第35話
顎にアッパーを食らってオークは壁まで吹き飛び消滅する。
「ふぅ。大分身体ほぐれてきたな」
《いやいやいやwww》
《オーク何倒した?》
《全部ワンパンで草》
《これでなまってるとかお前もう人間じゃないよ》
《Bランクのオークを素手でワンパンだもんなぁwww》
オークってBランクなんだ。それを殴り殺してちゃ人間じゃないって思うのもわかるけどさ、俺だって努力してここまでなっただけで元から人間だし!
ちょっとその努力が異世界で魔王を倒すくらいの規模なだけで。
「案外動けるんで、このまま下層行ってみようと思います」
《ここ新宿だよ……? 最難関を拳一つでって》
《最難関が最難関じゃなくなってるんだよなあwwww》
《装備なしでボスまで行くの!?》
「今回はリハビリなんでどこまで行こうとかは考えてないかな。まあいけたらボスまで行こうとは思ってる」
《行くんだよねwww》
《どうせ行くんだろ》
《もはや驚かなくなった自分が怖い》
さすがに慣れたか。まああんだけ神々とバチバチにやりあってたらそうもなるか。
でも慣れたということは逆にこれからの配信ではこれまで以上に期待されていることでもある。その期待に応えるためにもこんなところで止まってちゃいけない。
次々に襲い掛かるモンスターどもを殴り倒しながら下層まで一気に下っていく。
重だるかった身体も徐々に動かしやすくなり、下層に到着する頃には普段通りの動きができるようになってきていた。
「調子いいのでこのままボスまで行きましょうか」
《まあそうなると思ったwww》
《素手で新宿クリアは偉業だよもう》
「じゃあ、ボスまでさくっと倒していきましょうか」
カメラに向かってそう言うとまた地面を蹴って走り出す。
「今更なんだけどニュクスとの戦闘ってさ、画面見えてた?」
《見えてた~》
《あれだけ魔力とか炎纏っておいて見えるはずない》
《ついに下層走りながら雑談し始めたんだけどwww》
《ニュクスもうちょっと見たかったな~美人っぽそうだったし》
《モンスターにも下半身反応するんかwww》
《あれ一応女神だからな》
ニュクスは俺でも輪郭がぼやけてたし見えないのはしょうがないか。ていうかたまにニュクスに女を見出してる奴いるのが怖いんだけど。そいつというよりその性癖にたどり着ける想像力が怖い。ただ言っておくとニュクス、人型だし顔面もいいけど羽毛まみれで手足なんて鳥の脚っぽい化け物だったからな。
「見えてたならよかった。あんなに配信者泣かせな女神もいないだろ」
《それはそうww》
《暗くなったときマジでビビったわ》
《ダンジョン用のカメラならナイトビジョンついてるし大丈夫だろ》
《そうとも限らん。見た感じ光は100%遮断されて魔力だけで光ってる感じだったし映らんかも》
下層も半分に到達した。ここまでオークジェネラルとか出て来たけど難なく倒せたしこのままボスも素手で倒せそうだ。
「でももうアポロンは使いたくないな。派手だし強いけど代償がでかすぎる」
《まあ二日も寝込むのはつらいか》
《あれはさすがに人間やめちゃうか》
《かっこよかったけどなぁ》
立ちふさがるキングオークの顎をアッパーでかち割る。
首が変な方向に曲がったキングオークはそのまま消滅した。
道が平坦になってきている。
再び走り始めるとすぐにボス部屋までたどり着いた。
ボス部屋の中央にはがしゃどくろの姿はなく、小型ビルほどの大きさのドラゴンが窮屈そうに歩き回っていた。
「あれが本来の新宿ダンジョンのボスなんだろうな」
《そもそもボス見たことないわ》
《一応何年か前にボス部屋まで行ったパーティがあったらしいけど》
《ドラゴンも素手でいくんか?》
「もちろん素手でいく。危なくなったらスキルは使わせてもらうけどね」
俺はゆっくりとボス部屋に足を踏み入れた。
つま先がボス部屋に入った瞬間、ドラゴンがこちらを向いた。なるほど奇襲は効かないってか。
数秒にらみ合ったのち、ドラゴンの口から放たれたブレスを前転して避ける。
その勢いのままドラゴンの足元まで駆けると魔力を纏わせた拳をドラゴンの腹を抉るように打ち込んだ。メキメキという骨が折れる音と共にドラゴンの絶叫が響き渡る。
俺を引きはがそうと振られた前足を踏み台に跳躍し、頭部に迫る。ドラゴンと目が合ったがこいつが何を感じているのかはわからない。
拳は硬く。幾重の鎧をまとうようにただ魔力で固めていく。
「これでっ! 終わりっ!!」
横っ面に俺の拳を食らったドラゴンが地響きを立て倒れていく。
「ふう。リハビリ必要なかったかな」
《倒しちゃったwwww》
《最難関ダンジョンのボスでリハビリは草》
《ドラゴンがかわいそうに思えて来たな》
《ケイ俺誇らしいよ》
まあさすがにこんなに簡単に倒せるとは思ってなかった。一応最難関ダンジョンのボスだしドラゴンなんてあっちの世界でも最強種扱いだったから少しは苦戦するかと思ったけど案外簡単だったな。
薄っぺらい手ごたえを感じながら俺は配信を締め、地上へと戻っていった。
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