第36話
ダンジョンから帰宅するとすぐさまエリーに捕まった。
「ケイくん! コラボ依頼来てる! それもSランク探索者だって!」
「コラボ? ちょっとメール見して」
エリーからスマホを受け取ってメールアプリを開いた。
『やっほー☆覚えてる? 鹿田らむねだよー! ほんとはツゲッターとかフォトスタとかで連絡したかったんだけどDM開いてないしさー駄菓子屋行ったらうまいスティック置いてないみたいな気持ちになったよー。会ったらKINEでもDescordでもいいから交換しよっ!! そうそうコラボのことなんだけどさ~箱根ダンジョンに変異神域が出現したんだって! ケイってさ変異神域担当みたいなところあるじゃん? 一緒に行かない!? 私はいつでもいけるから連絡してねー!!』
「……要するに箱根ダンジョンに変異神域が湧いたからコラボしようってことか」
「やたら長いけどそういうことじゃないかしら?」
にしても鹿田さんとコラボか……これまでコラボした女性は黒崎さんと、パンドラか。
その二人よりも鹿田さんの視聴者は特に男性探索者とのコラボに厳しいという噂は聞いたことがある。
「明日でも行けるって伝えとくけどいい?」
「ケイくんがいけるなら大丈夫よ」
エリーに確認を取って俺はなるべく丁寧な文を打ち込んでいった。
☆
──2日後
「やっほー!! 寒いねぇ!! さすが箱根!!」
「そう言ってる割には元気っすね……」
そう言って胸を張る鹿田さんの服装は、上はブレザーを着ていたが下は膝上のスカートにひざ下までのソックスとあまり寒さを考慮していないオシャレJKの格好だ。
寒い寒いとは言いながらも鹿田さんは大手を振ってダンジョンの方へずんずんと歩いて行ってしまった。
「コラボは初めてー?」
「いえ。鹿田さんで3人目ですかね」
「らむねでいいよー! 敬語もめんどくさいから取っ払っちゃっていいよ!」
クルリとこちらを向いて満点の笑顔を向けてくる。
生粋の陽の者だ……! 縮地レベルで距離詰めてくるしハイテンションだし顔もスタイルもモデルなんじゃないかと思うほどだし学校でもさぞかし人気者なんだろう。
可愛くて強いは普通に反則だ。
「オーケーらむね。今回の変異神域の位置わかる?」
「早速下準備~? 探索者が板についてきたねぇ。お姉さんうれしいゾ」
「お姉さんって年下だろうが」
「まぁまぁ細かいことは良いんだよ。それで変異神域なんだけど下層の中間ぐらいだから35層ぐらいにあるはずなんだけどねぇ」
「何かおかしくなってる?」
「マップがあやふやなんだよねぇ。発見者は35層って言ってるんだけどその後の人たちは40層だったりそんなものはないって言ってるらしいんだよね」
変異神域があることは確実だろう。ギルドが観測した魔力の値からもそれは証明されている。
となると1番最初に考えられるのは変異神域が移動している可能性。
「らむね、変異神域が移動することってこれまであったか?」
「いやー? らむねもあんまり変異神域に行かないからわかんないけどなかったと思うよ」
「本当?」
「だってそんな面白いことあったら絶対配信で行ってるもん」
さいですか。配信ジャンキーというかこれ面白いものに目がないタイプか?
「今回も物理的に炎上しちゃうマンですかね?」
にへへといたずらっぽく笑いかけながら、らむねはマイクを持つかのように握った手を向けてくる。
絶対面白いことに目がないタイプだろ。
「あれ自分にもダメージ来るからもうやらないよ」
そう言った瞬間、スッとラムネの顔が冷める。
「そっか~その代わりになる面白いものお願いね?」
天使のような微笑みの奥で配信を面白くしなければ許さないとか言ってる鬼がこちらを睨んでいるように見えた。
「じゃあ始めるよ~」
同時に配信開始ボタンを押す。
「にゃっはろー! 鹿田らむねだよー! 箱根に来てまーす!! 寒―い!!」
彼女がオープニングトークを繰り広げているのを横目に俺も配信を開始する。
《おいすー》
《きちゃ!!》
《ついにらむらむとコラボか~》
《がんばれ》
「失礼のないように頑張りますかね」
「──ということで今回はコラボ配信だよ!! お相手は~今話題のゴッドスレイヤー! ケイ・カネシロ君で~す!!」
「どうも~ケイです。よろしくおねがいしますー」
「挨拶も済んだところで早速箱根ダンジョンの変異神域を調べていくよ!!」
らむねの高らかな宣言と共に俺たちの探索が始まった。
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