
「面と向かって言うなよ。その言葉は、お前の心のなかにしまっておけ。俺も心配なんだよ。商売柄、不思議なできごとには、敏感でね。放っておけないというか…。」
友人というのは、本当にありがたい。
夏休み前、あと三日、俺はいつも通りに出社した。自分のデスクにつくと、ゆっくりコーヒーを片手に、パソコンの電源を入れる。程なくして立ち上がったその画面には、メールが届いた通知が表示されている。部長からである。極めて事務的なその文面には、九月一日付をもって、課長を命ずるということが書かれていた。ついにきたか。
続いて、本日十時に部長室に来るように書かれており、一気に緊張が走る。
川崎の部下たちを含め、みんな俺の部下になるのである。川崎が亡くなってから、課長の代理として、彼らと仕事をしてきた。今朝も、彼らが、ぞろぞろと集まってきた頃合いを見計らい、俺は、朝礼を始める。いつも通り。
仕事は、特に問題もなく、進んでいく。俺は部下に面倒くさい説教などをしないので、部下たちも伸び伸びと仕事に打ち込んでくれている。怖くなるほど順調である。そのことに感謝の念を込め、朝礼のスピーチを終えた。
「高橋さん、夏休みはどこか行くんですか?」
部下の一人が聞いてきた。
「うん。妻の実家のある、広島までツーリングしようと思っているんだ。君は?」
「いいですね。いつものラリーでツーリングですか?俺もバイク欲しいです!」
「そうか。今回は、ラリーじゃなくて、旧いカタナで行こうと思っているんだ。」
「カタナって、空冷の千百のやつですか?」
「詳しいね。それだよ。」
「気をつけて行ってきてくださいね!」
それだけいうと、部下は自分のデスクで黙々と仕事を始める。以前のようにギスギスしていない。俺のやり方だ。しっかり仕事してくれよ。
十時だ。俺は、部長室のドアをノックしていた。緊張で、手に汗をかいている。
「開いているよ。入りたまえ。」
中から部長の声が聞こえた。俺は、
「失礼します。」
と一言いい、静かにドアを閉めた。
「どうだね。しっかりメールはみてくれたようだな。まあ、座ってくれ。」
どうも居心地が悪い。部長は、にこやかに、
「そんなに緊張しないでくれ。メールにも書いておいたように、君には、来月から課長の職に就いてもらいたい。」
「はい。謹んでお受けいたします。」
「そうか。私は嬉しいよ。川崎君が亡くなってから、この職場のことを心配していたんだが、君に代理を任せて正解だった。みんなよくやってくれているよ。これからも、この調子で頑張ってほしい。まずは、特別なことはしなくていい。みんなが緊張せずに働けるように、君にはそんな職場作りに励んでほしい。よろしく頼むよ。」
「はい。頑張ります。」
「まだまだだね。髙橋君
部長の言葉に、意味がわからず戸惑っていると、
「君がそんなに緊張していては、部下のみんなに伝染してしまうぞ。リラックスしてくれ。」
ありがたかった。でも、俺は、この人を信用しきれずにいる。こんなにも誠実で、人当たりのいい上司など、普通に考えられない。俺の根性がひん曲がっているのだろうか?あま、いずれ、はっきりする時がくるのかも知れない。
「部長、私も前任の川崎課長に負けぬよう、精一杯頑張らせていただきます。部下のみんなが出世できるように、私も努力します!」
と伝えて部下室を辞した。辞令を渡された。今どき、こんな紙の辞令を渡す会社なんて珍しいんじゃないか?などと意味もなく考えていた。まあ、これで名実ともに、俺は課長だ。帰ったら静香に見せよう。喜んでくれるだろうか?
その夜、家族全員でささやかなお祝い会を開いてくれた。妻の手料理と、地元の酒蔵で作られた日本酒、近所で話題になっているスイーツが、我が家の食卓を飾る。
「お父さん、おめでとう!ついに管理職だね」
娘が言った。嬉しいものだ。役職など興味ないと嘯いていたが、いざ、肩書がつくと、おれではなく、家族が喜んでくれた。家族が喜ぶと俺も嬉しい。いい循環ができた。
こんな喜びを、ぜひ部下にも味わわせてやりたい。これから、頑張らなきゃ…。
「お父さん、明日からこれ使って!」
妻がプレゼントを手渡してくれる。
「開けていい?」
「もちろん!開けてみて。」
開封すると、中身は某有名ブランドのネクタイであった。全体でみると、非常にシックであるが、一本一本の糸は、それぞれ原色の非常に派手なものが使われている。センスが良すぎて、俺に似合うかな?疑問を投げかけた俺に、
「大丈夫よ。自分で思ってるより、お父さん
お洒落だから!」
妻の言葉が嬉しかった。明日、このネクタイで出社しよう。これからは、服装にも気をつけないといけないな。肩書ひとつで、人ってこんなに気分が違うものなんだ。改めてそう思う。あと二日で、長期の休みだ。リフレッシュできるといいな…。
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