『引き出しの怪獣』

ヒニヨル

『引き出しの怪獣』

うまく閉められない、引き出しがあった。


中身をちゃんと整えて

しっかり閉めたはずなのに


次に見たときには

2センチほど、いつもなぜか開いている。


今日もその引き出しを開けて、閉めた


しっかり閉めたはずなのに

やっぱり少し開いている。


何か、はさまっているのかな?


ぼくが近づくと、引き出しが大きく開いて

太い尻尾の茶色い猫がとびだした!


驚きながら、あわてて閉めると

また引き出しが

ガタンガタン


開いた隙間をのぞきこんだら

ぐるぐる動く大きな目玉


ぼくは目玉と目があって

ドスンと尻もちをついた。


「しゅくだいをしなさい」


「はやくごはんをたべなさい」


「いつまでそうしてるの」


「なにをかくしているの」


その度に、何度もぼくは引き出しを閉めた。


君ははじめ、エリマキトカゲに似ていたね

ぼくが奥へ押し込めるから

出るに出られなくて


こうして今日も

引き出しをそっと開けて

僕のほうを見てるんだ。



     fin.

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『引き出しの怪獣』 ヒニヨル @hiniyoru

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