第漆話 知らない天井
知らない天井だ……一ノ瀬は目覚めると、何処かのベットに寝かされていた。既に外は暗く、空には月が昇っている。服は試験のときのまま、横を見ると、如月がベットに上半身を預けるように眠っていた。
思い出した……あの魔法撃った後……
やらかした、一瞬で理解した、この魔法はこんな近距離で撃つものでも、こんなに人がいるようなところでも、撃つべきではなかった……と
石製の的は完全に消し飛んだ、伊集院のときはまだ辛うじて残っていた部分(全体の5%程)をパズルの如く組み合わせ、残りは魔法で補って修復したが、今回はそれも無理そうだ……
そこで記憶は終わっている。
恐らくは魔力切れで倒れたのだろう。
視線を感じて右を向くと、そこに獲物を狙う仔猫の様な目でこちらを見つめる如月が居た。
「あー……おはよう?」
如月は何も言わない、それどころか微動だにしない、一ノ瀬は困惑した、何分これまで病気など片手で事足りる程しか引いたことがなく、こんな状況に陥ったことはただの一度もなかった。
そして数秒の沈黙が流れた、そしてそれは如月によって破かれた。
「ファン先生ーー!一ノ瀬起きましたァ!」
ドアが壊れないか心配になるほどの勢いで扉を開く如月、その間ドアから、ファン先生が入ってくる。走らずに。
「やぁ一ノ瀬君、具合はどうだい?」
「あぁはいお陰様で良好です。」
「そうかそれは良かった、しかしねぇ、真逆いきなり爆発魔法をぶっ放つとは、あいや、別に悪いことじゃない、俺も
そこから数分『彼奴』の愚痴を聞かされた、如月は結構楽しそうだった。
「おっと、もうこんな時間だ、んじゃ、僕はもう寝るから。」
そう言ってファン先生は部屋を出ていった。
「んじゃ俺ももう寝るから。」
眠気など微塵も無かったが、夜なので一応眠ることにして、如月に背を向けて、布団を被った。
「あ、ねぇ……あの……さ……」
「何?」
如月は頻りに身体をくねらせている、顔は逆光でよく見えない。
「その……いっ……しょに……寝ても……いい?」
「えーやだ」
「何でよ!」
「暑苦しいし、お前寝相悪いんだよ。」
「そんなの子供の頃の話じゃん!」
「それでも嫌なの。」
「ねーえーいいじゃんーかーべーつーにー!」
如月が何度も身体を揺さぶってくる、このままでは寝れないことは確かだ、仕方ない、ここは了承するしかないようだ。
「だあーもう、分かったよ、一緒に寝れば良いんだろ!」
「うわーい!やったぁ!」
そう言ってベッドに飛び込んでくる如月、その際に如月の手が顎に直撃する。
「あっ、ごめん。」
そういうとこだそお前ェ……
「はぁ…………じゃあもう遅いから、寝るぞ。」
「ん」
短く返事してそのまま枕に頭を乗せる。
しっかしかってえなこの枕。
そして、一ノ瀬はいつ何処から如月の無意識下による攻撃が飛んでくるものかと、気を張り巡らせ、数十分が経過していた……
!?
一ノ瀬は何者かの気配を感じ、掛け布団を跳ね除け、上半身を捻り、ドアの方向を向く。然しそこには誰もおらず、廊下も暗いまま。
一ノ瀬は気の
そして扉の隙間からいつぞやの影と同じ目が一ノ瀬たちを覗いていた。
最悪の目覚めだ、ガキの頃からこいつと寝るとろくな事がない。浸っていた郷愁も、こいつの右ストレートで全て飛んだ。
完全に目が覚めてしまった。仕方がない、ラジオ体操でもするか、覚えてればの話だが。
外に出て、懐かしい顔に出会った。
「おお!一ノ瀬氏!これはこれは久しぶりでござるな!しかしまぁ
「おお、久しぶり橘
こいつは
「おお!ストレージと言えば隠れ最強スキルの代名詞ではござらんか!良かったですなぁ!そうそう、拙者は
「一ノ瀬ッ!」
会話中だと言うのに怒号が響き渡る、声のした方向を向くと鬼の形相をした、後藤がいた。
「おお、おっかない、後藤殿の表情が範〇勇次郎の背筋のようですぞ、それでは私はこれで。」
後藤が鬼の形相のままこちらに荒々しい足音を立てながら、一ノ瀬に接近する、鬼の形相と言えど表情筋は地球最強の彼の足下に遥か届かないが。
「貴様にッ!決闘を申し込むッ!」
………………は?
「お?なになに?喧嘩?」
つい今しがた起きてきた如月が状況を理解しているのかしていないのか、呑気な声を上げた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます