第五話 収納スキルの可能性

ご馳走様でした。


口にこそ出さないが、日本人たるもの食事の挨拶位は忘れないようにしなくては。


「ねぇ、レオ!これ美味しいよ、これ!」


「口に物を入れたまま喋らない」


「はいはい」


もう半数以上が食べ終えているのに、話しながら食べるせいでこいつはいつも食べるのが遅い、そのくせ僕の二倍は食べる、吹奏楽部の部活動がどんなにカロリーを消費するかは知らないが、食べた分がどこに消えているのかまるで分からない。


結構経ってようやく如月が食べ終えた、それを確認してから一人の初老の女性が話し出した。


「皆様初めまして、私は当城のメイド長をつとめさせていただいております、リオラと申します。」


「では、これより皆様には魔法の修練をして頂きます。」


男子達から歓喜の声が上がる。メイド長は僕らを誘導しだした。


数分歩いて着いたのは屋外の射撃場のような場所だった。そして的はあの修練場に置いてあったあの黒い石版だった。



「こちらが皆様に魔法をご教授してくださるファン先生です。ではファン先生、あとはよろしくお願いします。」


「はい、分かりました」


ファン先生、と呼ばれた人物は三十代くらいの茶髪の青年で、少し気が弱そうな感じだが、立ち振る舞いからはいかにも、秀才、優等生、と言った感じがした、伊集院とはまた別のタイプのエリートだ。


「失礼、少しお待ちを、日下部様、姫川様、伊集院様、七瀬様、犬飼様、後藤様 如月様にはこちらで特別授業を受けてもらいます。」


そうして七人は連れていかれ、残された俺達はファン先生のもとで普通に授業を受けた。


して、その授業だが、俺にとっては殆ど復習だった、が、このファン先生が思ったより優秀で、魔法陣のどの部分が魔法にどう作用するかをかなり丁寧に教えてくれた。


まぁ、それが丁寧過ぎたのか、それともこれが普通なのかは知らないが、一日目は授業だけで終わった。


疲れた、体力や魔力を消費したとかいう訳では無いが、これまで一切知らなかったことを学ぶというのは、なかなか疲弊するものだ。


その疲労を城の風呂で癒した、風呂は結構大きかった。


そんなことを考えながら、与えられた自室のドアを開ける。既に夕食も済ませ、あとは寝るだけ……


「レオー!遊びに来たー!」


如月がいつものようにドアを蹴り開ける。デトロイト市警かオメーは。


「ねー、一ノ瀬今日どうだった?」


「どうって?魔法のこととか?」


「そうそれ!」


「昨日ちょっとやったし、まだ一日目だから殆ど昨日の復習だったな。」


「はー!?なんで誘ってくれなかったのよ!私も誘ってよ!」


如月が不満と怒りを露わにする。


「やだよ、お前かしましいもん。」


一ノ瀬は異空間収納を開け、中のアイテムや朝に入れた水の個数の変動がないことを確認する。


如何いかにも興味無いと言った感じだ。


(他にもこのスキルの使用者がいるのではないかと思ったが、杞憂だったか。)


「あーー!またそうやって変な表現使うー!モテないぞー!それ!」


「ならそっちの方が好都合だ。」


「あー!もういい!帰る!これでも喰らえ!」


如月が容赦なく石魔法を飛ばす。恐らく今日覚えたものだろう。威力も速度もあまりない。が危険なことには変わりない。


「危なっ!」


咄嗟とっさに掌でガードする。と同時に殆ど無意識に異空間収納を掌に開く。


如月の放った石魔法が、異空間収納に吸い込まれるように入る。


その時一ノ瀬の魔力が少し減った。


(魔力が減った?それもこの減少量石魔法を打った時と同じ位だ。あと異空間収納これ二つ開けれるんだな……まあ、それは後でいいとして先に魔法の収納の方を調べよう、あっちは一人でも出来るからな……)


(相手の放った魔法を収納する時はそれ相応のコストが必要…………ということか?)


「なぁ、如月もう1発打ってみてくれないか?」


「えぇ……引くわぁ……」


「いやそうじゃあなくてだな…………」


◆◆◆◆


あの後何発か色々な魔法を打ってもらったが、矢張りかけた魔力分が収納時にコストとして支払われるのだと、判明した、然し自分の魔法はその限りではなかった。まぁ当然と言えば当然なのだが。


そして収納した魔法を出してみようと思ったが、危ないので明日にした。


◆◆◆◆


翌日の魔法の授業は早くもそして都合よく実践だった為、的に向かって収納した魔法を打ってみた。打たれた魔法は昨日と同じ速度で飛んで行った。


その後自分の魔法を収納して打ってみたが、魔力は当然の権利のように減らなかったし、威力も同じだった。


そして軽く温めた石を入れて暫く待ってから取り出してみたが、矢張り温度は保たれたままだった。どうやらこの異空間収納スキルは物体のエネルギーすら収納し、保存できるらしい。


そして魔法の収納はどこまで出来るのかということだ、つまり魔法陣の状態での収納、及び保存が可能かということだ。別に完成した状態で収納すればいい話だが、魔法陣の状態で収納した方が、なんだかかっこいいだろう。背後空中に浮かぶ無数の魔法陣……うーんかっこいい。


結論から言うとできた、しかも魔法陣構築中でもできるというおまけ付きで。


そして、異空間収納の複数展開だが、開ける数が多くなればなるほど、消費魔力が増加した。そしてここからが大事、この異空間収納を二窓展開し、あいだの空間を繋ぐことでポータルの役割を果たすことに気がついた。これは強い、やはりこの魔法はなろう系あるあるの、〜雑魚スキルだと思っていたら本当はチートスキルでした〜って奴だった。


(というか異空間収納に魔力なんていたんだな……微量すぎて気づけなかったっていうだけで……)

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